林業就業者の高齢化|65歳以上は25%、だが人数は減っている

高齢化の正体は現役世代の減少

「林業は高齢化している」。林業の記事を何本か読んだ人なら、たぶん10回は目にしている一文だ。確かに2020年の国勢調査で、林業で働く人の65歳以上は25%。全産業の15%より10ポイント高い。

では、高齢者は増えたのか。違う。減っている。この記事は、その種明かしである。

目次

高齢者は増えていない。ほかの世代が消えたのだ

国勢調査の林業従事者を、65歳未満と65歳以上に分けて並べたのが図1だ。総数は1990年の10.0万人から2020年の4.4万人へ、56%減った。65歳以上は、1990年の1.4万人から2000年に2.0万人まで増えたあと、2020年は1.1万人。30年前より少ない。激しく減ったのは65歳未満のほうで、8.6万人から3.3万人へ、62%減っている。

65歳以上は減った。もっと減ったのは、それ以外だ(万人)国勢調査「林業従事者」を、65歳未満と65歳以上に分けた人数8.61.410.019906.31.98.219954.82.06.820003.81.45.220054.01.15.120103.41.14.520153.31.14.4202065歳以上65歳未満
図1:林業従事者の総数(棒の上の数字)と、うち65歳以上の人数。出典:総務省「国勢調査」(農林水産省「林業に関する統計」の林業従事者の表)。65歳未満は総数から65歳以上を引いた編集部の計算で、四捨五入のため合計がずれることがある。

高齢化率は「65歳以上÷総数」だ。分子が横ばいか減っていても、分母が先に縮めば上がる。バスの乗客に占めるお年寄りの比率が上がったのは、お年寄りが乗ってきたからではない。ほかの客が降りたからである。

高齢化率が測っているのは、高齢者の多さだけではない。ほかの世代がどれだけ早く減ったか、でもある。しかも2015年から2020年にかけて、総数は4.5万人から4.4万人と横ばいに転じた(令和4年版森林・林業白書)。「減り続けている」は、もう古い。

なお、国勢調査には数え方が2つある。職業で数える「林業従事者」(2020年は4.4万人)と、産業で数える「林業就業者」(同6.1万人)だ。林野庁が高齢化や若返りを論じるときに使うのは前者で、この記事の数字も前者である。

若手は増えた。女性は9割減った

35歳未満の割合は、1990年の約6%から2010年に18%まで上がり、2020年は17%。平均年齢も2005年の54.4歳から、2020年は52.1歳へ下がった。確かに若返ってはいる。

数字で見る「変わったこと」いずれも国勢調査(林業従事者)女性の従事者約2.4万人1980年(約16%)▼2,730人2020年(約6%)平均年齢54.4歳2005年▼52.1歳2020年35歳未満の割合約6%1990年▼17%2020年
図4:出典:林野庁「林業における女性の活躍」、同「令和4年版森林・林業白書」、「一目でわかる林業労働(データ編)」。35歳未満の割合の1990年は、林野庁グラフからの読み取りで「約6%」とした。

ただし、率と人数は別の話だ。1990年の10.0万人の6%は約6,000人。2020年の4.4万人の17%は約7,500人。率は3倍近くになったが、人数は約1,500人しか増えていない(編集部の試算。率も人数も四捨五入のため、数百人の誤差はある)。率は派手で、人数は地味だ。統計の読み方としては、地味なほうが正直なことが多い。

女性の林業従事者は、1980年に約2.4万人(約16%)いた。2020年は2,730人(約6%)で、約9割減っている。女性の林業参画の記事で詳しく扱っているが、減った理由は公表資料では確認できない。

入口はどこから来ているのか

林業に新しく就く人は、「緑の雇用」事業が始まる前(平成6〜14年度の平均)が年1,861人。始まった後(平成15〜令和6年度の平均)は年3,197人。約1,300人増えた。そのうち緑の雇用経由が1,069人で、増加分の約8割を占める(図2)。

新規就業者は年1,861人から3,197人へ(人/年)緑の雇用の前後それぞれの期間平均。オレンジが緑の雇用経由1,8611,861緑の雇用の前(平成6〜14年度の平均)2,1281,0693,197緑の雇用の後(平成15〜令和6年度の平均)緑の雇用緑の雇用以外
図2:林業の新規就業者数(年平均)。出典:林野庁「一目でわかる林業労働(データ編)」。増加分は3,197−1,861=1,336人で、うち緑の雇用経由が1,069人(約8割)。この計算は編集部によるもので、緑の雇用がなくても別の経路で就業した人がどれだけ含まれるかは、公表資料からは分からない。

逆から見ると、平均では新規就業者の約3分の2が緑の雇用の外から来ている。しかも近年は、緑の雇用の新規就業者向け研修の修了者が、平成15年度の2,268人から令和7年度の701人まで減った。令和3年度に緑の雇用で新規就業した720人は、同年度の新規就業者3,043人の約24%だ。

林野庁は、緑の雇用による新規就業者を毎年度1,200人、就業3年後の定着率を令和7年度までに80%とする目標を掲げている。令和3年度の720人は、目標の6割だ。令和元年度の就業者の3年後定着率は77.9%だった。緑の雇用で取れる資格をみると、研修の中身は1〜3年目で段階的に組まれている。

国が看板にしている入口は細ってきた。それでも年3,000人が入ってくるのは、看板の外にも入口があるからだ。

仕事の中身も入れ替わった

職業別に見ると、植える・刈る・育てる「育林従事者」は、1985年の74,259人から2015年の19,400人へ、74%減った。切る・玉切りする・出す「伐木・造材・集材従事者」は、46,113人から20,910人へ減ったが、2005〜2015年の10年間では112%と増えている(育林は同じ期間で67%)。1985年は育てる人が切る人の約1.6倍いた。2015年には、逆転している。

育てる人は4分の1に。切って出す人の数と逆転した(人)国勢調査の職業小分類。1985年と2015年を比べた育林従事者(植える・刈る・育てる)1985年74,259人2015年19,400人伐木・造材・集材従事者(切って出す)1985年46,113人2015年20,910人
図3:林業従事者を職業別に見た人数。出典:林野庁「平成30年版森林・林業白書」第1部第1章第3節(1)(平成27年国勢調査)。1985年は育林が伐木等の約1.6倍いたが、2015年は逆転している。2015〜2020年の同じ区分の人数は、今回確認できなかった。

1人で扱う木材の量を左右する機械化の話は林業の労働生産性で、地域ごとの人数の偏りは林業就業者の県別分布で見られる。

次に気になること:収入と危険

林野庁の「一目でわかる林業労働」によると、林業の年間平均給与は361万円。全産業は458万円(国税庁・令和4年分)で、差は約100万円だ。森林組合の統計では、月給制の割合が昭和60年度の4%から令和6年度の36%に増え、年間210日以上働く人は約7割に上がった。給与の詳しい仕組みは林業労働の賃金構造にまとめた。

労働災害は、死傷年千人率(休業4日以上)で、令和7年(速報)は林業17.7、全産業2.3。約8倍だ。令和5年は22.8対2.4で約10倍だったから、差は縮まっている。数字の経年は林業の労働災害にある。チェーンソーを使う仕事に就くなら、伐木等の特別教育は避けて通れない。

給与の差も災害率の差も、資料に書かれているのは差であって、原因ではない。

これから林業に入るなら、公的な入口は3つある

緑の雇用は、林業の事業体に就職し、フォレストワーカー(FW)研修を1〜3年目と段階的に受ける仕組みだ。平成15年度から令和7年度までの研修修了者は、累計24,224人。

緑の青年就業準備給付金は、林業大学校などで約1年・年間1,200時間以上の研修を受ける人に、年最大155万円または125万円を最長2年間給付する。原則45歳未満。研修後1年以内に林業に就き、給付期間の1.5倍か2年のどちらか長い期間は続ける義務がある。令和7年度は28道府県の林業大学校などが対象で、令和8年度予算は5.55億円。

特定技能「林業」は、2024年3月29日の閣議決定で対象分野に加わった。受入見込数は、令和6年度からの5年間で最大1,000人。その後に見直しがあったかどうかは、確認できなかった。

高齢化率25%という数字は、嘘ではない。ただ、それだけを見ると「高齢者が増えた」という誤った絵になる。実際に起きたのは、現役世代が先に減り、入口が細り、その入口が国の看板の外にもできた、という入れ替わりだ。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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