世界の人工林——つまり人の手で植えて育てられた森は、2020年時点で約2億9,300万haあります。世界の森林全体40億6,000万haのうち、わずか7.2%です。残り9割超は天然林。ところが世界の森林全体が減り続けているのに対し、人工林だけは増えています。1990年の1億7,800万haから30年で約1.65倍。森林の劣化が進む中で、計画的に植え・管理する人工林の存在感はじわじわ増しているのです。
そのなかで日本はどうか。日本の人工林は約1,020万haで、なんと世界第5位。世界の人工林の3.5%を占める立派な「人工林大国」です。ただし日本の森林全体を世界の森林に対する比率で見ると、たった0.06%。この記事ではFAOのGlobal Forest Resources Assessment(FRA)2020を軸に、世界の人工林の分布と日本の独特な位置を数字で整理します。
そもそも「人工林」とは何か
世界の森林データを語るときの一次資料が、FAO(国連食糧農業機関)が5年ごとに公表するFRAです。最新のFRA 2020には236の国・地域が参加し、1990年から2020年までの30年間の変化が共通の定義で記録されています。FAOの定義では「森林」は面積0.5ha以上・樹高5m以上・樹冠率10%以上の土地。そのうち植栽や播種で造られたものが「人工林」です。
世界森林40億600万haの内訳は、原生林が約11億ha、自然再生林が約26億ha、そして人工林が約2億9,300万ha。つまり人工林は全体の7.2%にすぎません。それでも注目すべきは増減のトレンドです。世界森林全体はこの30年で約1億7,700万ha(年470万ha)も減り続けているのに対し、人工林は同じ期間に約1.16億ha増えました。減る天然林、増える人工林——この正反対の動きが、いまの世界の森の姿です。
人工林は一部の国に偏っている
世界の人工林2億9,300万haの分布は、かなり偏っています。上位5カ国(中国・米国・ロシア・カナダ・日本)だけで約1億5,910万ha、世界の54.3%。上位10カ国まで広げると68.3%に達します。計画的な植林を国家戦略にしてきた国と、天然林に頼る国とで、くっきり分かれているのです。
| 順位 | 国 | 人工林面積 | 世界比 | 主要樹種 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 中国 | 約8,700万ha | 29.7% | マツ・ユーカリ・ポプラ |
| 2 | 米国 | 約2,650万ha | 9.0% | テーダマツ・スラッシュマツ |
| 3 | ロシア | 約2,000万ha | 6.8% | マツ類・トウヒ類 |
| 4 | カナダ | 約1,540万ha | 5.3% | トウヒ類・マツ類 |
| 5 | 日本 | 約1,020万ha | 3.5% | スギ・ヒノキ・カラマツ |
| 6 | インド | 約1,300万ha | 4.4% | ユーカリ・チーク・アカシア |
| 7 | スウェーデン | 約1,000万ha | 3.4% | アカマツ・トウヒ |
| 8 | ブラジル | 約970万ha | 3.3% | ユーカリ・パイン |
同じ「人工林大国」でも、その中身は国ごとにまるで違います。中国は砂漠化を防ぐ三北防護林計画や、急傾斜の農地を森に戻す退耕還林工程といった国家規模の生態回復植林が中心。米国・ロシア・カナダは商業林業が中心です。そして日本は、戦後の拡大造林で一斉に植えられたスギ・ヒノキの管理——つまり「過去の遺産の手入れ」という、また別の位置づけになります。
世界の主役は「マツ」と「ユーカリ」
世界の人工林の樹種は、いくつかのグループに集中しています。最も多いのがマツ類で約8,000万ha(27%)。次いでユーカリ類が約2,000万ha、アカシア類が約1,500万ha、ポプラ類が約1,500万ha、と続きます。
| 樹種グループ | 面積 | 主産地 | 主用途 |
|---|---|---|---|
| マツ類(Pinus) | 約8,000万ha | 米国南部・北欧・中国 | 建築材・紙パルプ |
| ユーカリ類 | 約2,000万ha | ブラジル・中国・インド | 紙パルプ・木質燃料 |
| アカシア類 | 約1,500万ha | インドネシア・ベトナム | 紙パルプ |
| ポプラ類 | 約1,500万ha | 中国・トルコ・インド | 合板・紙パルプ |
| トウヒ類 | 約2,000万ha | 北欧・カナダ・ロシア | 建築材・紙 |
| スギ・ヒノキ等 | 約700万ha | 日本 | 建築材・内装材 |
マツ類が圧倒的なのは、亜寒帯から亜熱帯まで幅広い気候に適応でき、建築材にも紙パルプにも使え、育つのが早いから。米国南部のテーダマツ(約1,500万ha)と、中国・北欧のヨーロッパアカマツが世界マツ林の双璧です。ここで注目したいのが、日本のスギ・ヒノキ。これらは日本固有種で、世界の樹種分類では「その他」に入ってしまうほど稀な存在です。世界の人工林がマツやユーカリ一色のなかで、日本だけが独自の樹種で森を作ってきたわけです。
成長の速さも対照的です。ブラジルのユーカリは1haあたり年40〜50m³も成長し、わずか7〜8年で収穫できます。米国南部のマツは25〜30年。これに対して日本のスギは年10〜12m³、ヒノキは6〜8m³で、収穫まで40〜50年かかります。スピードでは熱帯のユーカリにかないませんが、温帯で安定して育ち、長い時間をかけて木材ストックを蓄えていくのが日本型なのです。
日本は「小さな国土で最大の人工林比率」
日本の人工林1,020万haの内訳は、スギ444万ha(44%)、ヒノキ260万ha(25%)、カラマツ100万ha(10%)など。戦後の拡大造林期(1950〜1970年)に集中的に植えられたもので、その多くがいま伐期を迎えつつあります。
日本の数字を世界平均と並べると、その独特さがよくわかります。
| 項目 | 日本 | 世界平均 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 森林面積 | 2,500万ha | 40億ha | 世界の0.06% |
| 人工林面積 | 1,020万ha | 2.93億ha | 世界の3.5% |
| 人工林比率 | 約41% | 約7.2% | 世界平均の5.7倍 |
| 森林被覆率(対国土) | 66% | 31% | 世界平均の2倍 |
| 主要樹種 | スギ・ヒノキ | マツ・ユーカリ | 独自構成 |
| 収穫サイクル | 40-50年 | 25-30年 | 長期育成 |
森林面積では世界の0.06%にすぎない日本が、人工林では世界の3.5%を占める。人工林比率(森林に占める人工林の割合)は約41%で、世界平均7.2%の実に5.7倍です。これが日本が「人工林大国」と呼ばれる理由。戦後の国家総力戦的な拡大造林の遺産が、いまの日本の森を形づくっています。
さらに面積でなく「中身の詰まり具合」で見ると、日本の存在感はもっと際立ちます。FAOによれば世界の人工林の平均蓄積量は1haあたり約120m³ですが、日本の人工林は約340m³と、世界平均の約2.8倍。高樹齢化が進み、スギ・ヒノキの蓄積性が高く、長期育成の伝統があるためです。総蓄積量で見ると、日本の人工林は世界の人工林全体の蓄積の約10%を占める計算になります。つまり日本は「世界の0.06%の森林面積で、世界の10%の人工林蓄積」を持つ国。この蓄えた資源をどう活かすかが、これからの日本林業の最大の課題であり、チャンスでもあります。
もっとも、課題も小さくありません。木材自給率は約42%と世界平均より低く、林業就業者は約4.4万人で減少傾向。せっかく伐期を迎えた人工林も、収穫はなかなか進んでいません。そして年齢構造の偏りも深刻で、植えられてから41〜50年たった木が全体の約7割を占めます。若い森が足りず、伐ったあとの植え直しも遅れがち。この戦後一斉植林のツケを、長伐期化による炭素貯蔵や混交林化による生物多様性向上、スマート林業の導入などで解きほぐしていけるかが問われています。

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