結論先出し
- Brock Commons Tallwood House(カナダBC州、UBC)は2017年7月完成の高さ53m・18階・404室の学生寮。完成時、世界初の18階木造ハイブリッド高層として歴史的位置を占めた。
- 構造はRCコア2基+集成材柱+5層CLT床のハイブリッド、CLT 2,233m³、集成材464m³、CO2固定約679t、木材建方はわずか約66日(9.5週間)で完了。
- 設計Acton Ostry、構造Fast+Epp、施工Urban One/Seagate、CLT供給Structurlam。総事業費約5,150万カナダドル。
- IBC 2021改正でMass Timber Type IV-A/B/Cが新設される過程で実証データが規制議論に直接影響、住友林業W350・Ascent MKE等の参照軸となった。
Brock Commons Tallwood House(ブロック・コモンズ・トールウッド・ハウス)は、カナダ・ブリティッシュコロンビア州バンクーバー市、ブリティッシュコロンビア大学(UBC)構内に2017年7月開業した学生寮で、完成時点で世界最高の木造ハイブリッド建築として国際的に注目された建物です。本稿ではUBC公式・Acton Ostry資料・Naturally:Wood・CWC・AIA論文等の一次情報をベースに、構造システム・CLT数量・施工速度・火災安全・後続への波及効果を整理します。
クイックサマリ:基本データ
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 正式名称 | Brock Commons Tallwood House |
| 所在地 | カナダBC州バンクーバー、UBC(University of British Columbia)構内 |
| 用途 | 学生寮(404室、約404人収容) |
| 高さ | 53.0 m(軒高、屋上機械室含む) |
| 階数 | 地上18階(1階RC+上層17層木造ハイブリッド) |
| 延床面積 | 約15,120 m² |
| 構造形式 | RC基礎+RCコア2基+集成材柱+5層CLT床(encapsulated mass timber) |
| CLT使用量 | 約2,233 m³ |
| 集成材使用量 | 約464 m³ |
| 使用木材合計 | 約2,700 m³(CLT+glulam+PSL補強含む) |
| CO2固定量(試算) | 約679 t(カナダ林産物試算) |
| 設計 | Acton Ostry Architects(バンクーバー) |
| 構造設計 | Fast + Epp |
| 施工 | Urban One Builders/Seagate Structures(木造建方) |
| 木材製造 | Structurlam Mass Timber(BC州Penticton) |
| 事業主 | UBC Properties Trust |
| 事業費 | 約5,150万カナダドル(約60億円) |
| 木造建方期間 | 約66日(実働9.5週間、平均約2階/週) |
| 着工/完成 | 2015年11月/2017年7月 |
| 歴史的記録 | 完成時、世界最高の木造ハイブリッド高層建築(Mjøstårnet 2019で更新) |
プロジェクトの背景と歴史的位置付け
Brock Commonsは、UBCが展開していた「Tallwood Initiative」研究プログラムの中核プロジェクトです。背景にはBC州森林省・Forestry Innovation Investment(FII)・Natural Resources Canadaを中心としたカナダ林産業の脱コモディティ戦略があり、北米中高層木造市場の大規模実証事例を作ることが政策目的でした。学生寮は、(1) UBCが研究リスクを引き受けやすい、(2) 戸数の繰り返し性が高くプレファブ化と相性が良い、(3) 居住性能の長期モニタリングがしやすい、という理由で選定されました。
2017年7月の入居開始時、Brock Commonsは世界最高の大規模木造ハイブリッド建築として認知され、Stadthaus(ロンドン9階)・Forté(メルボルン10階)・Treet(ベルゲン14階)などの先行事例を塗り替えました。2019年Mjøstårnet(85.4m)、2022年Ascent MKE(86.6m)が記録を更新するまで、木造高層議論の基準点として機能してきました。完成時、北米のNBC・IBCは多くの州で木造を4-6階に制限していたため、UBCはBC州のSite-Specific Regulationを取得して18階を実現。プロジェクトで取得された耐火試験・施工・振動・居住者アンケートのデータは、IBC 2021改正(Type IV-A/B/C新設)の参照資料として広く引用されています。
構造システム:RCコア+集成材+CLTのハイブリッド
Brock Commonsの構造は北米の高層木造で広く参照される「mass timber gravity system+RC lateral core」の典型構成です。鉛直荷重は集成材柱とCLT床で受け、地震・風の水平力は2基のRCコアで処理。木造部分を「重力系」のみに割り切ることで設計と承認を簡素化する北米合理性の表れです。
- RC基礎・1階:地下機械室含むベタ基礎+1階RCスラブで荷重伝達・設備スペース確保。
- RCコア2基:エレベーター3基+階段室内蔵の2基RCコアが18階まで貫通、横力主抵抗要素。コアは木造工程に先行打設され、建方クレーン支持にも活用。
- 集成材柱:2-18階に265mm角・305mm角等の規格断面(Douglas-fir-Larch)。工場で4階分一体プレファブ、PSL補強コラムを一部併用。
- CLT床(5層169mm):典型スパン約4.0×2.85m、柱頂直接支承の梁無しフラットスラブ構成でMEP通しやすく階高も抑制。
- 屋上RC補剛梁:地震時のキャップとして機能、剛床仮定で18階全層をRCコアと結合。
Fast + Eppの構造設計では、CLT床柱頭支承部に鋼板内蔵ジョイントを採用し、CLTパネル間にもタイダウン金物を配置。地震荷重はバンクーバーの中規模地震域(Site Class C/D)想定でカナダNBCのスペクトルを採用、線形動的解析と簡易設計法を組み合わせて検証されています。
CLTと集成材の数量・仕様
使用木材の総量は約2,700m³で、内訳はCLT 2,233m³、集成材464m³、PSL補強等を含みます。供給はBC州Penticton拠点のStructurlam Mass Timberで、樹種はSPF系・ダグラスファー=ラーチをBC州内調達。
| 部位 | 部材種別 | 樹種・グレード | 使用量 |
|---|---|---|---|
| 柱(2-18階) | 集成材(glulam) | D.Fir-Larch、24f-EX等級 | 約464 m³ |
| 床版(2-18階) | 5層CLT 169mm厚 | SPF系E1グレード | 約2,233 m³ |
| 柱補強(一部) | PSL(Parallel Strand Lumber) | D.Fir-Larch | 少量 |
| 合計 | — | — | 約2,700 m³ |
CO2固定量は木材1m³あたり0.9-1.0t換算で約2,400-2,700tCO2、Naturally:Wood/UBCの公表値では「建設フェーズで約679tCO2-eq削減」とまとめられ、類似規模の純RC・S造高層比で埋込炭素を約15-25%削減した水準に相当します。
施工革新:66日で18階の構造体を建てる
世界的に注目されたのは建方スピードです。Acton Ostry/Fast + Epp/Urban One/Seagateのチームは、設計初期からBIMを核としたデジタル・ファブリケーションを徹底し、CLT床と集成材柱を完全プレファブ・ナンバリング・JITで搬入。2階以上の木造構造体は実働約9.5週間(66日)で建ち上がり、典型的な進捗で1日2階・週2階以上のペースを実現しています。
- BIM全数モデリング:CLT床1,300枚以上、glulam柱600本以上を個別IDタグ付けし、CNC加工データを直接送信。現場加工ゼロ。
- JIT搬入:BC州Pentictonから週単位で必要数量のみ搬入、ヤード保管最小化。
- プレファブ外壁パネル:3.0×8.0m級を工場で断熱・防水・サッシまで一体化。
- クレーン1台運用:タワークレーン1台でCLT・glulam・外壁・MEPユニットを揚重。
- 1日2階サイクル:朝柱建て→昼CLT敷設→夕外壁取付・防水を1サイクルで反復。
この施工速度は同等規模のRC高層比で約4ヶ月の工期短縮に相当し、UBC Properties Trust試算では金利・機会損失でRC比約8-10%の建設コスト増分の一部を相殺。後半は学習効果で労務生産性が改善し、終盤数階は当初想定比2-3割速く建ったとされます。
火災安全:encapsulated mass timberの考え方
Brock Commonsの火災安全設計は北米高層木造の規制議論に最も直接的な影響を与えた領域です。プロジェクトでは「encapsulated mass timber construction」を採用し、全ての木質構造材を厚さ3層計38mm以上のType X石膏ボードで完全被覆。木材表面が火炎にさらされる時間を約2時間遅延させ、FRR 2時間以上を確保しました。
- FRR 2時間:柱・床・壁すべてASTM E119/CAN/ULC-S101で2時間耐火を実証。
- Type X石膏ボード3層(約38mm):木質構造材を完全被覆。
- スプリンクラー全フロア:NFPA 13準拠の自動消火を全室・共用部配置。
- コンパートメント化:住戸を独立防火区画、廊下・階段室との二重区画でフラッシュオーバー抑制。
- RCコア2基:独立2系統の避難階段で経路冗長化。
NRC Canada・FPInnovationsの事前試験では非被覆CLT床・集成材柱でもFRR 60-90分を示し、Brock Commonsの被覆設計はそこに余裕を持たせた多重防御です。AHJ(UBC・BC州・City of Vancouver)と事前協議を重ね、Site-Specific Regulationの形で承認。この「encapsulated mass timber」コンセプトはIBC 2021のType IV-A(18階・全被覆)/IV-B(12階・限定露出)/IV-C(9階・全露出可)の3類型法制化の原型となりました。ロビー・共用部にはアクセント的に集成材を露出させ、UBC教育施設としての「木造の見える化」も部分達成しています。
BIMとプレファブ:デジタル・ファブリケーションの主役化
Brock Commonsを支えたもう一つの柱は設計から製造・施工までのデジタル・ファブリケーション(D-fab)です。Acton Ostry/Fast + Epp/Structurlamの3社はBIMを共有し、CLT床1,300枚以上、glulam柱600本以上の個体識別IDをモデル段階で割り当て、Hundegger CNCに直接データ送信。現場切断・穴あけはほぼゼロとなり、CLT床は工場出荷時点でMEPスリーブまで開いた状態になっていました。
- Tekla Structures + Revit連携:構造・意匠を1つのモデルに統合、衝突検出(Clash Detection)を反復実施。
- CNC直接連携:Hundegger等の自動加工機にBIM由来のNCデータを送信し、人手介入なしで部材加工。
- RFIDタグ付き搬入:各部材にRFIDタグを付けて搬入順をトラッキング、現場での「探す・選ぶ」時間を削減。
- 4Dシミュレーション:時間軸を加えた4D BIMで、66日の建方計画を時系列シミュレーション。
- 外壁プレファブ・パネル化:木造外壁を工場で断熱・防水・サッシまで完成させ、現場では取付のみ。
このD-fab戦略はAscent MKE、Limberlost Place、米西海岸のMass Timberオフィス等の北米高層木造で標準ワークフローとして引き継がれ、日本のW350構想・大林組Port PlusにもBIM+プレファブ思想として共通採用されています。
居住性能と入居者評価
Brock Commonsは2017年7月竣工後、UBC Student Housing and Community Servicesによって運営されています。404室は18㎡前後のシングルとスイートタイプの組み合わせ、低層階に共用ラウンジ・スタディルーム・ランドリーを配置。
| 性能項目 | 評価/実測値 |
|---|---|
| 振動(床振動) | 居住者アンケートでRC比較で「同等以上」、Fast+Epp実測で1次振動数約11Hz以上を確保 |
| 遮音(住戸間) | STC 50以上、CLT床+浮き床+グラスウールで複合構成 |
| 断熱(外壁) | RSI-3.5(R-20)以上、BC州省エネ規定を上回る |
| 気密(C値相当) | プレファブ外壁により高気密、年間空調負荷を抑制 |
| 居住者満足度 | UBC学内アンケートで「他寮と同等以上」 |
| 木質感の認知 | 被覆のためRC寮と同等、ロビー・サイネージで可視化 |
UBC Sustainability・FPInnovations・Naturally:Woodは長期モニタリングを継続中で、CLTクリープ・湿度応答・振動特性・音環境評価データが学術論文・カンファレンス資料として公開され、北米高層木造設計ガイドラインの根拠資料として参照されています。
後継プロジェクトと国際的影響
Brock Commons以降、北米・欧州で高層木造プロジェクトが急増し、Brock Commonsは原典として頻繁に引用されます。特にAscent MKEはRCコア+集成材+CLTのハイブリッド基本構成をBrock Commonsから踏襲、「北米版を高層化したもの」と位置付けられています。
| プロジェクト | 所在地・完成 | 規模 | Brock Commonsとの関係 |
|---|---|---|---|
| Mjøstårnet | ノルウェー Brumunddal、2019 | 85.4m / 18階 | 純木造で世界最高更新(2019) |
| Ascent MKE | 米ミルウォーキー、2022 | 86.6m / 25階 | RCコア+集成材+CLT、Brock Commonsの直系発展 |
| Limberlost Place | カナダ・トロント、2024 | 約42m / 10階 | 大学施設としての公共ベンチマーク |
| T3 Minneapolis | 米ミネソタ、2016 | 約25m / 7階 | NLT採用、北米Mass Timberオフィス先行例 |
| Sara Cultural Centre | スウェーデン Skellefteå、2021 | 約75m / 20階 | 純CLTで複合用途、Brock Commons以降の到達点 |
| UBC Tall Wood連携 | UBC構内 | 追加プロジェクト | Brock Commonsの研究を引き継ぐ後継棟 |
住友林業W350(高さ350m・70階・2041年目標)も2018年構想公開時にBrock Commonsを「現時点の最先端」として参照し、「これを大きく超えるレベルへ」のメッセージで発表。国内では大林組Port Plus(横浜、44m・11階、2022)が最も近い規模で、Brock Commonsの施工・耐火データが講演資料で参照されています。
建築基準改正とSite-Specific Regulation
Brock Commonsの法的承認プロセスは北米の建築基準改正の方向性を決定づけました。当時のBC州建築基準では木造6階上限のため、UBCはSite-Specific Regulationを申請。承認までに2年弱を要し、火災安全・構造(耐震・耐風・振動)・施工品質(CLT含水率・継手)・運用維持の4領域で専門委員会レビューが実施されました。
- NBC(National Building Code of Canada):2020年版改正で12階建てまでのMass Timberが標準化、Brock Commonsの実証データが直接の根拠の一つに。
- BC Building Code 2018:BC州独自に2019年から12階木造を標準化、Brock Commonsを「先行事例」として位置付け。
- IBC 2021(米国):Mass Timber Type IV-A(最大18階)/IV-B(最大12階)/IV-C(最大9階)を新設、Brock Commonsの被覆モデルがType IV-Aの原型。
- NFPA 5000:高層木造の防火設計指針が整理され、Brock Commonsの設計記録が参照資料に。
これら規制改正は北米の12-18階木造プロジェクト開発を低リスク化し、2020年代後半に急増するMass Timberオフィス・住宅の基盤を整備。Brock Commonsはその最初のドミノです。
環境性能とライフサイクルアセスメント
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 木材内バイオジェニック炭素 | 約2,400 t CO2-eq(木材1m³あたり0.9t換算) |
| 埋込炭素削減(純RC比) | 約679 t CO2-eq(建設フェーズで15-25%削減) |
| 地域材調達距離 | BC州内Penticton(バンクーバーから約400km) |
| 森林認証 | SFI/PEFC認証材を中心に使用 |
| 運用エネルギー | BC省エネ建築基準(ASHRAE 90.1相当)に準拠、外皮高断熱 |
| 水使用量 | 低流量器具・節水トイレで標準以下 |
| 解体時の再利用 | CLT・glulamは部材単位の再利用・カスケード利用が想定可能 |
UBCはBrock Commonsを「UBC Climate Action Plan 2030」の象徴プロジェクトと位置付け、構内ベンチマークに活用。RC・S造比で建設フェーズの埋込炭素を15-25%削減する一方、木材輸送距離・乾燥・接着剤等の木材LCAの細部もオープンデータで提供し、ネットゼロ建築議論の前進に貢献しています。
日本との比較:耐震要件と純木造志向
| 項目 | Brock Commons(カナダ) | 日本(参考) |
|---|---|---|
| 所在地・完成 | BC州バンクーバー、2017 | — |
| 規模 | 53m / 18階 / 404室 | 大林組Port Plus 44m / 11階 / オフィス(2022) |
| 用途 | 学生寮(住宅) | オフィス・複合用途が主 |
| 構造形式 | RCコア+集成材+CLT(ハイブリッド) | 純木造ラーメン+CLT耐震壁が主流(W350構想は純木造) |
| 耐震荷重 | カナダNBC、Site Class C/D | 建築基準法、Cs=0.2前後+偏心ペナルティ |
| 耐火 | Encapsulated(被覆型) | 燃えしろ設計+メンブレン保護の併用 |
| 規制承認 | Site-Specific Regulation | 大臣認定(性能評価) |
| 木質感の露出 | 限定的(被覆主体) | 燃えしろ設計で意匠的露出を確保しやすい |
日本はカナダ比で地震荷重が約3-5倍重く、純木造で同規模実現には接合部・耐震壁・コア剛性の難度が一段上がります。日本の木造高層は燃えしろ設計(着火後一定厚さを意図的に炭化させて構造を残す手法)を主軸にメンブレン保護を併用する2系統で、Brock Commonsの「encapsulated一辺倒」とは対照的。住友林業W350・大林組Port Plus・竹中工務店のFlat’sウッドステージは独自の耐震×耐火の最適解を模索し、Brock Commonsを到達点ではなく出発点として発展しています。
関連認証・補助金・パートナーシップ
| 制度・パートナー | 内容 |
|---|---|
| Wood First Initiative(BC州) | BC州の木造優先施策、公共建築での木造採用を後押し |
| Forestry Innovation Investment(FII) | BC州の森林イノベーション投資機関、Brock Commonsを重点広報 |
| Natural Resources Canada(NRCan) | 連邦政府の木造研究助成、TimberFirst・Green Construction through Wood (GCWood)で支援 |
| Canadian Wood Council(CWC) | カナダ木造技術協会、設計ガイド・耐火試験データを提供 |
| FPInnovations | カナダ林産研究機関、長期モニタリングを実施 |
| SFI/PEFC認証 | 地域材の持続可能性認証 |
| UBC Tallwood Initiative | UBCの木造高層研究プログラム、Brock Commonsを中核プロジェクトとして展開 |
| AIA/RAIC連携 | 北米建築家協会との連携で、設計ガイド・カンファレンスでの広報 |
よくある質問(FAQ)
Q1. Brock Commonsは見学可能ですか
A. UBC構内の学生寮のため内部見学は学生・関係者中心に限定。外観はUBCポイントグレー・キャンパスで自由に確認可能で、Naturally:WoodやUBC Sustainabilityが専門家向けの建築ツアーを不定期で企画しています。
Q2. 「encapsulated」設計のメリット・デメリットは
A. メリットは(1) 既存防火基準・保険規定への適合容易、(2) 高層化承認を取りやすい、(3) 設計検討が単純化、の3点。デメリットは(1) 木質感が居住空間で見えない、(2) 石膏ボード3層分のコスト・重量増、(3) 仕上げ作業がRCビル並みに増える、の3点。日本のW350・Port Plusの燃えしろ設計とは設計思想が大きく異なります。
Q3. なぜ大学の学生寮として建てられたのですか
A. UBCが事業主体となれば(1) 実証リスクを大学が自ら負える、(2) 戸数繰り返し性とプレファブ化の相性が良い、(3) 入居者の長期モニタリング協力が得やすい、(4) 教育施設の広報効果が大きい、の4利点が揃うため。BC州・カナダ連邦の政策後押しもあり、北米初18階木造ハイブリッドの実証先として最適でした。
Q4. Brock Commonsは現在世界何位の木造ですか
A. 完成時(2017年7月)世界最高、Mjøstårnet(85.4m、2019)→Ascent MKE(86.6m、2022)で記録更新。2026年時点で世界第3-4位グループだが、「大規模木造ハイブリッド最初のスケールアップ事例」として高さ順位以上の歴史的価値を持ちます。
Q5. 日本でBrock Commons級のプロジェクトはありますか
A. 大林組Port Plus(横浜、44m・11階、2022)が最も近い規模、住友林業W350(350m・70階・2041年目標)が実現すれば大きく上回ります。竹中工務店・三井ホーム・西松建設・東急建設等も10-20階級の木造ハイブリッドのプロトタイプを進めています。
Q6. CLTと集成材は何が違うのですか
A. 集成材(glulam)は薄板を繊維方向揃えて積層接着した「線材」(柱・梁)、CLTは薄板を繊維方向直交に積層接着した「面材」(床・壁)。Brock Commonsはglulam柱でCLT床を支える典型的組み合わせを採用しています。
Q7. 木材の長期維持はどうしているのですか
A. CLT・glulamは適切な乾燥・防湿・防腐措置でRC・S造同等以上の耐用年数(60-100年以上)が期待可能。Brock Commonsでは(1) 施工中CLT含水率15%以下管理、(2) encapsulationで湿気・紫外線遮断、(3) UBCの含水率・温度センサ長期モニタリング、の3層対策で信頼性を確保しています。

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