苗木自動植栽機|地拵え・植栽の機械化

苗木自動植栽機 | Forest Eight

再造林の工程のなかでも、苗木を植える作業はとりわけ体にこたえます。穴を掘り、苗を挿し、土を戻して押し固める――これを斜面で延々とくり返すのですから。人力だと1人1日200〜400本が限界で、国内の年間植栽面積2.5〜3万ha、植栽本数8〜12億本に対して、年間延べ100万人日近い労働が投じられている計算です。この最も重い工程を機械にまかせるのが苗木自動植栽機です。北欧では1980年代から商用化が進み、日本でも林野庁スマート林業構築実践事業の枠組みで2018年以降に本格開発が始まって、北海道・宮崎などで実証導入が進んでいます。

目次

植栽工程を機械でどう分担するか

植栽は、(1)地拵え(伐倒残材の整理)、(2)穴掘り、(3)苗木挿入、(4)覆土、(5)押固め、(6)獣害防護資材の設置という工程からなります。人力だとこれを1人が連続でこなしますが、機械化では工程ごとに役割を分けるのが国際標準です。重量や形状が大きく変わる伐倒残材の整理はグラップル付きのハーベスタ系が担い、精度が要る植栽(鉛直±10度、深さ±2cm)は専用の植栽機が穴掘り・挿入・押固めを連続実行します。単一機械で全工程を統合するのは技術的に難しいため、機械を分担させる設計になっているわけです。

植栽機械化の連動工程 地拵え→植栽→獣害防護の機械化フローと各工程の連動を示す 再造林工程の機械化フロー 地拵え グラップル装備機 穴掘り スコープ式 苗木挿入 マガジン供給 覆土・押固め 油圧プレス ハーベスタ改造 グラップル機 植栽機(Bracke / M-Planta / 国産機) 穴掘り・苗木挿入・覆土を1ヘッドで実行 機械化率:地拵え30〜40%・植栽5〜10%(2024年)→ 2030年目標50%
図1:再造林工程の機械化フローと現状到達点(出典:林野庁スマート林業構築実践事業報告書を基に作成)

機械化が進んでいるのは地拵えで30〜40%、植栽は5〜10%、獣害防護にいたっては1%未満(2024年時点)。とくにシカ食害対策のチューブ装着は1人日100〜200本と植栽以上に手間がかかり、植栽機械化のメリットを相殺してしまう厄介なボトルネックです。植栽工程の機械化の遅れが、再造林全体の足かせになっています。

北欧で実績を積んだ主要機種

植栽機の代表は、スウェーデンBracke Forest社のP11シリーズと、フィンランドRisutec社のM-Planta・後継機UEAです。いずれも油圧ショベルに専用ヘッドを装着する形式で、ベース機を共有してコスト効率を高めています。北欧では1980年代に開発が始まり、2023年時点でスウェーデン・フィンランド合計で約500機が稼働、年間植栽の3〜4割が機械化されています。

機種 植栽速度 マガジン容量 適応傾斜 特徴
Bracke P11.a(瑞) 300〜400本/h 72本 25度 2ヘッド機・最高速
Bracke P11.b(瑞) 200〜300本/h 36本 30度 1ヘッド機・標準
M-Planta(芬) 250〜350本/h 80本 25度 大容量マガジン
Risutec UEA(芬) 300〜400本/h 100本 25度 最新機・自動化拡張
Eco-Planter(芬) 150〜250本/h 48本 35度 急傾斜地対応

Bracke P11.bを例にとると、油圧ショベルのアームに付いたヘッドが、植穴を掘る→マガジンのコンテナ苗を1本挿入する→覆土板で土を戻す→油圧プレスで押し固める、という一連の動作を15〜20秒で完了します。1時間に200〜400本のペース。マガジン補充は30〜80本ごとに5〜10分間隔で、補充役の作業者1名が運転手とは別に付くのが標準です。気になる活着率は人力と同等の85〜95%で、機械化で品質が落ちることはありません。むしろ熟練度のばらつきがない分、植穴の深さや押固めが標準化され、Skogforsk(スウェーデン森林研究所)の10年生時点の生残率比較では機械植栽区が人力区を2〜4ポイント上回るデータもあります。最新機のRisutec UEAになると、AIで苗木姿勢を補正し、植栽位置をGNSSで自動記録して、後年の下刈り・間伐計画にも使える――植栽機が「林業情報インフラ」の一部へと変わりつつあります。

カギを握るコンテナ苗

機械植栽の前提が、根鉢ごと育てたコンテナ苗(容器苗)の普及です。根が容器内で安定しているため機械植栽との相性がよく、活着率も裸苗(90%前後)より高い92〜97%。さらに植栽できる期間が、裸苗の早春・晩秋限定から通年に広がります。これは伐採班の空き期間を有効活用でき、若手の通年雇用・定着にもつながる効果として注目されています。容器規格(JFA-150・JFA-300等)が標準化されているので、植栽機のマガジン設計もこれに合わせて最適化されています。

コンテナ苗生産量の推移 2010年から2022年までのコンテナ苗生産量推移を示す コンテナ苗生産量推移(万本) 3,000 2,000 1,000 0 2010 2014 2018 2021 2022 2010年100万本→2022年2,500万本、12年で約25倍に増加。
図2:コンテナ苗生産量の推移(出典:林野庁「森林・林業白書」「苗木需給見通し」各年版)

国内のコンテナ苗生産量は2022年度で約2,500万本(全苗木の約25%)まで増え、林野庁は2030年に5,000万本(5割超)への拡大を目標に、苗木生産者への補助・施設整備支援を強めています。価格は裸苗の1.5〜2倍(80〜150円/本)と高めですが、活着率向上による補植コスト削減と機械化との相乗効果で、トータルでは優位なケースが多くなっています。

低密度植栽と一貫作業で、経費はどこまで下がるか

近年の再造林トレンドは、従来の3,000〜4,000本/haから1,500〜2,000本/haへの低密度植栽(疎植)です。本数が半減すれば植栽・下刈りコストが大きく下がり、再造林の経済性が改善します。最終的な木材生産量は10〜15%減りますが、1本あたりの直径成長が促されて品質が上がり、㎥単価が5〜10%上昇する――森林総合研究所の試験でそう確認されており、収益面でも理にかなっています。植え方と機械化の組み合わせで、経費がどう変わるかを並べると一目瞭然です。

植栽方式 植栽密度 植栽コスト 下刈り20年累計 合計
人力標準植栽 3,500本/ha 90万円/ha 120万円/ha 210万円
人力低密度植栽 2,000本/ha 55万円/ha 85万円/ha 140万円
機械低密度植栽 2,000本/ha 35万円/ha 85万円/ha 120万円
機械一貫+下刈り機械化 2,000本/ha 35万円/ha 50万円/ha 85万円

従来の210万円/haが、機械化を深めれば85万円/haまで――約6割の削減です。これを支えるのが「一貫作業」。伐採班のハーベスタ・フォワーダが、伐採後そのまま地拵え・植栽の機材に切り替えて連続作業する方式で、機械の往復が減って効率が上がります。林野庁の実証では工期短縮20〜30%、コスト削減10〜15%が確認されています。ただし植栽機の投資回収には年間植栽面積100ha以上が必要で、中小事業体が単独で持つのは難しい水準。北欧で一般的な、施工業者が機械を保有して広域施工する「Entrepreneur(請負施工)」モデルの日本導入が、普及加速の鍵になりそうです。

国産機の開発と急傾斜地という壁

国産の植栽機は、イワフジ工業・南星機械・コマツなどが研究開発中で、2025〜2027年の商用化が見込まれます。価格帯は輸入機の3,000万〜6,000万円に対し、国産機は2,000万〜4,000万円規模が想定されています。開発はFFPRIが性能評価を担い、メーカー・林業事業体・研究機関の三位一体で進行中です。

植栽機械化技術の発展ロードマップ 2010年から2030年までの植栽機械化発展段階を時系列で示す 植栽機械化のロードマップ 2010-2015 人力植栽主流 2016-2020 コンテナ苗 普及加速 2021-2025 北欧機輸入 実証実装 国産試作 2026-2030 国産機商用化 機械化率20% 一貫作業普及 2030+ 自律化 機械化率 50%目標 基盤期 準備期 実証期 普及期 自律期
図3:植栽機械化の発展ロードマップ(出典:林野庁スマート林業構築実践事業中長期計画を基に作成)

最大の壁が急傾斜地です。北欧機の適地は傾斜25度程度までで、日本の人工林の約4割を占める30度以上には十分対応できません。そこで国産機開発では、ウィンチアシスト機構(ケーブルで牽引してずり落ちを防ぐ)、小型化、重心の低化が中核テーマになっています。実証は北海道と宮崎が中心。緩傾斜・大面積の北海道(石狩・上川の道有林・国有林)ではBracke P11.bで年50〜80ha規模のデータを蓄積し、欧州型機械の適用条件に近いことから実用化判断の材料が揃いつつあります。一方、宮崎県の諸塚村・椎葉村など急傾斜地ではM-Plantaにウィンチアシストを併用した運用ノウハウが積み上がっています。2030年代以降は、運転手を不要とする自律走行ロボット植栽機の研究も進んでおり、林業労働力の構造的な不足に応える次世代技術として期待されています。

よくある疑問

導入コストは回収できる?

本体3,000〜6,000万円に補助1/2を使えば実質1,500〜3,000万円。年間植栽面積100ha以上の事業体なら5〜7年で回収できる試算です。年50ha未満では単独回収は難しく、複数事業体の共同利用が現実的。北海道・宮崎では受託施工型(Entrepreneurモデル)の試行も始まっています。

補助制度はどう使える?

林野庁の林業・木材産業循環成長対策事業(機械化推進枠)で、植栽機の導入経費の1/2が補助対象です。年間植栽面積やコンテナ苗使用率、地拵え機との連携などの要件があり、事業計画書での裏付けが必要。北海道・宮崎・岩手などでは都道府県独自の上乗せ補助もあるので、自治体の林政担当部署との早めの協議がおすすめです。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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