木材需給表(林野庁)の読み方|用材・燃料材・しいたけ原木

木材自給率はどの数字か

「日本の木材自給率は43%」とか「木材需要は8,000万m³」といった数字は、ニュースでもよく目にします。その大もとになっているのが、林野庁が毎年まとめている「木材需給表」です。日本の木材市場の全体像を、供給量・需要量・自給率という形で一望できる、いわば家計簿のような統計。ただ、いざ読もうとすると区分や用途が入り組んでいて、どの数字が何を指すのか迷いがちです。この記事では、その読み方のコツを整理してみます。

まず大きな枠組みから。木材需給表は「用材」「燃料材」「しいたけ原木」の3つに分かれています。2023年(確報値)でいうと総需要量は約8,000万m³。その内訳が下の図です。

木材需給表の構造 用材・燃料材・しいたけ原木の3区分と需給バランスの構造を示す 木材需給表の3区分構造(2023年・丸太換算) 用材 約5,940万m³(約74%) 製材・合板・パルプチップ・その他 燃料材 約2,050万m³ 約26%|発電・薪・チップ等 しいたけ 20万m³ 用材の用途別内訳(約5,940万m³) 製材 2,180 合板750 パルプ・チップ用材 2,780 他230 木材全体の国産・輸入別構成 国産材 約3,440万m³ 輸入材 約4,560万m³ 木材自給率(全体)43.0%。用材だけの自給率は38.6%で全体より低い。 全体のほうが高いのは、燃料材の自給率が55.3%と用材より高いため。 用途別では建築用材等(製材+合板)55.3%、パルプ・チップ用材17.2%。 燃料材は2014年に「薪炭材」を改称し、燃料用チップを加えた区分。
図1:木材需給表の3区分構造(2023年、出典:林野庁「令和5年木材需給表」より作成)

この統計、じつは1955年からずっと続いています。1960年の総供給量は約7,100万m³。高度経済成長期に住宅・建築需要が爆発し、1973年には過去最高の約1億2,100万m³まで膨らみました。その後は住宅着工の減少などで縮小し、いまの8,000万m³前後に落ち着いています。70年近い時系列があるおかげで、戦後の木材需給の移り変わりがまるごと追えるのが、この表の何よりの強みです。

目次

「用材」は4つの用途に分かれている

一番大きな「用材」は、需要側で見ると4つの用途に分かれます。製材用材(住宅構造材・造作材・梱包材)が約2,180万m³、合板用材が約750万m³、パルプ・チップ用材(紙・板紙・MDF等)が約2,780万m³、そして電柱や足場丸太などのその他用材が約230万m³。ここで意外なのが、量的に一番大きいのはパルプ・チップ用材で、用材全体のほぼ半分を占めること。住宅でおなじみの製材用材は3分の1強にとどまります。だから「木材」と一口に言っても、文脈によって指しているものがまるで違う。これが需給表を読むときの最初の落とし穴です。

さらに、同じ用材でも用途ごとに自給率がかなり違います。下の図のとおり、製材用材は国産56%、合板用材も国産52%とほぼ半々ですが、パルプ・チップ用材は輸入が83%を占めます。同じ「木材」でも、国産か輸入かの色分けが用途で大きく変わるのです。

用途別用材の自給率構造 製材用材・合板用材・パルプチップ用材・その他用材それぞれの国産材・輸入材構成と自給率を示す 用途別用材の国産・輸入構成(2023年・万m³) 製材用材 計2,179 国産1,227(56%) 輸入952 合板用材 計747 国産391(52%) 輸入357 パルプ・チップ用材 計2,780 国産478 輸入2,302(83%) その他用材 計231 国産(電柱・杭等) 輸入 製材用材・合板用材は国産と輸入がほぼ拮抗。 合板の輸入分は、輸入合板などを丸太に換算した量を含む。 パルプ・チップ用材は輸入が主体(海外の植林木由来のチップなど)。 公式の用材自給率38.6%は用材合計の値。用途別には大きな差がある。
図2:用途別用材の国産・輸入構成と自給率(2023年、出典:林野庁「令和5年木材需給表」より作成)

気をつけたいのが「合板用材の自給率」です。需給表ベースでは52%ですが、これは輸入合板(南洋材合板など)を丸太に換算して分母に含めているため。国内の合板工場が実際に使う原木に限れば、いまや9割以上が国産のカラマツ・スギ・ヒノキです。2000年代までは南洋材の丸太に頼っていたのが、2007〜2015年の合板工場の設備更新で針葉樹合板へ切り替わりました。「どの土俵の自給率か」で数字が変わる典型例です。

一方、パルプ・チップ用材は紙・板紙の原料が主で、ベトナムのアカシア・ユーカリ、チリや豪州のユーカリといった海外の植林木チップに頼る構造が続いています。製材用材は国産と輸入がほぼ拮抗、というのが2023年の姿です。

新顔の「燃料材」と、縮む「しいたけ原木」

燃料材は、2014年にいまの形になった比較的新しい区分です。それまでは「薪炭材」(木炭・薪)として細々と数えられていたものが、2012年のFIT制度(再エネ固定価格買取)を機に木質バイオマス発電が拡大し、2014年から発電施設などでエネルギー利用された燃料用チップも計上して、名前も「燃料材」に改めました。2014年の約290万m³が2023年には約2,050万m³へ。9年でおよそ7倍に膨らみ、いまや用材に次ぐ第2の区分です。国産の未利用材・一般材に、輸入のPKS(パーム殻)と木質ペレットが加わる構成で、2023年も燃料材は前年より17.9%増え、なかでも輸入の燃料材は28.5%増えました。

逆に静かに縮んでいるのが、しいたけ原木です。クヌギ・コナラなどの広葉樹を使う区分で、いまは約20万m³。1980年には約205万m³、1993年でも約126万m³あったのが、おがくずなどを使う菌床栽培の普及で、ここまで小さくなりました。原木で育てたしいたけは贈答用や乾しいたけの高級市場で根強い人気がありますが、需要そのものは構造的に縮小傾向です。それでも独立区分として残しているところに、この統計の几帳面さがうかがえます。

「自給率43%」は、どの自給率?

ニュースでよく聞く「木材自給率43.0%」は、燃料材やしいたけ原木まで含めた木材全体の自給率です。国産材の総供給量約3,440万m³を、総需要量約8,000万m³で割った値ですね。ところが用材だけに絞ると自給率は38.6%まで下がります。燃料材は国産材比率が高いので、燃料材を含む全体のほうが数字が高くなるのです。つまり「自給率」と一口に言っても、何を分母に入れるかで数字が変わる。議論の前提として、どの自給率の話をしているのかを確認するのが大事です。下の表に主な自給率を並べてみました。

自給率の種類 2023年 計算の分子÷分母
木材自給率(公式・全体) 43.0% 国産材総供給量÷総需要量
用材自給率 38.6% 国産用材÷用材総需要量
建築用材等(製材+合板) 55.3% 国産(製材+合板)÷同需要量
 うち製材用材 約56% 国産1,227÷需要2,179万m³
 うち合板用材 約52% 国産391÷需要747万m³
パルプ・チップ用材 17.2% 国産478÷需要2,780万m³
燃料材(参考) 55.3% 国産燃料材÷燃料材需要量

住宅構造材の話なら製材用材の約56%、紙の話ならパルプ・チップ用材の17%が適切な指標です。なお2025年11月公表の「令和6年木材需給表」では、国内生産も増えたものの輸入の伸びがそれを上回り、2024年の木材自給率は42.5%へ小幅に低下しました(同時に2023年分は42.9%へ再修正)。2026年6月に閣議決定された森林・林業基本計画は、2035年の国産材の利用量を4,200万m³(2024年実績3,500万m³)とする目標を掲げました。同じ計画の総需要量の見通し8,500万m³に対する割合でみると、約49%に相当します。林業政策や貿易の議論では、用途別と全体の自給率を併記するのが基本です。なお需給表のすべての数字は丸太換算(実体積m³)でそろえられていて、製材1m³=丸太約2m³、チップ1t=丸太約2.5m³といった換算率を使い、形態の違う木材を一つの物差しで比べられるようにしてあります。

長い目で見ると、3〜4割縮んできた

木材総需要量の長期推移1960-2023 日本の木材総需要量と国産材・輸入材の供給量の推移。1973年に1億2,102万m³でピーク、国産材は2002年の1,692万m³が底 木材総需要量と国産材・輸入材の推移(万m³) 0 4,000 8,000 12,000 1960 1973 1980 1995 2002 2010 2023 1973年ピーク 12,102 総需要量 8,004 輸入材 4,559 国産材 3,444 1973年をピークに総量は縮小。国産材は2002年の1,692万m³を底に 回復し、自給率は18.8%(2002年)から43.0%(2023年)へ上昇。
図3:木材総需要量と国産材・輸入材の推移1960-2023(出典:林野庁「令和5年木材需給表」参考1・供給量グラフ、1973年値は令和6年度森林・林業白書より作成)

長期トレンドを見ると、1973年の1億2,102万m³から2023年の約8,000万m³へ、総量は3割強縮みました。主因は住宅着工戸数の激減(1973年の約190万戸から2023年は約82万戸)ですが、電子化による紙パルプ需要の減少や、産業用木材のプラスチック・金属への置き換えも効いています。それでも近年は縮小ペースが緩んでいて、これは燃料材区分の急成長が下支えしているからです。グラフの緑の点線(国産材)が2002年の1,692万m³で底を打って反転しているのも見どころで、輸入材の縮小と国産材の回復が、自給率の改善につながってきました。

実務での使い方としては、自給率の進度をモニタリングする、用途別の需給バランスを見て製材所やパルプ工場の経営判断に役立てる、そしてバイオマス発電の影響を市場全体の文脈でとらえる、といったところです。ただし需給表には限界もあって、価格情報は含まれず(別に「木材価格統計」がある)、地域別や流通経路の詳細も載りません。だから実際の分析では、需給表を軸に貿易統計や価格統計など複数の資料を組み合わせて使うのが定石です。木材をめぐる議論の前提を共有する、最初の一歩としてこの表を開いてみる――それが上手な付き合い方だと思います。

関連記事

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次