国際木材協定|ITTO・国連森林フォーラム

国際木材協定 | Forest Eight

「国際熱帯木材機関」と聞いてもピンと来ないかもしれませんが、実はこの機関の本部は横浜市にあります。熱帯木材の貿易と熱帯林の持続可能な経営をテーマにした、世界で唯一の国際機関。設立は1986年で、日本は最大の資金拠出国として活動を支え続けてきました。ここでは、ITTOがどんな組織で、何をしていて、日本がどう関わっているのかを、できるだけ等身大に整理してみます。

設立 1986 本部:横浜 事務局約60名 加盟国 74 カ国 生産国36 消費国38 日本支援額 3〜5 億円/年 最大拠出国 活動費の半分 熱帯林面積 17 億ha(世界) 年1,000万ha減少 FAO推計
図1:ITTOの主要諸元(出典:ITTO Annual Review、林野庁、FAO Forest Resources Assessment)
目次

横浜に本部がある理由

ITTO(International Tropical Timber Organization)の出発点は、1980年代の熱帯林破壊への危機感でした。当時、ブラジルやインドネシア、コンゴといった国々では年間1,500〜2,000万haもの森林が失われ、生物多様性の喪失や現地住民の生活基盤の崩壊が深刻化していました。これを受けて1983年に国際熱帯木材協定(ITTA)が採択され、それを母体に1986年、横浜でITTOが発足します。

横浜が選ばれた最大の理由は、日本が設立当初から最大の資金拠出国だったこと。年間3〜5億円規模の拠出で、ITTOの活動費(年7〜10億円ほど)のおよそ半分を日本が負担しています。事務所や施設の提供、林野庁職員の派遣、森林総合研究所との協力なども含め、本部所在地としての存在感は今も大きいままです。事務局は約30カ国出身、約60名の国際職員で運営されています。

ITTOがやっていること

ITTOの目的はシンプルに言えば3つ。熱帯木材の貿易を安定させること、持続可能な森林経営を広げること、そして生産国の森林政策や産業を支えることです。意思決定は加盟国代表による理事会(年2回)が担い、その下に経済・市場、再造林・森林経営、森林産業、財政・運営という4つの委員会がぶら下がっています。

1983年の協定はその後2回改定され、特に2006年改定が転機でした。それまで「貿易促進」が中心だった目的に「持続可能な熱帯林経営の促進」がはっきり書き込まれ、5,000万ドル規模の新基金も設けられました。違法伐採対策、再造林、先住民・地域住民の権利、REDD+などの気候変動メカニズムとの連携まで、扱う範囲はぐっと広がっています。この改定協定は2011年に発効し、いまのITTOの活動の土台になっています。

UNFFやFAOとの役割分担

森林をめぐる国際機関はITTOだけではありません。よく混同されるのが国連森林フォーラム(UNFF)です。違いはざっくり、ITTOが「熱帯林に特化した実務部隊」、UNFFが「世界中の森林を扱う政策の場」というところ。ITTOは生産国に技術協力や支援プロジェクトを届け、UNFFは政策方針や資金調達の枠組みを議論します。ITTOはUNFFのオブザーバーとして、熱帯林分野の知見を提供する立場です。

このほか、森林資源を5年ごとに評価するFAO、生物多様性条約(CBD)、REDD+を扱う気候変動枠組条約(UNFCCC)、絶滅危惧樹種の貿易を規制するCITESなどが、それぞれ役割を分けながら重なり合い、地球規模の森林ガバナンスを形づくっています。日本はそのすべてに加盟しており、横浜のITTO本部運営も含めて主要な貢献国の一つです。

違法伐採とクリーンウッド法

熱帯林の年間損失のうち30〜40%は違法伐採が占めるとされ、世界全体での経済損失は年間100〜300億ドル規模(世界銀行推計)。ITTOの大きな仕事の一つが、この違法伐採対策です。生産国側では合法性確認システムやトレーサビリティの整備を、消費国側では市場規制を支援し、両面から包囲していく考え方です。

日本では2017年5月にクリーンウッド法(合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律)が施行されました。製材所や商社、住宅メーカーなど木材を扱う事業者に、合法性の確認と記録保存の努力義務を課す制度で、2024年時点で全国約3,500事業者が登録しています。欧州のEU木材規制(2013年)、米国のレイシー法、オーストラリアの違法伐採禁止法(2012年)といった同種の規制と足並みをそろえることで、違法木材が国際市場に入り込む隙間は少しずつ狭まってきています。

世界の熱帯林はいま

FAOの森林資源評価(FRA)によると、2020年時点で世界の熱帯林は約17億ha。世界の全森林40.6億haの4割強にあたります。年間の減少は約1,000万haで、1990年代の約1,500万haからは改善傾向にあるものの、依然として小さくない数字です。地域ごとの内訳を見ると、減少の中心は南米と中央アフリカに偏っていることがわかります。

地域 熱帯林面積 年間減少 主な要因
南米(アマゾン中心) 約8億ha 約400万ha 大豆・牛肉農業、違法伐採
アフリカ(コンゴ盆地中心) 約4億ha 約300万ha 小規模農業、違法伐採
東南アジア 約2.5億ha 約200万ha パーム油農園、違法伐採
中米・カリブ 約1.5億ha 約50万ha 農業拡大、観光開発
オセアニア 約1億ha 約50万ha 商業伐採、農業拡大
合計 約17億ha 約1,000万ha

減少の引き金は、大豆・パーム油・牛肉といった商品作物や畜産のための農地拡大、違法伐採、焼畑、鉱業やインフラ開発などさまざまです。ITTOはこれに対して、森林経営計画の改善、合法木材貿易の促進、再造林、地域住民との協働経営など複数のアプローチを組み合わせています。設立以来の支援プロジェクトは累計1,000件超、累計支援額は約500億円規模。インドネシア・スマトラ島の劣化森林再造林、コンゴ盆地の森林経営計画策定支援、アマゾンの衛星監視による違法伐採対策などが、その代表例です。

2030年に向けて

2030〜の世界森林戦略計画(UN Strategic Plan for Forests 2017-2030)では、世界森林面積3%増という目標が掲げられています。ITTOにとっての宿題は、熱帯林の減少抑制、持続可能な経営面積の拡大、違法伐採の削減、気候変動対応、地域住民との協働といったあたり。いずれも一機関だけで片付く話ではなく、UNFFやFAO、各国の国内政策との連携が前提になります。

日本は年間約3,000万m³もの熱帯木材を輸入する主要消費国です。だからこそ、輸入材の合法性や持続可能性を確かめる責任があり、ITTOへの拠出や横浜本部の運営支援、クリーンウッド法に基づく市場づくりを通じて、これからも国際社会の中で一定の役割を担い続けることになりそうです。横浜に世界唯一の熱帯林機関の本部がある、という事実は、その姿勢の象徴とも言えるでしょう。

よくある質問

なぜITTO本部が横浜にあるのですか?

1986年の設立当初から日本が最大の資金拠出国だったことが大きな理由です。日本政府が事務所や施設を提供し、運営費の半分以上を負担、林野庁職員も派遣しており、日本の長期的なコミットメントの象徴として国際的に認知されています。

ITTOとUNFF(国連森林フォーラム)はどう違いますか?

ITTOは熱帯林・熱帯木材に特化した実務機関で、加盟74カ国に技術協力や支援プロジェクトを行います。UNFFは2000年設立で、熱帯林・温帯林・北方林を含む世界全森林の政策フォーラム。ITTOはUNFFのオブザーバーとして熱帯林分野の知見を提供しています。

クリーンウッド法はITTOと関係がありますか?

あります。2017年施行のクリーンウッド法は、ITTOが進める違法伐採対策・合法木材貿易促進の流れと連動した日本の国内法です。EU・米国・オーストラリアの同種規制とも足並みがそろい、違法木材の市場排除に寄与しています。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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