世界の人工林面積|日本の3%が世界森林の0.06%

世界の人工林面積 | 森と所有 - Forest Eight

世界の人工林面積は2020年時点で約2億9,300万haに達し、世界森林面積40億6,000万haの約7.2%を占めます。1990年の1億7,800万haから30年で約1.65倍に拡大し、世界森林の劣化が進む中で、計画的に植林・管理される人工林の役割は増す一方です。日本の人工林は約1,020万haで世界第5位、世界人工林の3.5%を占める「人工林大国」ですが、世界森林全体に対する比率は0.06%にとどまります。本稿ではFAO Global Forest Resources Assessment(FRA)2020を一次資料として、世界の人工林分布、樹種構成、年間成長量、上位国の戦略、日本の位置を、数値ファーストで構造的に整理します。

この記事の要点

  • 世界の人工林:約2億9,300万ha(2020年)、世界森林の約7.2%。1990年比1.65倍。
  • 上位5か国:中国8,700万・米国2,650万・ロシア2,000万・カナダ1,540万・日本1,020万ha
  • 年間拡大量:約400万ha/年(2010-2020平均)、世界森林全体は年470万ha減少と対照的。
  • 主力樹種:マツ類8,000万・ユーカリ2,000万・アカシア1,500万・チーク等3,000万ha
  • 日本人工林1,020万haは世界5位、世界森林比0.26%、日本森林全体は世界の0.06%。
  • 出典:FAO Global Forest Resources Assessment 2020(5年毎更新、236か国地域参加)。
世界人工林 2.93 億ha (2020) 世界森林の7.2% FAO FRA 2020 中国(1位) 8,700 万ha 世界の29.7% 三北防護林等 日本(5位) 1,020 万ha 世界人工林の3.5% スギ・ヒノキ中核 年間拡大 +400 万ha/年 2010-2020平均 天然林は減少
図1:世界・日本の人工林主要諸元(出典:FAO Global Forest Resources Assessment 2020)
目次

FAO FRA 2020:世界森林データの基準

世界の森林・人工林面積を語るうえでの一次資料はFAO(国連食糧農業機関)が5年毎に公表するGlobal Forest Resources Assessment(FRA)です。最新版はFRA 2020で、236か国・地域が参加し、1990年から2020年までの30年間の世界森林の変化が一貫した定義の下で記録されています。FAOの定義では「森林(Forest)」は面積0.5ha以上、樹高5m以上、樹冠率10%以上の土地で、農地・都市的土地利用は含みません。「人工林(Planted forest)」はそのうち植栽・播種により造成された森林で、さらに「プランテーション森林(Plantation forest)」と「その他人工林(Other planted forest)」に区分されます。

区分 定義 面積(2020年)
世界森林 面積0.5ha・樹高5m・樹冠率10%以上 約40億600万ha
原生林 人為影響が見えない自然林 約11億1,300万ha
その他天然再生林 自然再生による森林 約26億1,400万ha
人工林(合計) 植栽・播種で造成 約2億9,300万ha
うちプランテーション林 商業生産目的の集約林 約1億3,100万ha
うちその他人工林 多目的利用の人工林 約1億6,200万ha

世界森林面積40億600万haは陸地(149億ha)の約27.2%を占めます。このうち植栽起源の人工林は7.2%(2億9,300万ha)にすぎず、残り92.8%は天然林です。しかし、世界森林全体は1990年から2020年の30年間で約1億7,700万ha(年470万ha)減少し続けているのに対し、人工林は同期間で1.16億ha増加しているという正反対のトレンドが、世界森林の現状です。

世界の人工林2億9,300万haの国別分布

世界人工林2億9,300万haの分布は極めて偏っており、上位5か国(中国・米国・ロシア・カナダ・日本)で約1億5,910万ha、世界の54.3%を占めます。さらに上位10か国まで広げると約2億ha、68.3%に達します。これは、計画的な植林を国家戦略として推進してきた国々と、天然林に依存する国々との明確な分断を示すものです。

順位 人工林面積 世界比 主要樹種
1 中国 約8,700万ha 29.7% マツ・ユーカリ・ポプラ
2 米国 約2,650万ha 9.0% テーダマツ・スラッシュマツ
3 ロシア 約2,000万ha 6.8% マツ類・トウヒ類
4 カナダ 約1,540万ha 5.3% トウヒ類・マツ類
5 日本 約1,020万ha 3.5% スギ・ヒノキ・カラマツ
6 スウェーデン 約1,000万ha 3.4% ヨーロッパアカマツ・トウヒ
7 インド 約1,300万ha 4.4% ユーカリ・チーク・アカシア
8 フィンランド 約670万ha 2.3% ヨーロッパアカマツ・トウヒ
9 ブラジル 約970万ha 3.3% ユーカリ・パインus elliottii
10 インドネシア 約390万ha 1.3% アカシア・ユーカリ・チーク

注目すべきは、上位5か国の戦略の違いです。中国は国家規模の生態回復植林(三北防護林計画、退耕還林工程など)が中心、米国・ロシア・カナダは商業林業中心、日本は戦後拡大造林の遺産としての人工林管理、というそれぞれ異なる位置づけです。

図2:人工林面積トップ10(万ha、2020年) 中国8,700 米国2,650 ロシア2,000 インド1,300 カナダ1,540 日本1,020 スウェーデン1,000 ブラジル970 フィンランド670 インドネシア390 中国一国で世界人工林の約30%。日本は世界第5位の人工林大国だが、世界森林全体では0.06%にすぎない。
図2:世界の人工林面積トップ10(出典:FAO FRA 2020、Country Reports)

中国8,700万haの圧倒的存在感:三北防護林計画

中国の人工林8,700万haは世界人工林の29.7%を占め、第2位米国の3.3倍に達する圧倒的な規模です。1990年の4,150万haから2020年の8,700万haまで30年間で約2倍に増加し、年間平均約150万haという尋常ではないペースで人工林が拡大してきました。これを支えたのは、(1)三北防護林計画(1978-2050、4億ha対象)、(2)退耕還林工程(1999-2020、累計2,930万ha実施)、(3)天然林保護工程(1998-、商業伐採禁止と植林)、(4)長江・珠江流域防護林計画、などの国家規模の植林プログラム群です。

主要植林計画 期間 規模 主目的
三北防護林計画 1978-2050 対象4億ha 北部砂漠化防止
退耕還林工程 1999-2020 累計2,930万ha 急傾斜農地の森林化
天然林保護工程 1998-現在 商業伐採禁止 天然林保全と植林
長江流域防護林 1989-現在 長江流域全域 水土保全・洪水防止
京津風砂源治理 2001-現在 北京周辺 砂塵嵐対策
新一輪退耕還林 2014- 667万ha追加 第2期退耕還林

これらの政策の累積効果として、中国の森林被覆率は1990年の17%から2020年の23%超まで上昇し、世界森林増加量の3割以上を中国一国が貢献しています。一方、急速に造成された人工林の品質(樹種多様性、土壌保全、生物多様性)には課題も指摘されており、近年は単一樹種の大規模植林から混交林・郷土樹種重視への転換が進んでいます。

米国2,650万ha:南部マツ類の商業林業

米国の人工林2,650万haは商業林業中心で、特に南部マツ類プランテーション(Southern Pine Plantation)がその中核を占めます。テーダマツ(Loblolly Pine, Pinus taeda)、スラッシュマツ(Slash Pine, Pinus elliottii)、ロングリーフパイン(Pinus palustris)などのマツ類を、ジョージア・アラバマ・ルイジアナ・ミシシッピ・テキサス東部などの南部諸州で大規模に植林・収穫しています。

米国南部のマツ類プランテーションの特徴は、(1)収穫サイクル25-30年と短い(日本のスギは40-50年)、(2)植林密度1,000-1,500本/ha、(3)間伐2-3回・主伐1回のシンプルな施業、(4)紙パルプ・建築材・OSB(配向性ストランドボード)への利用、(5)民間製紙企業(International Paper、Weyerhaeuser、Georgia-Pacificなど)が大規模に所有・経営、です。米国南部は世界の紙パルプ生産の重要基地であり、毎年約200万haの植林・伐採が循環しています。

主要樹種 植林面積 用途 収穫サイクル
テーダマツ 約1,500万ha 建築材・紙パルプ 25-30年
スラッシュマツ 約500万ha 建築材・紙パルプ 25-30年
ロングリーフパイン 約170万ha 高品質建築材 50-60年
ダグラスファー 約200万ha 建築材(北西部) 40-50年
ヒノキ・スギ類 約100万ha 耐久性建材 40-60年
その他広葉樹等 約180万ha 家具・床材 50-80年

ロシア・カナダ・北欧:寒帯林帯の人工林

ロシア(2,000万ha)、カナダ(1,540万ha)、スウェーデン(1,000万ha)、フィンランド(670万ha)の北方寒帯林国家は、合計5,210万haの人工林を持ちます。これらの国々の人工林は、(1)天然林伐採後の更新植林、(2)皆伐地の再造林、(3)主に針葉樹(ヨーロッパアカマツ、ヨーロッパトウヒ、シベリアカラマツ、バンクスマツ、ブラックスプルース)が植林、(4)施業期間40-100年と長い、という特徴があります。

北欧モデルの林業は「天然林に近い施業(continuous cover forestry)」「皆伐後の植林」を組み合わせるハイブリッドモデルが一般的で、純粋なプランテーション型ではない側面もあります。FAOの分類では「人工林」に該当しても、実態は天然更新と植栽更新の混合的な森林も多く、これが北欧林業の持続可能性を支える基盤となっています。

ブラジル・インドネシア:熱帯ユーカリ・アカシアの急拡大

ブラジル(970万ha)とインドネシア(390万ha)は、世界の熱帯人工林の中核です。ブラジルはユーカリ(Eucalyptus grandis、E. urophylla等)が中心で、紙パルプ用が大半(約700万ha)。サンパウロ・ミナスジェライス・バイア州が主産地で、収穫サイクル7-8年と極めて短いのが特徴です。年間成長量は世界最高水準のha当たり40-50m³に達し、紙パルプ生産での競争力の源泉となっています。

インドネシアはアカシアマンギウム(Acacia mangium)が中心で、紙パルプ用大規模植林(HTI、Hutan Tanaman Industri)が約280万ha。スマトラ・カリマンタンの泥炭湿地での植林が多く、CO2排出(泥炭分解)の問題から、近年は持続可能性の議論が活発化しています。

世界の主要プランテーション樹種:4大グループの構成

世界の人工林2億9,300万haの樹種構成は、4大グループに集中しています。(1)マツ類(Pinus属)約8,000万ha(27%)、(2)ユーカリ類(Eucalyptus属)約2,000万ha(7%)、(3)アカシア類(Acacia属)約1,500万ha(5%)、(4)チーク(Tectona grandis)・トウヒ類(Picea属)・カラマツ類(Larix属)合計約3,000万ha(10%)、その他樹種約1.5億ha(51%)です。日本のスギ(444万ha)・ヒノキ(260万ha)・カラマツ(100万ha)は独自樹種として「その他」に分類され、世界では極めて稀有な人工林構成となっています。

樹種グループ 面積 主産地 主用途
マツ類(Pinus) 約8,000万ha 米国南部・北欧・中国 建築材・紙パルプ
ユーカリ類 約2,000万ha ブラジル・中国・印度 紙パルプ・木質燃料
アカシア類 約1,500万ha インドネシア・ベトナム 紙パルプ
チーク 約700万ha インド・ミャンマー・タイ 高級家具・船舶
トウヒ類 約2,000万ha 北欧・カナダ・ロシア 建築材・紙
カラマツ類 約400万ha ロシア・北欧・日本 建築・土木材
ポプラ類 約1,500万ha 中国・トルコ・印度 合板・紙パルプ
スギ・ヒノキ等 約700万ha 日本 建築材・内装材
その他広葉樹 約1.5億ha 世界各地 多目的

マツ類の支配的な地位は、(1)幅広い気候適応性(亜寒帯〜亜熱帯)、(2)植林・育林技術の蓄積、(3)建築材・紙パルプ両用途の汎用性、(4)短い育林期間、を背景としています。米国南部のテーダマツ(1,500万ha)と中国・北欧のヨーロッパアカマツ(推定1,500万ha)が、世界マツ類人工林の双璧です。

年間成長量と収穫量:人工林の生産性

世界の人工林2億9,300万haの年間木材成長量は推定約25億m³で、この約半分(12-15億m³)が毎年収穫されています。世界全体の年間木材生産40億m³(うち薪炭材19億m³、産業用材21億m³)のうち、人工林由来は3-4割を占めると推定されています。これは、人工林面積比7.2%に対して生産量比30-40%という、人工林の高生産性を示すものです。

地域・樹種 年間成長量(m³/ha) 備考
ブラジルユーカリ 40-50 m³ 世界最高水準
米国南部マツ 15-20 m³ 商業林業の標準
東南アジアアカシア 20-30 m³ 泥炭地で高成長
日本スギ 10-12 m³ 育林技術が標準
日本ヒノキ 6-8 m³ 長期育成
北欧アカマツ・トウヒ 5-8 m³ 寒冷気候
ロシア・カナダ針葉樹 2-5 m³ 寒帯で低成長

日本のスギ・ヒノキ人工林の成長量はha当たり10m³前後で、ブラジルユーカリの4分の1程度ですが、温帯で安定的な成長を示し、長期的な木材ストックの形成に貢献しています。

日本の人工林1,020万ha:世界5位の構成

日本の人工林1,020万haは世界第5位で、世界人工林の約3.5%を占めます。樹種構成はスギ444万ha(44%)、ヒノキ260万ha(25%)、カラマツ100万ha(10%)、アカマツ・クロマツ70万ha、その他広葉樹146万haです。これは世界的に極めて独自で、(1)スギ・ヒノキは日本固有種、(2)カラマツも日本固有種(信州が産地)、(3)戦後拡大造林期(1950-1970)に集中植林、(4)伐期到来でも収穫進展は限定的、という特徴があります。

日本の森林面積2,500万ha(陸地国土の66%)は世界の0.06%にすぎませんが、人工林面積1,020万haは世界の3.5%を占め、人工林比率(人工林÷森林全体)は約41%で世界平均(7.2%)の5.7倍に達します。これは日本が「人工林大国」と呼ばれる根拠で、戦後の復興期に植林された木材資源が、現在伐期を迎えつつあるという独特の状況を生み出しています。

項目 日本 世界平均 備考
森林面積 2,500万ha 40億ha 世界の0.06%
人工林面積 1,020万ha 2.93億ha 世界の3.5%
人工林比率 約41% 約7.2% 世界平均の5.7倍
森林被覆率(対国土) 66% 31% 世界平均の2倍
主要樹種 スギ・ヒノキ マツ・ユーカリ 独自構成
収穫サイクル 40-50年 25-30年 長期育成

世界の人工林動向:1990-2020の30年変化

FAO FRAデータの時系列分析から、世界人工林の30年変化が明らかになります。1990年の1.78億haから2020年の2.93億haへ、約1.15億ha(年平均390万ha)増加しました。この増加は、世界森林全体の年470万ha減少と対照的で、計画的な人工林拡大が天然林の劣化を部分的にしか補償できていないことを示します。

世界人工林 増加量(前期比) 主要動向
1990 1.78億ha 商業林業中心
2000 2.10億ha +3,200万ha(+18%) 中国・ブラジル拡大
2010 2.78億ha +6,800万ha(+32%) 退耕還林・REDD+
2020 2.93億ha +1,500万ha(+5.4%) 増加ペース鈍化

2010年以降の増加ペース鈍化は、(1)中国の退耕還林工程の完了、(2)米国南部マツ類の飽和、(3)熱帯地域での新規植林地の不足、(4)森林政策のフォーカスが「拡大」から「質的向上」へ移行、を反映したものと考えられます。今後10年(2030年)も人工林面積は3億ha台で安定し、量的拡大より質的向上(生物多様性、炭素貯蔵、保水機能)が政策重点となるでしょう。

気候変動と人工林:CO2吸収の主要セクター

世界の人工林2.93億haは、年間約8〜10億t-CO2のCO2を純吸収していると推定されます。これは世界の年間CO2排出(約400億t)の2-3%に相当し、土地利用変化部門でのCO2吸収量の約4割を占めます。気候変動対策における人工林の戦略的重要性は、(1)計画的に拡大可能、(2)収穫サイクルが明確で炭素管理しやすい、(3)収穫木材製品(HWP)として長期炭素貯蔵、(4)カーボンクレジット化が技術的に容易、にあります。

パリ協定の文脈では、各国の自国決定貢献(NDC)の中で、植林・再造林(A/R: Afforestation/Reforestation)が重要な吸収源として位置づけられています。中国はNDCで2030年までに森林蓄積量60億m³増加を約束、日本は2050年カーボンニュートラル達成のために森林吸収量3,800万t-CO2を活用する計画です。

持続可能性と認証:FSC・PEFCの世界普及

世界の人工林の持続可能性は森林認証制度(FSC、PEFC)でモニタリングされます。2024年時点で、世界の認証森林面積は約5億ha(FSC約1.6億ha、PEFC約3.3億ha)で、人工林に限ると約2億ha(68%)が何らかの認証を取得しています。認証は、(1)持続可能な収穫、(2)生物多様性保全、(3)地域社会との調和、(4)労働環境・人権、(5)違法伐採防止、を保証する仕組みです。

認証制度 認証森林面積 主要産地 特徴
FSC 約1億6,000万ha 欧州・北米・南米 NGO主導、厳格
PEFC 約3億3,000万ha 北欧・北米・日本 各国認証連合
SGEC(日本) 約220万ha 日本 PEFC相互承認
合計(重複含む) 約5億ha 全世界 世界森林の12.5%

日本の人工林の世界的な位置づけ:5位の意味

日本の人工林1,020万haが世界第5位という位置づけは、(1)国土面積が世界60位(38万km²)でありながらの人工林5位、(2)森林被覆率66%(世界平均31%の2倍超)、(3)人工林比率41%(世界平均7%の5.7倍)、という日本の森林立国としての特殊性を反映します。一方で、(A)木材自給率は約42%(2023年)で、世界平均より低い、(B)林業就業者は約4.4万人で減少傾向、(C)伐期到来人工林の収穫進展は限定的、という課題も併存します。

世界の人工林大国(中国・米国・ロシア・カナダ・日本)の中で、日本は「最も小さい国土で最大の人工林比率を持つ国」であり、これは戦後の国家総力戦的な拡大造林政策の遺産です。この遺産を、現代の社会経済・気候変動対策に適合する形で活用できるかが、日本林業の今後の課題となっています。

FAO FRAデータの限界と注意点

FAO FRA 2020データは世界森林の標準データですが、いくつかの限界もあります。(1)各国の自己申告に依存しており、定義・計測方法に国による差がある、(2)「人工林」と「天然林」の区分が曖昧な森林もある(特に北欧の継続被覆林業)、(3)5年毎の更新で短期変化の捕捉が遅い、(4)衛星リモセン技術の進展でより正確なデータが利用可能になりつつある、です。これらを踏まえ、補完データとしてGlobal Forest Watch(World Resources Institute)Hansen Global Forest Change(Maryland大学)JAXAの森林マップなどのリモセン由来データも参照することが推奨されます。

2050年への展望:人工林3.5億haシナリオ

2050年に向けて、世界の人工林は3.5〜4億haに拡大すると予測されます。主要なドライバーは、(1)世界人口の100億人到達による木材需要増加、(2)気候変動緩和のための植林(パリ協定)、(3)熱帯地域での農林複合(agroforestry)拡大、(4)廃棄地・劣化土地の植林化、(5)人工林の生産性向上による森林転換抑制、です。一方、課題として、(A)天然林の劣化進行、(B)気候変動による植林失敗リスク、(C)水資源との競合、(D)生物多様性への影響、が挙げられます。

日本の人工林は、(1)伐期到来資源の有効活用、(2)皆伐後の更新確実化、(3)長伐期化による炭素貯蔵増加、(4)混交林化による生物多様性向上、(5)スマート林業導入による生産性向上、を組み合わせることで、2050年に向けて「持続可能な人工林モデル」として国際的に貢献できる可能性があります。

世界森林の長期トレンド:2030・2050予測

世界の人工林面積は、IIASA(国際応用システム分析研究所)やFAOの長期予測によれば、2030年に約3.1億ha、2040年に約3.4億ha、2050年に約3.7億haへと拡大すると予測されています。これは年平均約260万haの増加ペースで、2010年代の年390万haから減速します。減速理由は、(1)中国の主要植林計画完了、(2)熱帯地域での植林適地の限界、(3)気候変動による植林失敗リスク増加、(4)天然林保全への政策シフト、です。それでも世界人工林は世界森林比率を2020年の7.2%から2050年の9-10%まで上昇させ、計画的森林管理の比重が高まる流れです。

世界森林 うち人工林 人工林比率
1990 約42億ha 1.78億ha 4.2%
2000 約41億ha 2.10億ha 5.1%
2010 約40.6億ha 2.78億ha 6.8%
2020 約40.6億ha 2.93億ha 7.2%
2030予測 約40.4億ha 3.10億ha 7.7%
2050予測 約40億ha 3.70億ha 9.3%

地域別森林動向:アフリカ・南米の森林減少

世界森林全体の年470万ha減少(2010-2020年平均)は地域別に大きな偏りがあります。最大の森林減少地域はアフリカ(年390万ha減少)で、次いで南米(年260万ha減少)が続きます。これに対し、アジア(年120万ha増加)、欧州(年30万ha増加)、北中米(横ばい)、オセアニア(年50万ha増加)は森林面積を維持・拡大しています。アフリカ・南米の森林減少は主に農地転換(油ヤシ、大豆、牛畜産)によるもので、人工林拡大による補償が追いついていない状況です。

地域 森林変化(年平均) 主要要因
アフリカ -390万ha 焼畑・農地転換・薪炭採取
南米 -260万ha 大豆・牛畜産・違法伐採
アジア +120万ha 中国・印度の植林拡大
欧州 +30万ha 北欧の継続的造林
北中米 横ばい 米加の安定的経営
オセアニア +50万ha 豪・ニュージーランドの植林
世界合計 -470万ha 純減少続く

これは、世界森林の正味の動向は「アジア(特に中国)の人工林拡大」が「アフリカ・南米の天然林減少」を部分的にしか相殺できていないことを示しており、世界森林政策の最大の課題はアフリカ・南米の森林減少抑制にあります。REDD+(途上国の森林減少・劣化に由来する温室効果ガス排出削減)の枠組みが、この課題に対する国際的な対応の中核です。

日本人工林の年齢構造:8齢級超70%の問題

日本の人工林1,020万haの年齢構造は極めて偏っており、8齢級(41-50年生)以上が約70%を占めます。これは戦後拡大造林期(1950-1970年代)に集中植林されたスギ・ヒノキが、現在伐期到来期に達した結果です。樹齢別の分布は、(1)1-3齢級(1-15年生):約3%、(2)4-7齢級(16-35年生):約27%、(3)8-10齢級(36-50年生):約45%、(4)11齢級以上(51年生以上):約25%、です。

この年齢構造の偏りは、(1)今後30年で大規模な伐期到来、(2)皆伐後の再造林の遅延、(3)若齢林の不足、(4)林齢構造の不均衡が長期的に続く、という構造的な課題を生んでいます。FAO FRAの世界平均では林齢構造はもっと均衡的で、日本特有の戦後拡大造林期の遺産が顕著です。

齢級 樹齢 面積 世界比較
1-3 1-15年 約30万ha (3%) 世界平均の1/3
4-7 16-35年 約280万ha (27%) 世界平均並
8-10 36-50年 約460万ha (45%) 世界平均の2倍
11以上 51年以上 約250万ha (25%) 世界平均の1.5倍
合計 約1,020万ha

世界の人工林1ha当たり蓄積量と日本の独自性

FAO FRA 2020によれば、世界の人工林の平均蓄積量はha当たり約120m³です。これに対し日本人工林の平均蓄積量はha当たり約340m³(2022年)と、世界平均の約2.8倍に達します。これは、(1)日本人工林の高樹齢化(8齢級以上70%)、(2)スギ・ヒノキの高蓄積性、(3)長期育成主義の伝統、を反映したものです。総蓄積量で見ると、日本人工林全体の蓄積は約34億m³で、世界人工林総蓄積(推定350億m³)の約10%を占めることになります。

これは、日本が「世界の0.06%の森林」「世界の3.5%の人工林」「世界の10%の人工林蓄積」を持つ国であることを意味し、面積でなく蓄積量で見ると日本は世界有数の人工林資源国です。この資源を有効活用できるかが、日本林業の今後の最大の課題と機会です。

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主要出典:FAO Global Forest Resources Assessment 2020(fao.org/forest-resources-assessment)、林野庁「森林・林業白書」、World Resources Institute Global Forest Watch、PEFC International、FSC International。

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