「青と黒のチェーンソー」を林業の現場で見かけたら、それはたいてい新ダイワ(Shindaiwa)です。共立がオレンジ・黒で農林業の世界に根を張ってきたのに対し、新ダイワは溶接機やエンジン発電機といった建設・産業機械の血筋を引くブランド。同じやまびこグループの兄弟でありながら、生まれ育った現場が少し違うのが面白いところです。
源流は戦後の広島・麻本精機。1962年に新ダイワ工業として独立し、欧米の輸入チェーンソーが「日本人には大きすぎ、重すぎる」という当時の悩みに、軽量・コンパクトな国産機で応えてきました。2008年に共立と経営統合して株式会社やまびこが誕生し、翌2009年に北米のECHOを傘下に収め、いまは共立・新ダイワ・ECHOの3ブランド体制。連結売上の8割超は海外で、北米のECHOがグループの稼ぎ頭です。
東証プライム上場(証券コード6250)、本社は東京都青梅市。チェンソー主力の広島工場を中心に、刈払機の岩手工場、米ジョージア州工場などを構えます。世界のチェーンソー市場では、ECHO込みのやまびことしてStihl・Husqvarnaに次ぐ第3勢力を長年保っています。
E系統プロ機 — 軽さで選ばれる中堅クラス
新ダイワのプロ用チェーンソーは「E」の型番が目印です。中核を担うのが中堅プロ機のE2041S・E2050S。共立でいうCS501Sに相当し、伐倒から枝払い・玉切りまで一台でこなす林業現場の定番です。
| モデル | 排気量 | 重量 | 主用途 | 参考価格(税抜) |
|---|---|---|---|---|
| E1041S | 40cc | 4.2kg | 準プロ・農業 | 約9〜11万円 |
| E2041S | 50cc | 4.7kg | プロ中堅 | 約12〜14万円 |
| E2050S | 50.1cc | 4.9kg | プロ中堅 | 約13〜15万円 |
| E2070S | 70cc | 5.7kg | プロ大型(大径木) | 約18〜21万円 |
新ダイワ最大の武器は、やはり軽さです。E2041Sの4.7kgは、同クラスのStihl MS261C(4.9kg)やHusqvarna 550XP MarkII(5.0kg)より軽い側。たかが0.3kg、されど0.3kg。一日中ソーを構え続ける枝払いや玉切りでは、この差が肩と腕の疲労にしっかり効いてきます。女性や若手の新規就業者が入門機に選ぶ例が増えているのも、この扱いやすさゆえです。
初めての一台なら、4.2kg・40ccのE1041Sがちょうどいい塩梅。家庭や農家のたまの薪づくりに、過剰スペックなく応えてくれます。大径木の伐倒・玉切りが主戦場なら、70ccのE2070Sが頼れる相棒になります。
軽さだけじゃない、効く技術
引きひも始動の負荷を約30%軽くするS-Startは、氷点下で何度も引き直す冬の北海道・東北の現場でとくに評価が高い装備。層状掃気の低排ガス2サイクルエンジンはEU Stage V・米国EPA Phase 3に対応し、従来機比で燃費を約20%改善します。一日6〜8時間使うプロにとって燃料代の2割減は、ひと月で数千円〜1万円規模の差。地味に効いてくる数字です。
振動対策のAV機構(ゴム+スプリングの複合マウント)は前ハンドル3.0m/s²前後に抑え、長時間作業での白ろう病リスクを下げてくれます。
共立とは、何が違うのか
やまびこ統合後、共立と新ダイワは基幹部品をかなり共通化しています。そのため両者は、いわば色違いの姉妹機。消耗品の互換性を活かして在庫を一本化する事業者も少なくありません。では何で選ぶかというと、性能差というより「地域のディーラー網・販売チャネル・好み」で決まることが多いのが実情です。
| 項目 | 共立(KIORITZ) | 新ダイワ(Shindaiwa) |
|---|---|---|
| 歴史的な強み | 農林業・園芸機械 | 溶接機・産業機械を含む |
| 主力中堅プロ機 | CS501S | E2041S・E2050S |
| カラー | オレンジ・黒 | 青・黒 |
| 溶接機ライン | 非主力 | 主力(DGW・DGM系) |
新ダイワブランドが他より強いのが、建設現場のエンジン溶接機(DGW系)です。チェーンソーはあくまで「産業機械総合メーカーの一部門」という位置づけで、ここが農機由来の共立との出自の違いをよく表しています。なお海外展開は基本的にECHOブランドが担い、新ダイワブランドは国内中心です。
Stihl・Husqvarnaと、どう棲み分ける
プロ現場では複数ブランドを併用する事業者も珍しくありません。新ダイワ・共立は価格がやや手頃で、何より地方の小さな町でも翌日に部品が届く国内アフターサービス網の厚さが強み。約3,500の認定サービス拠点が、林業地帯の稼働率を支えています。
| 項目 | 新ダイワ(やまびこ) | Stihl | Husqvarna |
|---|---|---|---|
| 中堅プロ機 | E2050S(50cc・4.9kg) | MS261C(50.2cc・4.9kg) | 550XP MkII(50.1cc・5.0kg) |
| 価格(中堅プロ) | 12〜15万円 | 13〜18万円 | 13〜18万円 |
| 強み | 軽量・国内アフター | 耐久性・世界流通 | 振動低減・電動化 |
| バッテリー機 | 限定的(ECHO先行) | 充実 | 非常に充実 |
ざっくり言えば、「壊れにくさ」と世界規模の部品供給を最優先するなら欧州勢、「軽さ」と「地元で直せる安心」を重視するなら新ダイワ・共立。電動・バッテリー機を本格的に使いたい場合は、Husqvarna・Stihlが一歩も二歩も先を行っているのが現状です。
新ダイワのバッテリー機は国内では果樹・造園・自治体作業向けが中心で、本格的なプロ伐倒・玉切りはまだエンジン機(E2041S・E2050S・E2070S)が主役。とはいえ、住宅地近接や公園作業で騒音・排気ゼロが法令要件化する地域は増えており、バッテリー機の比重はこの先確実に上がっていく見通しです。北米ECHOが56V・80Vプラットフォームで先行しているぶん、その技術が国内の新ダイワにも段階的に降りてくると見てよいでしょう。
中古・購入のヒント
E2041S・E2050Sの中古相場は、使用1〜3年で7〜10万円、5年超で4〜7万円が目安。プロ機は年式よりも実働時間(メーター値)と整備履歴が査定を左右します。整備記録をディーラーで管理しておくと、売却時の査定が1〜2割上がることも。長く使うつもりなら、本体だけネット通販で買うより、延長保証や初回点検が付く地域の正規ディーラーで買うほうが結局は安心です。

コメント