「日本の木はあまり売れていない」と思われがちですが、実際の木材供給量は2024年で約8,500万m³と、決して小さくない規模です。ただ、ピークだった1996年の約1.1億m³からは2割超の縮小。その裏では、住宅が建たなくなり、紙が電子化され、代わりにバイオマス発電の燃料が3倍に増える——という大きな構造変化が起きていました。30年分の数字で、その移り変わりをたどってみます。
ピークは1996年、そこからの長い下り坂
木材供給量がいちばん多かったのは1996年の約1.1億m³。住宅着工が160万戸前後、紙・板紙生産が3,000万t超と、戦後最大の木材消費期でした。そこから1997年の消費税増税、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災、2020年のコロナ禍といった波をくぐり抜けるうちに需要の中身が変わり、2024年は8,500万m³の水準に落ち着いています。
用途で明暗:製材は4割減、合板は3倍
「2割減った」と一口に言っても、用途ごとの動きはまるで違います。住宅向けの製材用材が大きく落ち込む一方、合板用材と燃料材は逆に伸びました。表で並べると一目瞭然です。
| 用途 | 1990年(万m³) | 2024年(万m³) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 製材用材(住宅・建築) | 約4,500 | 約2,700 | 40%減 |
| 合板用材 | 約400 | 約1,200 | 3倍 |
| パルプ用材 | 約4,500 | 約3,200 | 30%減 |
| 用材合計 | 約9,500 | 約7,200 | 26%減 |
| 燃料材 | 約400〜500 | 約1,300 | 3倍 |
| 合計 | 約10,000 | 約8,500 | 22%減 |
製材用材が4割減ったのは、住宅着工戸数の半減(1990年170万戸→2024年70万戸前後)にそのまま連動しています。人口減・高齢化・空き家増・住宅ストックの飽和が重なった結果です。一方で合板用材が3倍に伸びたのは、構造用合板の用途拡大と、国産合板産業の急成長によるもの。国産合板の比率は2000年の20%から2020年には80%超へと跳ね上がり、住宅建材として国産合板が主役の座に就きました。パルプ用材が3割減ったのは、新聞・印刷紙のデジタル化が主因です(段ボールや衛生用紙は底堅く、減少を一部和らげています)。
燃料材3倍を生んだFIT制度
もう一つの大きな変化が、燃料材(木質バイオマス・薪・ペレットなど)の急増です。1990年代の400〜500万m³から、2024年には1,300万m³へとおよそ3倍。火付け役は2012年に始まった再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)で、木質バイオマス発電向け需要が一気に立ち上がりました。燃料に使われるのは主に間伐材・林地残材・端材といった未利用材で、森林資源の利用率を高め、地域経済にもプラスに働いています。ただし輸入木質ペレットの増加が国産燃料材を圧迫する面もあり、国産バイオマスの優先利用が課題として残ります。
自給率42.4%:底値18.2%からの復権
需要が縮むなかでも明るい話題が、国産材自給率の回復です。2002年の18.2%という底値から、2024年には42.4%へと2.3倍に拡大しました。
復権を支えたのは、戦後の拡大造林で植えられた人工林がいよいよ伐採適期を迎えた供給側の要因に、住宅メーカーの国産材活用、合板・LVLでの国産シフト、燃料材の国産優先利用が重なったこと。さらに2020〜2022年の第三次ウッドショックで輸入材価格が2倍以上に急騰したことが、国産材への乗り換えを後押ししました。林野庁は2030年代に自給率50%超を目標に掲げています。
輸入材は「多角化」の時代へ
とはいえ、まだ約4,900万m³を輸入に頼っています。かつては北米材(米マツ・SPF)が主流でしたが、いまは北米30%・欧州25%・東南アジア15%・その他30%という分散したポートフォリオに。決定打となったのが2022年のロシア材輸入停止で、合板・LVL用の供給源を欧州・北欧・北米へ大きく切り替える調整を迫られました。地政学リスク・為替リスク・物流リスクに備え、複数ルートを併用するのが今の主流であり、国産材の活用拡大もまた、この輸入リスクへの根本的な備えとして位置づけられています。
2030年代へ:量は縮み、質は変わる
これからの5〜10年も、構造変化は続きます。住宅着工はさらに減って製材用材の縮小傾向は止まらない一方、CLT(直交集成板)やLVLを使った中大規模木造建築・木造ビルが新しい需要を生み、木質バイオマス発電は安定期に入ります。自給率は50%超を目指し、輸入材は多角化が一段と進む——。総じて言えば、供給量は縮みながらも、その中身が高付加価値化・国産化・脱炭素化へと質的に転換していくのが2030年代の姿です。住宅というかつての主役が退いた分を、新しい木の使い道がどこまで埋められるか。日本の森と林業の持続性が、そこにかかっています。

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