森林由来J-クレジット|方法論・申請数の動向

森林由来のJ-クレジット

木を植え、間伐し、手入れを続ける——そうした森林の営みが吸い込んだCO2を、国が「クレジット」として認証し、企業に売れるようにしたのが森林由来のJ-クレジットです。林業の世界では「緑の収益化」とも言われ、木材を売るのとは別の収入源として、ここ数年で一気に注目が高まりました。森林系のプロジェクト数はカーボンニュートラル宣言以降に大きく増え、価格もほかのクレジットに比べて高めの水準にあります。この記事では、方法論の違い、吸収量の目安、申請の流れ、そして価格相場まで、森林J-クレジットの全体像を整理します。

プロジェクト数 増加中 森林系分野 CN宣言以降 に加速 認証量 まだ小さい 年間排出比 追加で吸った 分のみ対象 クレジット価格 数千円/t 規模 他のクレジット より高め 吸収量目安 数t t-CO₂/ha/年 若い林ほど大 林齢で変動
図1:森林J-クレジットの主なポイント(J-クレジット制度事務局・林野庁の情報より)
目次

方法論――どんな活動が認められるのか

森林J-クレジットの方法論は、活動の種類ごとに分かれています。柱になるのは次の2つです。

森林経営活動は、間伐・主伐後の再造林など、適切な森林経営を続けることで得られる吸収を評価するもの。既存の人工林を対象にできるため、いま最も申請が多い方法論です。植林活動は、新規植林や伐採跡地への再造林が対象で、樹木の成長量から吸収量を見積もるため計算が明快です。いずれも長期にわたり、年次モニタリングを続けながら複数回クレジットを発行できます。

どれくらい吸収するのか――林齢がカギ

森林のCO2吸収量は、林齢・樹種・林分密度・地位(土壌の生産性)で大きく変わります。とくに効くのが林齢で、若い林ほど旺盛に成長して吸収量が大きく、成熟林ではほぼ平衡状態に近づきます。おおまかな傾向は次のとおりです。

樹種 成長期(若齢〜壮齢) 高齢期
スギ・カラマツ人工林 年 数t-CO₂/ha(多め) 年 数t-CO₂/ha以下に低下
ヒノキ人工林 年 数t-CO₂/ha さらに低下
広葉樹天然林 年 数t-CO₂/ha(少なめ) ほぼ平衡

実際のプロジェクトでは、現地の森林簿・施業履歴・成長量データから個別に算定します。若齢林の植林や適切な間伐促進が、認証量を増やすうえで有効、という構図が見てとれます。

申請から発行まで、おおむね1〜2年

申請は、(1)プロジェクト計画の作成、(2)登録申請、(3)登録決定、(4)モニタリング・施業、(5)認証申請、(6)第三者検証、(7)クレジット認証・発行——という段階を踏みます。初回認証まではおおむね1〜2年。登録後は年次モニタリングを通じて20年の認証期間中に追加発行を重ねられます。複数事業者をまとめる「グループ申請」も用意されていて、単独では難しい中小所有者の参加負担を軽くしています。費用は登録費・第三者検証費・モニタリング費を合わせて数十万〜数百万円規模で、都道府県や自治体の支援制度を活用するとコストを抑えられます。

なぜ森林系は高く売れるのか

森林由来クレジットの価格は1t当たり数千円規模で、省エネ系・再エネ系より高単価で取引される傾向があります。その理由は、(1)地域とのつながりや物語性が強い、(2)生物多様性・水源涵養といった副次的価値がある、(3)SDGs・ESG投資との相性がよい、(4)長期的な森林管理の改善に寄与する、といった付加価値が市場で評価されるためです。とくに自分の地元のプロジェクトを選べば、その地域貢献のストーリーを企業のサステナビリティ報告にそのまま活かせる点が好まれています。

参加者の広がりと市場の伸び

参加者は森林組合・自治体・林業経営体に加え、大手企業の山林事業まで多彩です。背景には、カーボンニュートラル宣言企業の急増、有価証券報告書での温室効果ガス開示、TCFD・SBT・CDPといった国際指標への対応、ESG投資の拡大があります。プロジェクト数は2020年以降の伸びが顕著で、新規登録が続いています。

森林J-クレジット プロジェクト数の累計推移(イメージ) 2014 2020 近年 カーボンニュートラル宣言の急増で加速
図2:森林J-クレジット プロジェクト数の推移イメージ(2014年以降)

後押しした出来事を並べると、2020年の2050年カーボンニュートラル宣言、有価証券報告書の温室効果ガス開示義務化、そして2023年10月の東証「カーボン・クレジット市場」開設です。とくに東証市場は、小ロット取引の容易化、価格情報の公開、流動性の向上といった効果をもたらし、森林由来クレジットの価格形成に重要な指標役を果たしています。

森林経営管理法との相性

2019年施行の森林経営管理法とは制度的な相性のよさがあります。所有者不在や経営困難な森林を市町村が引き受け、意欲ある林業経営体へ再委託する——この仕組みで生まれる計画的な経営活動が、そのままJ-クレジット申請の基盤になります。認証取得後のクレジット販売収入を森林管理コストに充てる、という長期収益化の流れが各地で広がりつつあります。森林環境譲与税の活用とも連動し、市町村レベルの取り組みが拡大しています。

よくある質問

Q. 誰が参加できますか?

森林所有者・森林組合・自治体・林業経営体・NPOなどが参加できます。ある程度まとまった面積で申請するのが効率的ですが、グループ申請を使えば小規模所有者でも参加可能です。

Q. 個人でも購入できますか?

できます。各販売プラットフォームから1t単位で購入でき、暮らしのカーボンオフセットや寄付的な意味合いで活用されています。

Q. 今後の見通しは?

カーボンニュートラル目標の進展とESG投資の拡大で、需要・価格ともに成長が見込まれます。ただし追加性や永続性の証明、モニタリングのコストが普及の壁になっており、伸び方には不確実性もあります。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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