森林組合は森林組合法に基づく協同組合で、1990年に全国2,144組合あった組織数が2023年には610組合まで縮減し、33年間で約3.7分の1まで集約されました。組合員数は約150万人、出資金累計約2,500億円、総取扱高約3,500億円規模で、林業分野の最大の経営体類型として、森林経営計画の認定面積の約60%を担っています。本稿では1990年代以降の森林組合合併の経緯と、組織再編が林業経営・森林管理に及ぼした構造的影響を、林野庁・全国森林組合連合会・農林業センサスの統計をもとに整理します。
この記事の要点
- 森林組合数は1990年2,144組合→2023年610組合と約3.7分の1に集約、平成大合併と並行進行。
- 合併の主因は組合員減少・経営悪化・市町村合併の3軸。1組合あたり組合員約2,500人→約2,500人で横ばい。
- 森林組合は森林経営計画認定面積の約60%を担う最大経営体類型、全国合計取扱高約3,500億円。
クイックサマリー:森林組合の主要数値
| 指標 | 数値 | 出典・備考 |
|---|---|---|
| 森林組合数(2023) | 610組合 | 全国森林組合連合会 |
| 森林組合数(1990) | 2,144組合 | 林野庁統計 |
| 33年間の減少率 | ▲72% | 1990→2023 |
| 組合員数 | 約150万人 | 2023年 |
| 1組合あたり組合員数 | 約2,500人 | 平均、組合により大きな差 |
| 出資金累計 | 約2,500億円 | 2023年度 |
| 総取扱高 | 約3,500億円 | 2022年度 |
| 森林組合管理面積 | 約720万ha | 民有林1,750万haの41% |
| 森林経営計画担当比率 | 約60% | 認定面積ベース |
| 職員数 | 約1.4万人 | 作業班員含む |
森林組合数の経年変化:2,144→610の集約
森林組合数は1990年の2,144組合をピークに、毎年30〜80組合のペースで減少を続け、2023年には610組合まで集約されました。減少率は33年間で▲72%。最大の減少期は2003〜2008年で、5年間で500組合以上が合併・解散しました。これは平成の大合併(市町村合併、1999〜2010年)と時期が重なり、市町村合併に伴う森林組合の地域基盤再編が背景にあります。
森林組合数の減少は「自然減」(解散)ではなく「合併」が主因で、解散件数は累計の20%程度、残り80%は合併による統合です。合併形態は(1)地域内の数組合が対等合併で広域組合を新設、(2)大規模組合が周辺の小規模組合を吸収合併、(3)県全域の組合連合体が中心となる垂直型合併、の3パターンに分類できます。とりわけ広域合併型が最多で、市町村合併と並行する形で進行しました。
合併の3つの主因:組合員減少・経営悪化・市町村合併
森林組合合併の主因は、(1)組合員(森林所有者)の減少と高齢化、(2)林業情勢悪化による経営困難、(3)平成大合併による市町村基盤再編、の3軸の複合効果です。これらは独立した要因ではなく、相互に連動しながら30年間で森林組合の集約を加速しました。
| 合併要因 | 具体的内容 | 影響経路 |
|---|---|---|
| 組合員減少・高齢化 | 林家戸数1990年92万戸→2020年69万戸、組合員平均年齢70歳超 | 出資金縮小・事業意欲低下 |
| 林業情勢悪化 | スギ立木価格1980年比1/4、原木価格40%水準 | 取扱高減少・赤字経営 |
| 市町村合併(平成大合併) | 3,232市町村→1,718市町村(2010年時点) | 行政基盤再編→組合再編 |
| 林野庁の合併推進 | 森林組合系統広域合併・経営基盤強化対策事業(1995〜) | 合併補助金交付 |
| 経営管理制度導入 | 2019年森林経営管理制度施行、市町村との連携要請 | 広域対応の必要性 |
合併の経済的合理性は、(1)職員の集約によるコスト削減(事務職員の重複削減)、(2)規模拡大による事業基盤強化、(3)森林経営計画の広域化に対応、の3点で説明されます。一方で合併により失われたものとして、(1)組合員と組合役員の地域密着性、(2)小規模林家への細やかなサービス、(3)地域の山村文化との結びつき、が指摘されており、合併推進の負の側面も存在します。
市町村合併との連動
平成の大合併(1999〜2010年)により市町村数は3,232から1,718に約半減しました。森林組合の地域基盤は伝統的に市町村単位で形成されてきたため、市町村合併に並行する形で森林組合合併が進行しました。一方で、合併後の市町村域は森林組合域より広い場合・狭い場合の両方があり、行政界と組合界の不一致が新たな課題を生んでいます。
1組合あたり規模の拡大
合併により1組合あたり規模は拡大傾向にあります。2023年の1組合平均で組合員数約2,500人、管理森林面積約12,000ha、出資金約4億円、職員数23人。1990年比で組合員数は約2.0倍、森林面積は約3.0倍、職員数は約1.5倍に拡大しています。一方で、規模拡大しても出資金1組合4億円・職員23人は中堅企業相当で、上場企業レベルの林業経営体に達していない現状があります。
規模拡大の効果は、(1)作業班体制の充実(高性能林業機械を専属で運用できる班単位の編成)、(2)森林経営計画の広域化(数千ha単位の計画作成が可能)、(3)森林環境譲与税の市町村事業への対応、の3面で観察されます。一方、規模拡大の限界は、(1)組合員のうちアクティブな出資者が一部に限定される、(2)役員選出の地域代表性確保、(3)所有林規模が極小(5ha未満)の組合員へのサービス水準維持、の3点に表れています。
森林組合の事業構成:販売事業・指導事業・購買事業
森林組合の主要事業は、(1)販売事業(木材販売、組合員の生産木材の集荷・販売、年間約1,800億円)、(2)森林整備事業(造林・間伐・下刈り等の請負作業、年間約1,200億円)、(3)指導事業(組合員への森林経営計画作成支援等)、(4)購買事業(種苗・資材・燃料等の組合員向け販売、年間約300億円)、の4本柱です。総取扱高約3,500億円のうち販売事業と森林整備事業で約85%を占める構造です。
森林整備事業(造林・間伐)の安定した請負量が、森林組合経営の柱です。造林補助金(造林1ha40〜80万円、間伐1ha20〜40万円)が主要収入源で、補助金事業の出来高に依存する構造があります。森林環境譲与税(2019年導入、2024年度から年間600億円規模)は、市町村経由で森林組合に新たな事業発注を生み出しており、組合経営の改善に寄与しています。
森林経営計画と森林組合
森林経営計画(森林法に基づく、5年計画)の認定面積に占める森林組合分担は約60%です。2023年時点の認定面積は全国約650万ha(人工林・天然林の両方を含む)、このうち森林組合が森林所有者から経営委託を受けて作成・実行する分が約400万ha。残り40%は森林所有者個人の自家計画、林業会社・素材生産業者の計画です。
森林組合が森林経営計画の中核を担う構造的理由は、(1)小規模林家(5ha未満)が多数を占める日本の所有構造、(2)小規模林家には自家計画作成の事務能力・経済負担が困難、(3)森林組合が組合員サービスとして経営計画作成を低コストで提供できる、という3点に基づきます。森林経営管理制度(2019年施行)も森林組合との連携を前提とした設計となっており、市町村と森林組合の協働が中心的な実装パターンです。
森林組合系統の3層構造
森林組合は3層の系統組織として整備されています。第1層が単位森林組合(610組合)、第2層が都道府県森林組合連合会(47連合会)、第3層が全国森林組合連合会(JForest全森連、本部:東京都)です。垂直的に連携する系統組織として、(1)木材販売の広域化(県連を経由した県外市場への木材出荷)、(2)資材・燃料の共同仕入、(3)職員研修の共同実施、(4)合併支援・経営指導、(5)国・自治体への政策提言、を担います。
都道府県連合会は単位組合の議決権の上位にあり、47連合会で全国組織が成立しています。県連の主要事業は、(1)原木市場運営(県連直営市場が全国に約60か所)、(2)職員研修・合併指導、(3)林業従事者への雇用保険・労災適用支援、です。原木市場は単位組合からの出荷と素材生産業者からの直送の両方を受け入れ、製材・合板・チップ用などの需要先に流通させる中継機能を担います。
合併後の課題:地域密着性とサービス水準
合併による規模拡大は経営効率を高めましたが、副作用として(1)組合員と組合役員の地域密着性低下、(2)小規模林家へのサービス水準低下、(3)役員選出の地域代表性確保困難、の3課題が浮上しています。とりわけ、合併で広域化した組合では、本所所在地から離れた地域の組合員ほど組合事業への参加意識が低下し、出資金・経営計画委託・木材販売委託の比率が減少する傾向が観察されます。
これに対する対応として、(1)地域支所の機能維持(合併前の単位組合事務所を支所として残す)、(2)地域別運営委員会の設置、(3)デジタル化による組合員サービス(オンライン経営計画作成、組合員ポータル)、の3軸での取組が進んでいます。林野庁の経営基盤強化対策事業も、合併後の地域密着サービス維持を支援する内容を含んでいます。
森林組合の今後の論点:森林経営管理制度との連動
森林組合の今後10年の中心論点は、(1)森林経営管理制度(2019年施行)への対応、(2)森林環境譲与税事業の受託拡大、(3)スマート林業対応の組織整備、(4)次世代組合員の確保、の4軸です。森林経営管理制度では市町村が経営管理権を森林所有者から委託を受け、これを意欲のある林業経営者に再委託する設計で、再委託先として森林組合が中核を担います。
森林環境譲与税は2024年度から本則ベースで年600億円規模、市町村と都道府県が9:1で配分する仕組みで、森林整備・人材育成・木材利用・普及啓発が対象事業です。市町村が直接事業実施するケースは少なく、森林組合への業務委託が標準パターンとなっています。これにより森林組合の取扱高は今後10年で1〜2割増加する見込みです。スマート林業・林業クラウド・森林経営管理制度の3軸を担うのは、規模・組織力を備えた中堅以上の森林組合に集中する見通しで、合併・連携によるさらなる集約が進む可能性があります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 森林組合とは何ですか?
森林組合法に基づく協同組合で、森林所有者を組合員とする協同組合形態の組織です。2023年時点で全国610組合、組合員約150万人、職員約1.4万人を擁し、民有林約1,750万haのうち約720万ha(41%)の管理を担います。販売事業・森林整備事業・指導事業・購買事業を主要事業とし、年間取扱高約3,500億円規模です。
Q2. なぜ森林組合は合併が進んだのですか?
(1)組合員(森林所有者)の減少と高齢化、(2)林業情勢の悪化(立木価格1980年比1/4水準)、(3)平成の大合併による市町村基盤再編、(4)林野庁の合併推進政策、の4要因の複合効果です。1990年の2,144組合から2023年の610組合へ、33年間で約3.7分の1まで集約されました。
Q3. 森林組合の合併の効果は?
(1)職員集約によるコスト削減、(2)規模拡大による事業基盤強化、(3)森林経営計画の広域化対応、(4)スマート林業投資への対応力向上、の4効果が観察されます。1組合あたり組合員数は1990年の1,250人から2023年の2,500人へ倍増、森林面積は4,000haから12,000haへ3倍に拡大しました。
Q4. 森林組合の収入源は何ですか?
取扱高3,500億円のうち、販売事業(木材販売)51%・1,800億円、森林整備事業(造林・間伐)34%・1,200億円、購買事業9%・300億円、指導その他6%という構成です。森林整備事業では造林補助金(造林1ha40〜80万円)が主要収入源となっています。
Q5. 森林経営管理制度と森林組合の関係は?
森林経営管理制度(2019年施行)は、市町村が森林所有者から経営管理権を委託を受け、意欲のある林業経営者に再委託する仕組みです。再委託先として森林組合が中核を担う設計となっており、市町村と森林組合の協働が制度実装の基本パターンです。森林経営計画認定面積の約60%が森林組合経由で作成されています。
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まとめ
森林組合は1990年の2,144組合から2023年の610組合へ、33年間で約72%減少する大規模な組織再編を経験しました。組合員減少・林業情勢悪化・平成大合併の3要因が複合的に作用し、合併により1組合あたり規模は組合員2倍・森林面積3倍に拡大しました。総取扱高3,500億円・管理森林面積720万ha・職員1.4万人を擁する林業最大の経営体類型として、森林経営計画の60%を担う中核組織です。森林経営管理制度・森林環境譲与税・スマート林業の3軸が今後10年の発展論点で、規模・組織力を備えた中堅以上の組合に役割が集中する見通しです。

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