林業就業者の高齢化|65歳以上比率24%の世代交代

林業就業者の高齢化 | Forest Eight

「林業は高齢化が深刻」とよく言われます。確かに2020年国勢調査で林業就業者の平均年齢は52.3歳、全産業平均より9歳近く上。65歳以上が約24%を占めます。でも数字を細かく見ていくと、「ただ高齢化が進んでいる」では片づけられない、もう少し入り組んだ事情が見えてきます。雇用で働く人は意外と若く、自営の人がぐっと高齢。そして団塊世代の大量退職という山が、2025〜2030年に迫っている——。この記事では、林業の担い手の年齢構成を数字で読み解きます。

就業者数 43,500 人(2020) 1980年比 30% ピーク 14.6万人 平均年齢 52.3 全産業 43.5歳 差 +8.8歳 65歳以上比率 24 % 全産業 14% 1.7倍 35歳未満比率 17 % 緑の雇用効果 +1,200人/年
図1:林業就業者の主要諸元(出典:総務省国勢調査2020、林野庁「林業労働力の動向」)
目次

40年で14.6万人から4.35万人へ

まず全体像から。林業就業者は1980年の14.6万人から2020年の4.35万人へ、40年でおよそ7割減りました。輸入材の急増(自給率は1980年の45%から2000年に18%まで低下)、住宅着工の縮小、機械化と合理化、退職者を補充しない流れ——いくつもの要因が重なった結果です。同じ時期に農業も550万人から136万人へと約75%減っており、一次産業全体が縮んでいく波のなかにありました。

就業者数 65歳以上 35歳未満 主な背景
1980 146,000人 10%前後 30%前後 木材自給率まだ45%
1990 108,000人 17% 14% 輸入材自由化進行
2000 67,200人 26% 10% 就業者減少のピーク期
2010 51,200人 21% 18% 緑の雇用で若年回復
2015 45,400人 22% 17% 団塊世代の退職開始
2020 43,500人 24% 17% 本稿の現状起点
2030予測 35,000人前後 30%超 16%前後 団塊世代の大量退職

表で目を引くのは、2000年に底を打った若年比率です。35歳未満が10%まで落ち込んだあと、2010年には18%へと持ち直しました。これは2003年に始まった「緑の雇用」事業の効果が大きい。この施策がなければ、若手はもっと細り、高齢化はさらに加速していたはずです。とはいえ就業者総数は今も年1〜2%のペースでじわじわ減り続けており、2030年には3.5万人前後になると見られています。

年齢の山は「55〜69歳」に二つ重なる

年齢を5歳刻みで並べると、林業の担い手は55〜69歳あたりに大きな山がある「山型」の分布をしています。

林業就業者の年齢階層別人数(2020、人) 2,200 15-24 5,200 25-34 5,800 35-44 6,800 45-54 8,200 55-64 7,800 65-69 5,000 70- 凡例: 64歳以下(76%) 65歳以上(24%) 最大ピーク:55-64歳 8,200人(19%) 2025-30年に大量退職へ
図2:林業就業者の年齢階層別構成(2020、推計含む)。出典:国勢調査・林野庁推計に基づく。

この分布のポイントは三つ。第一に、55〜64歳と65〜69歳の二つの山を合わせると全体の37%近くを占め、ここがこの先5年で段階的に引退していきます。第二に、15〜24歳が5%と全産業平均(約12%)より低く、入り口の細さは依然として課題。第三に、70歳以上が11.5%もいるのは林業らしい特徴で、自分の山を自分で手がける自営・小規模兼業が多いことを映しています。

「雇用」は若く、「自営」が高齢——二極化の構造

林業の高齢化を一括りにすると見誤ります。実は、どこで働いているかで年齢構成がまるで違うのです。

経営体 就業者数(推計) 平均年齢 65歳以上
森林組合(雇用) 約13,500人 49.1歳 13%
素材生産業(民間) 約11,800人 46.5歳 10%
森林整備事業体 約4,500人 50.3歳 15%
自営林業者・家族労働 約9,400人 62.8歳 52%

森林組合や素材生産業など「雇われて働く」林業は、緑の雇用や民間採用で若手が入り、平均年齢は46〜50歳と全産業並みに収まっています。一方、自営林業者は平均62.8歳、65歳以上が52%。林業全体の高齢化率を押し上げているのは、実はこの自営層なのです。つまり林業の高齢化は「雇用」と「自営」の二極化として理解するのが正確で、対策もこの二つで分けて考える必要があります。

若手を運んでくる「緑の雇用」

若返りに最も効いてきたのが、林野庁が2003年度から続ける「緑の雇用」事業です。未経験者を3年間のOJTと研修で育て、林業労働者として定着させる仕組みで、毎年1,000〜1,500人ほどの新規就業者を送り込んできました。累計受講者は2万3千人を超えます。3年定着率は約65%、5年でも約50%と、業界平均より高い水準を保っています。

入ってくる人の多くは、家業を継いだのではなく異業種からの転職組です。前職は建設業20%、製造業18%、サービス業15%が中心で、近年はIT・金融・公務からの転身も増えました。動機は、自然のなかで働きたい、コロナ禍で生き方を見直した、環境問題に関わりたい、移住支援が充実してきた——といったもの。一方で離職の理由は、労災の多さ、冬場や悪天候時の所得不安、地域生活への適応の難しさ、キャリアの見通しのつきにくさ。このあたりが、今も残る宿題です。

避けて通れない労災のこと

若手の定着を左右する大きな要素が、労働災害です。林業の労災千人率は20.8(2022)で、全産業平均2.4のおよそ8.6倍。業種別ではもっとも高い水準です。死傷件数は年に約1,300件、死亡災害も年30件前後で推移しています。

対策は多面的に進んでいます。チェーンソー作業の特別教育、防護衣・防護靴の補助、ハーベスタやプロセッサなど機械化の導入支援、危険予知活動の徹底——。注目したいのは、機械化が進んだ事業体ほど労災千人率が低い傾向がはっきり出ていること。機械化は省力化だけでなく、人が危険な場所に立つ機会を減らす安全対策でもあるわけです。実際、労災件数は2010年代後半から少しずつ減ってきています。

女性・外国人材という新しい流れ

女性就業者は約2,600人、全体の6%にとどまります。農業(45%)や漁業(13%)と比べてかなり低い。背景には男性中心の職場文化や現場環境の問題がありますが、緑の雇用の女性比率は8%まで上がり、女性専用更衣室の整備や軽量機械の普及、女性班長の登場などで参画は広がりつつあります。「林業女子会」のようなネットワークも各地で動いています。

外国人材は、技能実習をベースに一部受け入れが始まり、現状は500人前後と限定的です。ベトナム・インドネシア・フィリピン出身者が中心で、特定技能の林業分野への本格適用が議論されています。これが決まれば数千人規模まで広がる可能性があり、業界の労働力構成は大きく変わるかもしれません。

2030年、三つのシナリオ

団塊世代1万3千人の退職が迫るなか、2030年の姿は施策の組み合わせ次第で大きくぶれます。

シナリオ 2030年就業者数 65歳以上 35歳未満 前提
現状延長(基本) 約35,000人 30%超 16%前後 緑の雇用継続・機械化漸進
強化 約40,000人 25% 22% 新規1,800人/年・外国人2,000人
悲観 約28,000人 35%超 12% 緑の雇用縮小・機械化遅延

強化シナリオを目指すなら、緑の雇用の予算拡充、特定技能の本格運用、女性比率15%への引き上げ、機械化率の向上、移住支援との連携強化——といった施策をまとめて回す必要があります。あわせて、2019年施行の森林経営管理法も効いてきます。高齢の所有者が手放した森林を市町村が引き受け、森林組合などの雇用ベースの事業体に再委託する流れは、「高齢な自営層」が縮み「若い雇用層」が増える方向に働くからです。すでに市町村が経営権を取得した森林は累計15万haを超えました。

4万3千人という数字の一つひとつが、日本の山を守り、地方を支える働き手です。これからの10年で団塊世代の退職という山を越えられるかどうか。処遇の改善、若手・女性・外国人材の受け入れ、安全の確保を地道に積み上げられるかが、森林の未来を決めていきます。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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