- 宮崎県は10月23日、2025年度の再造林率が87%になったと発表した(宮崎日日新聞)。前年度の79%から8ポイント上昇。目標は2026年度に90%以上。
- 2024年秋の植栽から、県11%・市町村11%の補助の上乗せが始まった。国・県の68%と合わせて補助率90%、所有者の負担は32%から10%になる。
- ただし上乗せの対象は、公道・作業道から100m以内の林小班(再造林強化区域)など、条件を満たす山に限られる。
- 補助を現場の数字に変えたのは、ネットワークの事務局を担う8つの森林組合と、会員名簿で164番まで並ぶ事業者・組合。上乗せが始まる前は、所有者が払うはずの費用を森林組合などが肩代わりして植えることが多かった。
- 率の分母は「伐った針葉樹の推計面積」。2023年度は植えた面積が増えて率が上がり、2024年度は分母が減って率が上がった(編集部の試算)。
- 他県とは同じ物差しで比べられない。2024年度の順位(林業県のなか)は北海道・愛媛・宮崎の順だが、1・2位の率は非公表。鹿児島県は61%で過去最高。秋田県も2026年に再造林の条例をつくった。
- 公表資料で確認できないこと:2025年度の再造林面積と分母の面積、他県と同じ定義で比べた率。
木を伐ったら、植える。標語にすると、小学校の廊下に貼ってありそうなくらい当たり前だ。ところが日本の人工林では、これが当たり前ではない。林野庁の説明資料(2023年)によれば、主伐のあとに植え直されているのは全国で約4割だという(林野庁)。
宮崎県は10月23日、この割合が県内で87%になったと発表した(宮崎日日新聞)。前年度から8ポイント上がり、5年連続の上昇だという。宮崎はスギの素材生産量が全国1位の県だ。伐る量が日本一の県で、植え直す割合も上がっている。
4年かけた7ポイントを、1年で抜いた
2018〜2022年度の再造林率は72〜75%を行ったり来たりしていた。県自身が「近年は70%台にとどまっている」と書いていた水準だ(宮崎県)。2023年度に78%、2024年度に79%。2020年度の72%から、4年で7ポイント。そこから2025年度は、1年で8ポイント上がった。
県はこの間に手を打っている。2024年7月には、都道府県で初めての再造林に関する条例「宮崎県再造林推進条例」を施行した(林野庁 白書)。森林組合を単位とする県内8地域には「地域再造林推進ネットワーク」をつくり、伐る人と植える人の情報をつないでいる。報道によれば、県は上昇の理由に、補助率の引き上げ、従事者の待遇改善、このネットワークの活動を挙げた。
補助率は68%から90%へ
いちばん分かりやすく効くのは、お金の話だ。再造林の経費には、これまでも国・県で68%の補助があった。残りの32%は森林所有者が負担する。県は2024年秋の植栽から、県11%・市町村11%を上乗せし、補助率を90%にした(宮崎県)。所有者の負担は10%になる。補助の仕組みそのものは造林補助金の記事にまとめている。
上乗せが通年で使えたのは、2025年度が最初の年度だ。87%は、その年度の数字である。
県の資料には、もう一つの理由が書いてある。所有者が払うべき32%を森林組合などが肩代わりして再造林しているケースが多く、そのしわ寄せで造林作業員の賃金が下がっている、というものだ。県は、森林組合の造林作業班の平均日給を9,400円(2021年度)から13,000円(2026年度)に上げる目標を立てている。補助率の話は、所有者の財布の話であると同時に、山で苗を植える人の日給の話でもある。
90%になるのは「道から100m」の山
上乗せには条件がある。いちばん大きいのは場所だ。対象は、県が把握している公道や作業道から100m以内の林小班で、県は「再造林強化区域」と呼んでいる(宮崎県)。県のパンフレットは「道から近いなどの林業採算性の高い区域」と説明している(宮崎県)。
植え方にも条件が付く。1haあたり2,000本以下の低密度植栽、省力・低コストの施業、ネットワークへの加入。市町村が県と同額以上を上乗せすることも条件で、市町村が乗らなければ90%にはならない。
道から遠い山を見捨てるわけではない。県は、林業に向かない森林は広葉樹などを植えて「多様な森林へ誘導」するとしている(宮崎県)。植え直す山と、林業から降りる山を分けて、植え直す山にお金を集める。補助90%は、その線引きの上に乗っている。
制度を数字に変えたのは、山の現場
補助率は、県議会で予算が通れば1行で変わる。でも再造林率は、それだけでは1ポイントも動かない。山の持ち主を訪ねて植え直しを勧め、伐る業者と植える業者の段取りを合わせ、申請書を書き、苗を背負って急斜面を登る人がいて、はじめて動く。
宮崎でその役を担っているのが、森林組合と林業事業体だ。地域再造林推進ネットワークの事務局は、西臼杵・延岡地区・耳川広域・児湯広域・宮崎中央・西諸地区・都城・南那珂の8つの森林組合が務めている(宮崎県のパンフレット)。県の会員名簿には、2026年10月時点で164番までの事業者・組合が並ぶ(宮崎県)。加入するには、伐る側は県の「伐採、搬出及び再造林ガイドライン」を守ること、植える側は作業員の労務改善に取り組むことが求められる(宮崎県)。補助を受ける代わりに、自分たちの働き方も見直すと約束した人たちだ。
上乗せが始まる前のことも書いておきたい。前の節のとおり、所有者が払うはずの32%を森林組合などが肩代わりして植えるケースが多く、そのしわ寄せが作業員の賃金に出ていた(宮崎県)。採算の合わない植え直しを、自分たちの取り分を削って引き受けてきたことになる。率が70%台で踏みとどまっていたのは、この人たちが植え続けていたからでもある。
苗木の手当ても、現場が先に動いていた。都城森林組合は2019年から豊田通商と組んで苗木づくりに取り組み、2021年10月にスギのコンテナ苗の出荷を始めた。花粉の少ない飫肥スギの挿し木苗で、年25万本を予定していた(豊田通商)。耳川広域森林組合も2021年度から、県林業技術センターが開発した容器でコンテナ苗をつくり、2024年春には32,900本を出荷している。組合は「伐ったら植える」を、森林組合が責任と義務を負う基本だと書いている(耳川広域森林組合)。苗がなければ、補助率が何%でも植えられない。
林野庁の委託調査も、補助金と事業体の工夫で所有者の自己負担を下げ、地域の再造林率を上げている例がある、と書いている(林野庁)。宮崎の87%は、その工夫が県の制度とかみ合った結果だ。制度は県がつくれる。でも率をつくれるのは、山に入る人だけだ。
率は、分母でも動く
再造林率は、その年度に植えた面積を、その年度に伐った針葉樹の面積で割ったものだ。ただし分母は、実際に測った面積ではなく推計面積である(宮崎県)。
2022年度と2024年度を比べると、植えた面積は2,151haから2,079haに3%減った。それでも率は75%から79%に上がった。分母を逆算すると、伐った推計面積が約2,630haに、約8%減っている。分母が2022年度のままなら、2024年度の率は72%だった(いずれも編集部の試算)。
間の2023年度をはさむと、中身はもっとはっきりする。2023年度は、植えた面積が2,242haに4%増え、分母は逆算で約2,870haとほぼ横ばいだった。2023年度は「たくさん植えて」上がった年、2024年度は「伐る面積が減って」上がった年である(編集部の試算)。
率を上げる方法は2つある。たくさん植えるか、あまり伐らないかだ。算数としては、どちらも同じ「改善」になる。
2025年度の87%がどちらで動いたのかは、まだ分からない。県の発表資料で面積を確認できていないからだ。
ほかの県は? 同じ「率」でも物差しが違う
87%はほかの県と比べて高いのか。いちばん知りたいところだが、公表資料ではきちんと比べられない。
宮崎県の2026年6月の発表によれば、2024年度の再造林率の順位は、素材生産量が50万㎥以上の都道府県のなかで1位が北海道、2位が愛媛県、3位が宮崎県(79%)だった。前年度の2023年度は4位(78%)。ただし元になった林野庁の資料について、県は他の自治体の率は公表できないとしており、北海道と愛媛県が何%なのかは分からない(宮崎県)。県の別の資料にある「全国3位(73%)」も、同じ林業県のなかでの2018〜2020年度の平均である(宮崎県)。どの土俵で数えるかで、順位は変わる。
隣の鹿児島県は、2024年度の再造林率が61%で過去最高だった。5年で21ポイント上がり、再造林面積は1,242haと、2028年度の目標(1,200ha)を前倒しで超えた。県は70%を目指すという(南日本新聞)。同じ県のなかでも差は大きく、大隅半島の錦江町は2024年度で約35%だった(錦江町など)。
そもそも物差しがそろっていない。林野庁の委託調査(2024年度)は、「再造林率」の定義があいまいで、市町村や都道府県の実務で統計として算出することが決められておらず、伐採面積や再造林面積を同じ基準で正確に把握できていない、と指摘している(林野庁)。全国の「約4割」も、民有林の主伐面積を推定して出した値だ(林野庁)。同じ名前の数字が、同じ物差しで測られているとは限らない。
それでも、各地で動きは出ている。林野庁の資料(2026年4月)から拾うと、次のとおりだ(林野庁「再造林をめぐる状況」)。
- 条例:宮崎県に続き、秋田県が2026年に「秋田県再造林の促進に関する条例」を制定した。担い手の処遇と労働環境の改善を基本理念に入れている(秋田県)。
- 基金:森林組合や林業事業体などが中心になって再造林を支える基金は、2025年10月時点で全国20道県に30ある。岩手県では2017年に林業・木材産業の8団体が「岩手県森林再生機構」をつくり、低コストの造林を条件に1haあたり10万円を上限に助成している。
- 木の値段に植林代を入れる:大分県佐伯市では、ウイング(株)が佐伯広域森林組合から、再造林の費用を含んだ価格でスギの2×4材を年1万㎥買う協定を結んだ。
鹿児島県の錦江町では2025年10月、町・大隅森林組合・日本森林アセット(住友林業の子会社)の3者が協定を結び、再造林率100%を目指している。持ち主が手放したい伐採跡地を同社が買い、町が費用の一部を助成し、大隅森林組合が植える。J-クレジットの売上は再造林の費用に回す(錦江町など)。鹿児島県の曽於市森林組合は年200〜300haを植え、苗木の運搬と測量にドローンを使っている(南日本新聞)。
所有者の自己負担をどう消すか。植える人をどう確保するか。解いている問題は、どこも同じ2つだ。宮崎は補助率と賃金で、岩手は基金で、佐伯は木の値段で、錦江町は山ごと買うことで解こうとしている。
山を持っている人へ:相談先
宮崎県内に山を持っていて、伐採や植え直しを考えているなら、相談先は地域の再造林推進ネットワークだ。事務局は森林組合で、県のパンフレットに8つの森林組合の連絡先が載っている(宮崎県のパンフレット)。市町村の林務担当や、県の出先機関でも相談できる。
伐採から植栽までを一続きでやる一貫作業や、下刈りの省力化は、上乗せの条件である「省力・低コスト」とつながる技術だ。
編集部の視点
林野庁の資料には、森林組合へのアンケート(104組合が回答)で、再造林をしない理由の1位が「将来の収益で造林費用を賄えない」(54組合)だったと載っている(林野庁)。補助率90%は、この理由を正面から削りにいく制度だ。
目標の90%まで、あと3ポイント。次の発表では、率と一緒に面積も見たい。植えた面積が増えたのか、伐った面積が減ったのか。率だけでは、それが分からない。
もう一つ注文するなら、国には都道府県の率を同じ定義で公表してほしい。各県がそれぞれの物差しで「過去最高」を発表しても、比べられなければ、うまくいったやり方がほかの県に広がらない。宮崎の森林組合と事業体が積み上げた87%は、比べられてこそ価値が分かる数字だ。
- 宮崎県再造林率上昇87% 補助金や待遇改善後押し 25年度(宮崎日日新聞、2026年10月24日)― 2025年度87%、前年度比8ポイント増、5年連続上昇、県の挙げた理由。
- グリーン成長プロジェクトの推進について(宮崎県 環境森林部、九州林政連絡協議会資料)― 2018〜2022年度の主伐推計面積・再造林面積・率、率の定義、補助率68%→90%の内訳、再造林強化区域、造林作業班の日給の目標。
- 資料編「主な指標における本県の現況」(宮崎県、2026年4月掲載)― 2024年度の再造林面積2,079ha・再造林率79%、スギ素材生産量全国1位。
- 3つの日本一挑戦プロジェクト(宮崎県)― 再造林率73%(全国3位※素材生産50万㎥以上の林業県/H30-R2平均)、2026年度の目標90%以上。
- 再造林の推進について/森林所有者向けパンフレット(宮崎県)― 補助の要件、林業に向かない森林の扱い、相談先。
- 令和6年度 森林及び林業の動向 事例Ⅰ-3 宮崎県における再造林推進に向けた取組(林野庁)― 都道府県初の再造林条例、8地域のネットワーク、補助の要件。
- 林野庁の再造林の促進施策について(林野庁 整備課、2023年9月21日)― 全国の再造林率は約4割、再造林をしない理由(農林中金総合研究所「第29回森林組合アンケート調査結果」2017年)。
- 【グリーン成長プロジェクト】令和6年度の再造林率について(宮崎県、2026年6月16日)― 2024年度79%・全国3位、2023年度78%・4位、1位北海道・2位愛媛県、他自治体の率は非公表。
- 地域再造林推進ネットワークの会員登録について/会員名簿(宮崎県)― 加入要件、会員の整理番号(2026年10月時点で164)。
- スギコンテナ苗木25万本を出荷開始(豊田通商、2021年11月25日)/スギコンテナ苗(耳川広域森林組合)― 森林組合の苗木生産。
- 令和6年度 再造林の実態及び課題整理等に関する調査委託事業 報告書(林野庁)― 再造林率の定義と統計の課題(p.49)、事業体の工夫の例。
- 再造林をめぐる状況(林野庁、2026年4月)― 秋田県の条例、再造林の基金(20道県・30基金)、岩手県森林再生機構、佐伯市の協定。
- 秋田県再造林の促進に関する条例の概要(秋田県)。
- 伐採後の「植え直し」が過去最高1242ヘクタール(南日本新聞、2026年5月6日)― 鹿児島県の2024年度再造林率61%、曽於市森林組合の取り組み。
- 鹿児島県錦江町で再造林率100%目指す(錦江町・大隅森林組合・住友林業・日本森林アセット、2025年10月1日)― 錦江町の2024年度再造林率約35%、協定の仕組み。
※ 2025年度の87%は報道によるもので、宮崎県の発表資料そのものは確認できていません。図4の2024年度の分母と「分母が2022年度のままなら」の率、本文の2023年度の分母は、公表された面積と率から編集部が逆算した試算です。各自治体の再造林率は定義が統一されていないため、図5は参考として並べたものです。

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