【ヤマモモ】Morella rubra|甘い赤実の食用樹種、四国地方の地域食材

ヤマモモ | Forest Eight

初夏、6月から7月にかけて、街路樹や社寺の木に赤紫色の小さな実がびっしりとなっているのを見かけたら、それがヤマモモ(山桃、Morella rubra)かもしれません。つぶつぶした実は甘酸っぱく、ジャムや果実酒に加工されて高知・徳島の夏の味覚として親しまれています。マメ科でもないのに放線菌と共生して空気中の窒素を取り込み、痩せ地や海辺でもたくましく育つ――食べておいしく、緑化にも強い、両県の県木にもなっている個性派の常緑樹です。

気乾比重0.71中重〜やや重重硬・耐摩耗果実糖度10-13°Brix甘酸っぱい風味樹高レンジ5-15m(最大20m)中高木N固定能★★★★☆Frankia共生痩せ地適応
図1:ヤマモモの主要スペック(気乾比重・果実糖度・樹高・窒素固定能)
目次

枝先に集まる葉と、つぶつぶの赤い実

ヤマモモはヤマモモ科の常緑広葉樹で、樹高は5〜15m。見分けのポイントは葉と果実です。倒披針形の革質の葉が枝先に集まってつく独特の葉序を持ち、若木では15〜25cmと大きめ。葉の裏には黄色い腺点があります。シイやタブノキと混同されがちですが、葉が枝先に集中する点で区別できます。

そして何より分かりやすいのが果実。直径1〜2cmの実は表面に多数の小突起があってつぶつぶした独特の外観で、6〜7月に赤紫〜暗紅色に熟します。この見た目は他の樹種にはほぼなく、確実な目印になります。糖度は完熟で10〜13度ほど、ベリーに近い甘酸っぱさです。

ヤマモモは雌雄異株で、実をつけるのは雌株だけ。しかも結実には近くに雄株が必要です。3〜4月の花期には、雄株が黄褐色の細長い尾状の花を、雌株が赤い球状の花をつけるので、花を見れば雌雄が判別できます。

甘酸っぱい果実と四国の地域食材

ヤマモモの果実は傷みが早く、収穫後は常温で1〜2日、冷蔵でも2〜3日が限界。そのため生で出回るのはごく短い旬の間だけで、多くはジャム・シロップ・果実酒・冷凍ピューレに加工されます。徳島・高知では古くから「やまもも酒」「ヤマモモジャム」が郷土の味として受け継がれてきました。

この扱いにくさを逆手にとった6次産業化の好例でもあります。果実の生産から加工、道の駅や観光農園での販売まで一貫して手がけることで、生果価格の3〜5倍の付加価値を生み出す経営が各地で成立。高知では6〜7月の「ヤマモモ狩り」が地域観光の目玉になっています。原産地の中国南部では「楊梅(ヤンメイ)」として大規模に栽培され、世界生産の95%以上を中国の浙江省・福建省が占めます。果実重20gを超える大粒品種「東魁」もこの地域で生まれました。

痩せ地に強い、街路樹・防潮林の主力

ヤマモモが緑化樹として重宝されるのは、放線菌フランキア(Frankia)と根で共生し、空気中の窒素を自前で取り込めるからです。マメ科以外でこの能力を持つ樹はハンノキやグミなど限られ、おかげで養分の乏しい海岸の砂地や痩せ地でもよく育ちます。耐潮性・耐乾性・大気汚染への強さも兼ね備え、昭和の都市緑化期に四国・九州・関西で街路樹として大量に植えられました。

ただし果実が落ちて路面を汚すのが難点で、近年の街路樹では実をつけない雄株だけを植える方式が増えています。神戸や福岡の臨海部では防潮・防風林としても活躍し、社寺の境内には樹齢数百年の古木も残ります。海岸防潮林の整備や特用林産物としての活用は森林環境譲与税の対象にもなり、詳細は【森林環境譲与税とは】629億円規模・市町村実施率82%の最新動向を参照ください。

赤褐色の重硬材と「楊梅皮」の染料

木材としてのヤマモモは気乾比重0.71の重硬材で、心材は美しい赤褐色。流通量はごくわずかですが、その色味と緻密さから床柱や茶筒、印材、将棋駒などの工芸品に珍重され、四国の木工房ではふるさと納税の返礼品にもなっています。火持ちがよく最高級の薪材としても評価されます。

もうひとつ、樹皮は古来「楊梅皮(ようばいひ)」と呼ばれる天然染料です。タンニンを15〜20%含み、媒染剤を変えることで黄褐色から赤褐色、暗褐色まで多彩な色が出せます。染色の堅牢度も高く、紬や草木染め、革なめしの天然原料として今も限定的に使われています。

よくある質問

ヤマモモの果実はどんな味ですか?

甘酸っぱく、ベリー類に似た風味です。完熟果は糖度10〜13度ほどで、生食ではジューシーな甘みと程よい酸味が楽しめます。ただし種が大きく傷みも早いので、ジャムやシロップ、果実酒などの加工原料として使われることが多いです。

庭木として育てて実は採れますか?

育てられます。耐潮性・耐乾性に優れ、剪定で樹高5〜10mにコンパクトに保てます。ただし雌雄異株なので、実を収穫するには雌株(瑞光・森口など)と受粉用の雄株をセットで植える必要があります。住宅の庭なら雌株1本+雄株1本が標準です。

街路樹では実が落ちて困りませんか?

果実落下による路面汚れは実際の課題で、近年の街路樹植栽では実をつけない雄株だけを選ぶ方式が主流になっています。雄株なら景観や通行への影響がなく、常緑の緑陰が得られるので都市緑化に向いています。

中国の「楊梅」と日本のヤマモモは同じですか?

同じ種(Morella rubra)です。中国南部が原産で、日本へは古代に伝わったと推定されます。中国の浙江省・福建省では世界生産の大半を占め、東魁などの大粒・高糖度品種が発達しました。日本の在来種より大粒な傾向があります。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次