森林が吸収したCO2を「クレジット」として認証するJ-クレジット制度。その森林由来分の累積発行量は、制度が始まった2013年から2024年までで約400万t-CO2に達しました。J-クレジット全分野の累計(約800万t-CO2)のおよそ半分を占め、方法論別では最大のカテゴリーです。累計100万tに届いたのが2018年、200万tが2021年、300万tが2023年、400万tが2024年――年を追うごとにペースを上げてきました。この記事では、発行量がどう積み上がってきたのか、そのうちどれだけが企業に使われ、どれだけが市場に残っているのかを見ていきます。
右肩上がりに加速してきた累計
累積発行量は、制度創設当初の2013年度に約5万t-CO2から始まりました。年間の発行ペースは、2013〜2017年度が10〜30万t、2018〜2021年度が30〜50万t、2022〜2024年度が55〜70万tと、おおむね5年ごとに倍加してきた格好です。背景には、2018年の方法論追加、2019年の森林経営管理制度の創設、そして2020年のカーボンニュートラル宣言以降の企業需要の急増があります。
年間発行量の見通しも明るく、2022〜2024年度の55〜70万t/年から、第6次基本計画を反映する2025〜2027年度には75〜90万t/年への拡大が見込まれています。森林経営管理制度の市町村実施率向上で委託森林からのクレジットが生まれること、方法論の簡素化やモニタリングの省力化で参入障壁が下がること、そして価格上昇でプロジェクトの採算が改善すること――こうした要因が、拡大を後押しすると見られます。
発行量が多いのはどこか
都道府県別に累積発行量を見ると、上位は岡山・高知・宮崎・北海道・鳥取・島根・長野・新潟・大分・徳島の10道県で、これだけで全国累計の約65%を占めます。とくに岡山・高知・宮崎は県有林を中心とした大規模プロジェクト(1件あたり年1〜3万t規模)を継続的に実施しており、累計で全国上位に並びます。
分布を左右するのは、森林資源量・林業の活発さ・自治体の取組姿勢の3つです。岡山・高知は県をあげてクレジット創出を進める先駆的な事例として知られ、北海道は道有林・道造林公社の大規模プロジェクトが累計を押し上げています。素材生産日本一の宮崎は、企業需要との接続が進んでいるのが特徴です。
7割は使われ、3割が市場に残る
ここで重要なのが「無効化」という仕組みです。企業が購入したクレジットをカーボンオフセットに使った時点で無効化処理され、二度と再販できなくなります。森林由来でこの無効化が済んだ累計は約280万t-CO2、つまり発行量400万tの70%がすでに使われています。残る120万tが、市場で取引できる在庫(未使用残高)です。
無効化の用途は、企業のカーボンニュートラル達成が約45%と最も多く、続いてCN宅配・CN電力などの製品・サービスのオフセットが約20%、GXリーグ目標達成が約15%、温対法報告が約10%、CDP・SBTなど国際開示対応が約10%。森林由来は地域貢献や生物多様性といった追加便益への評価が高く、企業がオフセットに使う際の優先順位が高い傾向があります。
| 無効化用途 | 構成比 | 代表事例 |
|---|---|---|
| 企業CN達成 | 約45% | 大手製造業・金融・小売 |
| 製品サービスCN | 約20% | CN宅配・CN電力・CN保険 |
| GXリーグ目標 | 約15% | 参加企業700社 |
| 温対法報告 | 約10% | 特定事業者の報告対応 |
| 国際開示対応 | 約10% | CDP・SBT・TNFD |
在庫はタイト――需給は逼迫気味
流通ストック120万tを価格2,000円/t-CO2で換算すると、市場規模は約24億円。これは年間取引額(年60万t×2,000円=約12億円)の2年分にあたり、需給としてはかなりタイトな水準です。発行量が増えても企業需要が並行して伸びるため、ストックが急増する見通しは小さく、価格には上昇圧力がかかり続ける構造です。実際、大手企業による5〜10年単位の長期購入契約が増え、新規発行分の多くが認証直後に予約・無効化される流れが固定化しつつあります。
2030年に1,000万t――届くのか
第6次森林・林業基本計画(2026年策定予定)では、2030年に累計1,000万t-CO2という目標水準が論点になっています。2024年の400万tから6年で600万t積み上げるには、年間発行量を現在の60万tから100万tへ、約7割増やす必要があります。鍵を握るのは、森林経営管理制度の市町村実施率向上、市町村連携によるプロジェクトの大型化、方法論の簡素化、そしてドローン・LiDAR・衛星画像を使ったモニタリングのデジタル化です。
もし1,000万tに到達すれば、市場規模は価格2,000〜3,000円換算で200億〜300億円規模に拡大します。林業経営の側から見れば、年間100万t×2,000円を再造林面積10万haで割ると1ha当たり約2万円の追加収入にあたり、再造林の採算改善に一定の寄与となります。とはいえ、プロジェクト1件あたりの規模の小ささ、追加性証明の難しさ、5年ごと100〜200万円の第三者検証コストなど、乗り越えるべき壁も残されています。
国の森林吸収量とは別もの
最後に、よく混同される点を整理しておきます。J-クレジットの累計400万tと、国が算定する森林吸収量(2023年度実績で年約4,800万t-CO2)は別の概念です。後者はUNFCCC方法論に基づく国全体(森林面積2,500万ha)の吸収量で、前者は認証要件を満たす特定プロジェクト(累計5,000ha規模)の追加的吸収量を指します。J-クレジット認証量は国の森林吸収量から差し引かれるわけではなく、その一部を構成する関係にあります。第6次基本計画では、森林吸収量3,800万t-CO2目標の達成に向け、J-クレジットを含む民間資金の活用拡大が重要施策に位置づけられる見込みです。
よくある質問
累計発行量はどのくらいですか?
2024年時点で約400万t-CO2です。J-クレジット全分野の累計(約800万t)の約半分を占める最大カテゴリーで、年間発行量は約60万t規模。累計100万tは2018年、200万tは2021年、300万tは2023年に到達しました。
発行されたクレジットはどれくらい使われていますか?
累計400万tのうち約280万t(70%)がすでに無効化済み、つまり企業のオフセットに使われています。残る約120万tが市場で取引可能なストックです。用途は企業のCN達成が約45%で最多です。
2030年の目標に届きそうですか?
2030年累計1,000万tが目標水準として議論されています。年間発行量を60万tから100万tへ約7割増やす必要があり、森林経営管理制度の実施率向上、プロジェクトの大型化、方法論の簡素化、モニタリングのデジタル化が実現の条件になります。

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