車両系建設機械(整地等)運転技能講習|作業道をつくる38時間

作業道をつくる38時間の講習

いまの日本の林業は、作業道の上に成り立っています。路網を入れてフォワーダを走らせ、丸太を出す。その作業道を切るのがバックホウ(ドラグ・ショベル)です。この機械を運転するには、車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習の修了証が要ります。免除がなければ学科13時間+実技25時間の38時間・6日間。緑の雇用で取る資格のなかで、もっとも長い講習です。

目次

3トンで資格が分かれる

車両系建設機械の資格は、機体重量で二つに分かれます。

3トンで技能講習と特別教育が分かれる機体重量3トン以上は技能講習、3トン未満は小型車両系建設機械の特別教育。3トンで技能講習と特別教育が分かれる機体重量で必要な資格が変わる機体重量3トン以上運転技能講習登録教習機関・修了試験あり・最大38時間機体重量3トン未満小型車両系建設機械の特別教育学科7h+実技6h=13時間・試験なし林業で作業道を切るバックホウは0.25〜0.45m³級。機体重量はおおむね3トンを超える資格は「機体」で決まる。積む土の量でも、掘る深さでもない根拠: 労働安全衛生法 第61条、労働安全衛生法施行令 第20条第12号、安衛則 第36条第9号
図2:車両系建設機械の資格区分(出典:労働安全衛生法施行令第20条第12号ほか)。

機体重量3トン以上なら技能講習(労働安全衛生法第61条の就業制限業務)。3トン未満なら小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の運転の業務に係る特別教育(学科7時間+実技6時間=13時間)で足ります。

判定するのは機体重量であって、バケット容量でも掘削深さでもありません。林業で作業道の開設に使うのは0.25〜0.45m³級のバックホウが中心で、機体重量はおおむね3トンを超えます。したがって、実務では技能講習が前提と考えておくべきです。

ちなみに「整地・運搬・積込み用及び掘削用」というのは、労働安全衛生法施行令別表第7の第1号・第2号に掲げる機械のこと。ブル・ドーザー、モーター・グレーダー、トラクター・ショベル、ずり積機、パワー・ショベル、ドラグ・ショベル、ドラグライン、クラムシェル、バケット掘削機、トレンチャーなどが該当します。同じ別表でも第3号の基礎工事用、第6号の解体用は別の資格です。

38時間の中身――実技20時間が「走行」

カリキュラムは車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習規程で定められています。

車両系建設機械(整地等)運転技能講習のカリキュラム学科13時間、実技25時間の合計38時間。免除がなければ6日間かかる。車両系建設機械(整地等)運転技能講習のカリキュラム学科教育走行に関する装置の構造・取扱い4h作業に関する装置の構造・取扱い5h運転に必要な一般的事項3h関係法令1h実技教育走行の操作20h作業装置の操作5h合計38時間・6日間。実技20時間が走行の操作に充てられる出典: 車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習規程(昭和47年労働省告示第112号)
図1:車両系建設機械(整地等)運転技能講習のカリキュラム(出典:同技能講習規程)。

目を引くのは実技の配分です。走行の操作に20時間、作業装置の操作に5時間。掘る練習より、走る練習のほうが4倍長い。

理由は災害の統計にあります。車両系建設機械の重大災害の多くは、転倒・転落接触です。バケットの操作を誤ってもたいてい土が崩れるだけですが、走行を誤れば機械ごと谷へ落ちます。とくに林業の作業道は、幅員3m前後、片側が切土、片側が谷という条件が普通です。ここを走れることが、この資格の本体です。

学科では「運転に必要な一般的事項に関する知識」3時間で力学と土質工学、土木施工の方法を扱います。土の安息角、含水比と支持力、切土・盛土の勾配――作業道づくりに直結する内容です。作業道は「掘る」のではなく「土を読む」仕事だということが、ここで分かります。

免除で38時間が14時間になる

この講習は、持っている資格によって時間が大きく変わります。技能講習規程第3条が免除規定を定めており、登録教習機関はこれに沿ってコースを分けています。

免除によって38時間が14時間まで縮む大型特殊免許があれば走行操作20時間などが免除され、14時間・2日に短縮される。免除によって38時間が14時間まで縮む保有資格による受講時間の短縮(登録教習機関のコース例)免除なし38時間基礎工事用の技能講習修了34時間小型車両系特別教育+6か月18時間大型特殊免許/不整地運搬車14時間建設機械施工管理技士10時間解体用の技能講習修了6時間大型特殊免許を先に取っておくと、38時間が14時間・2日で済む免除の可否は保有資格の種類で決まる。修了証・免許証を持って教習機関に確認する出典: 車両系建設機械運転技能講習規程 第3条、コマツ教習所のコース区分
図3:受講時間の短縮(出典:技能講習規程第3条、コマツ教習所)。時間数は教習機関により差がある。

いちばん効くのが大型特殊自動車免許です。これを持っていれば実技の走行操作をはじめとする科目が免除され、14時間・2日間で修了できます。費用も半分以下になる。緑の雇用に入る前に自動車教習所で大型特殊を取っておくと、あとの負担が軽くなります。なお、免許の限定条件によって免除の範囲が変わることがあるため、申し込み前に教習機関へ確認してください。

ほかにも、建設機械施工管理技術検定の合格者、不整地運搬車運転技能講習の修了者、車両系建設機械(解体用・基礎工事用)の技能講習修了者、小型車両系建設機械の特別教育を修了して6か月以上の経験がある人などに免除があります。受講料は免除なしで8〜12万円、大型特殊免許ありなら3〜5万円が目安です。

この資格だけでは足りない場面

林業でバックホウを使うとき、注意すべき点が二つあります。

第一に、アタッチメントを替えると別の資格が要ることがあります。同じベースマシンにグラップルやハーベスタヘッドを付けて伐木・造材をするなら、それは伐木等機械の作業であり、伐木等機械の運転の業務に係る特別教育が別に必要です。ウインチを付けて集材するなら簡易架線集材装置等の特別教育資格は機械ではなく作業に付いてくると覚えておいてください。

第二に、道路上の走行は含まれません。この技能講習が対象にするのは「道路上を走行させる運転を除く」業務です。公道を自走させるには大型特殊自動車免許(または小型特殊)が要ります。林道が公道扱いかどうかは路線ごとに違うので、現地で確認が必要です。

作業道と、崩れない山

作業道の開設は、林業のなかでもっとも技術差が出る仕事のひとつです。同じ斜面に道を切っても、5年後に崩れる道と、20年もつ道がある。違いは、路面勾配・排水・切土高・盛土の締固めといった基本の積み重ねです。

近年の豪雨災害では、作業道の崩壊が土砂流出の起点になった事例が各地で報告されています。道をつくる技術は、山を壊さない技術でもある。38時間の技能講習はその入口にすぎませんが、土質工学の3時間をどう受け取るかで、その後の10年が変わります。

なお、森林作業道作設オペレーターという研修が林野庁の補助事業として各地で行われています。技能講習が「機械を安全に動かす」ための資格であるのに対し、こちらは「壊れない道を設計する」ための研修です。技能講習を取ったあとの、次の一歩として考えてください。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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