走行集材機械の運転特別教育|フォワーダを動かす12時間

フォワーダを動かす12時間

山で伐った木を、林道端の土場まで運び出す。この工程を集材と呼びます。日本の緩傾斜地でいま主流なのが、作業道を切ってフォワーダを走らせるやり方です。そのフォワーダを運転するのに必要なのが、走行集材機械の運転の業務に係る特別教育。学科6時間+実技6時間の12時間で、緑の雇用ではフォレストワーカー2年目に置かれることが多い資格です。

目次

「走行集材機械」とは何か

安衛則第36条第6号の3の定義は、「車両の走行により集材を行うための機械であつて、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走できるもの」。ポイントは「車両の走行により」という一句です。

集材の方法は大きく二つに分かれます。ひとつはワイヤロープで巻き上げて運ぶ架線系。もうひとつが車両が木を積んで走る車両系。この特別教育は後者を対象にしています。前者は簡易架線集材装置等の特別教育機械集材装置の特別教育の管轄です。

「走行集材機械」に含まれる機械フォワーダ、スキッダ、集材車、集材用トラクタの4種類。車両の走行によって集材する機械。「走行集材機械」に含まれる機械フォワーダ木材グラップル装置と荷台を備え、自分で積んで自分で運ぶ日本の主力機スキッダ原木の一端を持ち上げ、引きずって運ぶブルドーザ等がベースマシン集材車原木等を荷台に積載して運ぶウインチやポールを備えたものを含む集材用トラクタウインチのワイヤロープで原木をけん引して運ぶブルドーザ等がベースマシン共通点は「車両の走行により集材する」こと。巻き上げて運ぶ架線系とは別区分になる出典: 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「規制対象となった木材伐出機械等」
図1:走行集材機械の対象。定義は安衛則第36条第6号の3(出典:厚生労働省)。

日本の現場でいちばん多いのはフォワーダでしょう。木材グラップル装置と荷台を持ち、自分で積んで自分で走る。作業道さえ入れば一人で完結するので、少人数の班と相性がいい。スキッダは原木の一端を持ち上げて引きずるタイプ、集材用トラクタはウインチで引き寄せるタイプで、いずれもブルドーザやトラクタショベルがベースマシンになります。

12時間の中身と、伐木等機械との違い

カリキュラムは安全衛生特別教育規程第8条の3で定められています。学科の科目立ては伐木等機械とほぼ同じですが、一か所だけ違いがあります。

走行集材機械 運転特別教育のカリキュラム学科6時間、実技6時間の合計12時間。安全衛生特別教育規程第8条の3に定められている。走行集材機械 運転特別教育のカリキュラム学科教育走行集材機械に関する知識1h装置の構造・取扱い1h作業に関する知識2h運転に必要な一般的事項1h関係法令1h実技教育走行の操作3h作業装置の操作3h(定められた方法による原木の運搬)合計12時間。走行3時間・作業3時間と、伐木等機械より走行の比重が高い出典: 安全衛生特別教育規程 第8条の3(昭和47年労働省告示第92号)
図2:走行集材機械の特別教育カリキュラム(出典:安全衛生特別教育規程第8条の3)。

学科の「運転に必要な一般的事項に関する知識」に、ワイヤロープの種類と取扱いの方法が入っている点です。スキッダも集材用トラクタもウインチを使いますし、フォワーダでも荷崩れ防止や引き上げにロープを使う。ロープが切れれば、そのまま人に当たります。

実技の配分にも差があります。伐木等機械が走行2時間・作業4時間なのに対し、走行集材機械は走行3時間・作業3時間。作業道という狭い場所を、重い荷を積んだまま走る――この機械の危険は、伐木等機械よりも「走ること」に寄っているのです。実際、改正安衛則では走行集材機械にだけ「車両の走行による集材作業での危険の防止」という項目が置かれ、走行時の荷台への乗車禁止や、積載時の荷崩れ防止措置が定められています。

作業計画がなければ動かせない

特別教育を修了しても、それだけで現場に出られるわけではありません。平成26年の改正で、車両系木材伐出機械を使う作業には次のことが義務づけられました。

義務 内容
地形・地質の調査 作業に着手する前に、あらかじめ調査し記録する
作業計画の作成 調査結果に適応した作業計画を定め、作業者に周知する
作業指揮者の選任 計画に基づき作業を指揮させる
制限速度の設定 地形・地質に応じた適正な制限速度を定める
運転位置から離れるとき 作業装置を地上に下ろし、原動機を止め、逸走を防止する
設備の具備 前照灯、堅固なヘッドガード、運転席の防護柵など

とくに作業計画は形骸化しやすいところです。作業道の縦断勾配、待避所の位置、積載量の上限、雨天時の判断基準。書いた計画を朝礼で共有するところまでが一連の義務で、書類が机の上にあるだけでは意味がありません。職長・安全衛生責任者教育を受けた人がここを回す形が理想です。

受講先・費用と、あわせて取る資格

実施機関は林災防の各都道府県支部、コベルコ教習所などの民間教習機関、都道府県の林業機械化推進センターなど。受講料は2〜4万円が目安です。すでに車両系建設機械運転技能講習などを持っていれば、一部科目が免除されて9〜11時間程度に短縮されるコースがあります。

実務では、この資格だけでは足りない場面がよくあります。

「フォワーダに乗る」という一つの仕事の周りに、これだけの資格が並びます。緑の雇用が2年目にこれらをまとめて配置しているのは、集材という工程を丸ごと担えるようにするという設計思想からです。

作業道の時代の資格

日本の林業は、この20年で架線集材から車両系集材へ大きく舵を切りました。路網を密に入れ、フォワーダで出す。生産性は上がりましたが、作業道の崩壊と機械の転落という新しいリスクも背負い込みました。走行集材機械の特別教育が2014年に新設されたのは、その裏返しでもあります。

12時間の講習で、山の中を安全に走れるようになるわけではありません。できるのは、何が危ないかを知ることだけです。そこから先は、作業道の路面を毎朝見る習慣と、積みすぎない判断が守ってくれます。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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