日本の都市部に存在する街路樹は約670万本、都市公園面積は約13万ha、これら都市の森が吸収する年間CO2量は概算で約160万t-CO2と試算されます。1本の成熟街路樹が年間吸収するCO2は約20〜40kg、都市公園1ha当たり約11〜13t-CO2/年で、自然林の単位面積吸収量にほぼ匹敵します。明治神宮の森(約70ha)・代々木公園(54ha)・新宿御苑(58ha)等の大型公園は東京都心の重要なCO2吸収源として機能しています。本稿では都市の森のCO2吸収評価を、街路樹本数、都市公園面積、樹種別吸収係数(イチョウ・ケヤキ・クスノキ等)、ヒートアイランド緩和効果(2〜3℃)、都市緑地法・都市計画法上の位置づけ、明治神宮の森100年計画、自治体別の取り組みまで、国交省・環境省・地方自治体データに基づき構造的に整理します。
この記事の要点
- 街路樹670万本・都市公園13万ha。年間CO2吸収量約160万t-CO2。
- 森林吸収量4,500万t-CO2の約3.6%相当。
- 成熟街路樹1本:20〜40kg-CO2/年。クスノキ大径木は約50kg。
- 都市公園1ha:約11〜13t-CO2/年(緑被率70%想定)。
- 明治神宮の森:約70ha。1920年代の植樹計画で造林。
- ヒートアイランド緩和:2〜3℃(公園内vs周辺市街地)。
- 1人当都市公園面積:10.7m²(2022年)。
- 多面的便益:CO2吸収・気温緩和・雨水浸透・生物多様性・心理的便益。
クイックサマリー:都市の森の基本数値
| 指標 | 数値 | 出典・備考 |
|---|---|---|
| 街路樹本数(全国) | 約670万本 | 高木のみ |
| 都市公園面積(全国) | 約13万ha | 国交省「都市公園データベース」 |
| 街路樹CO2年吸収量 | 約20万t-CO2 | 1本平均30kg×670万本 |
| 公園樹CO2年吸収量 | 約140万t-CO2 | 公園緑地分 |
| 都市の森CO2吸収合計 | 約160万t-CO2 | 街路+公園 |
| 森林吸収量との比較 | 3.6%相当 | 森林4,500万t-CO2比 |
| 街路樹1本平均CO2吸収 | 約20〜40kg/年 | 樹種・樹齢で変動 |
| クスノキ大径木年吸収 | 約50kg/年 | 胸高直径50cm以上 |
| 都市公園1ha吸収量 | 約11〜13t-CO2/年 | 緑被率70%想定 |
| 国民1人当都市公園面積 | 10.7m² | 2022年度 |
| ヒートアイランド緩和 | 2〜3℃ | 公園内vs周辺市街地 |
| 明治神宮の森面積 | 約70ha | 1920年代植樹 |
| 代々木公園面積 | 約54ha | 東京都渋谷区 |
| 新宿御苑面積 | 約58ha | 環境省管轄 |
街路樹670万本の構造
国交省「道路緑化技術基準」と地方自治体データを集計すると、日本の街路樹(高木)は全国で約670万本に達します。樹種別シェアは、イチョウ約57万本(8.5%)、サクラ類約49万本(7.3%)、ケヤキ約47万本(7.0%)、ハナミズキ約32万本(4.8%)、トウカエデ約26万本(3.9%)が上位5樹種で、合計約30%を占めます。地域差が大きく、関東はイチョウ・ケヤキ、関西はクスノキ・ハナミズキ、北海道はナナカマド・プラタナス、九州はクスノキ・センダンが多い構成です。
街路樹本数の経年推移は、1970年の約110万本から2022年の約670万本へと約6倍に増加しました。この拡大は、1970年代の都市環境改善・大気汚染緩和政策、1990年代以降の景観形成・温暖化対策政策が連続的に推進された結果です。一方、近年は街路樹の老木化(樹齢40年超が約3割)、根上がりによる歩道破損、台風時の倒木リスク等の管理課題が顕在化し、新規植栽数より撤去数が上回る自治体も増えています。
1本当たりCO2吸収量の構造
街路樹1本の年間CO2吸収量は、樹種・樹齢・胸高直径・土壌条件・剪定強度で大きく変動します。国交省「街路樹のCO2吸収量算定マニュアル」に基づくと、胸高直径20cmのケヤキ若木で年間約12kg-CO2、直径40cmの中径木で約25kg、直径60cm超の大径木で約45kgとされます。クスノキ・センダン・プラタナス等の常緑または半常緑樹は同サイズの落葉樹より光合成期間が長く、年間吸収量が10〜20%多い傾向があります。
| 樹種 | 若木(D20cm) | 中径木(D40cm) | 大径木(D60cm) |
|---|---|---|---|
| ケヤキ | 約12 kg-CO2/年 | 約25 kg-CO2/年 | 約45 kg-CO2/年 |
| イチョウ | 約10 kg-CO2/年 | 約22 kg-CO2/年 | 約40 kg-CO2/年 |
| クスノキ(常緑) | 約14 kg-CO2/年 | 約30 kg-CO2/年 | 約50 kg-CO2/年 |
| ハナミズキ | 約8 kg-CO2/年 | 約18 kg-CO2/年 | 約32 kg-CO2/年 |
| サクラ類 | 約11 kg-CO2/年 | 約24 kg-CO2/年 | 約42 kg-CO2/年 |
| プラタナス | 約14 kg-CO2/年 | 約28 kg-CO2/年 | 約48 kg-CO2/年 |
| センダン | 約13 kg-CO2/年 | 約27 kg-CO2/年 | 約46 kg-CO2/年 |
| ナナカマド | 約9 kg-CO2/年 | 約20 kg-CO2/年 | 約36 kg-CO2/年 |
670万本の街路樹のうち、約半数は中径木〜大径木のサイズに成熟しており、平均CO2吸収量を1本年30kgと仮定すると、街路樹全体で年間約20万t-CO2を吸収する計算となります。
都市公園のCO2吸収:1ha当たり11〜13t
都市公園の年間CO2吸収量は、緑被率(樹冠カバー率)と樹種構成で決まります。緑被率70%・中径〜大径木中心の都市公園では、1ha当たり11〜13t-CO2/年の吸収が標準的水準です。これは天然林(年間8〜12t-CO2/ha)と同等または若干高い水準で、都市公園の生態系機能の高さを示します。
| 都市公園の規模 | 典型的緑被率 | 1ha吸収量(t-CO2/年) |
|---|---|---|
| 大規模公園(明治神宮等) | 80〜90% | 13〜15 |
| 中規模公園(代々木公園級) | 70〜80% | 11〜13 |
| 近隣公園 | 50〜70% | 8〜11 |
| 街区公園・小規模緑地 | 30〜50% | 5〜8 |
全国都市公園面積13万haのうち、緑被率の高い大規模公園・近隣公園が約80%を占めるため、加重平均で1ha当たり10〜11t-CO2/年、合計約140万t-CO2/年の年間吸収量となります。これは京都議定書・パリ協定に基づく日本のCO2吸収目標達成への重要な貢献として位置付けられています。
明治神宮の森:100年計画の都市林
東京・原宿の明治神宮の森(約70ha)は、日本の都市林計画の代表事例です。1915年から1920年代にかけて、本多静六・本郷高徳等の林学者が「100年後の極相林」を計画し、全国から献納された約10万本の苗木で人工林を造林しました。当初の植栽は針葉樹(マツ・スギ)中心でしたが、計画通り100年後の現在、シイ・カシ・クスノキ等の照葉樹林に遷移し、約7万本・230種の樹木を擁する都市林となっています。
| 項目 | 1920年代植栽時 | 100年後(現在) |
|---|---|---|
| 面積 | 約70ha | 約70ha |
| 樹木本数 | 約10万本 | 約7万本 |
| 樹種 | マツ・スギ中心 | シイ・カシ・クスノキ(230種) |
| 林相 | 針葉樹人工林 | 照葉樹自然林(極相林) |
| 年間CO2吸収量 | — | 約900〜1,000t-CO2 |
明治神宮の森は1920年代の植樹計画から100年後の自然林への遷移という長期的視点が、都市林計画の手本として国際的にも評価されています。年間900〜1,000t-CO2の吸収量は、東京都心の重要なCO2吸収源として機能しています。
代々木公園・新宿御苑等の主要都市林
東京都心の主要な大規模都市林として、明治神宮の森に隣接する代々木公園(54ha)、新宿御苑(58ha)等があります。これら大規模公園は東京都心のCO2吸収源としてだけでなく、ヒートアイランド緩和・生物多様性保全・市民の憩いの場として多面的機能を発揮しています。
| 主要都市林 | 所在地 | 面積 | 主要樹種 |
|---|---|---|---|
| 明治神宮の森 | 東京都渋谷区 | 約70ha | シイ・カシ・クスノキ(230種) |
| 代々木公園 | 東京都渋谷区 | 約54ha | ケヤキ・サクラ・イチョウ |
| 新宿御苑 | 東京都新宿区 | 約58ha | 洋風・日本風庭園併設、約1万本 |
| 上野恩賜公園 | 東京都台東区 | 約53ha | サクラ約800本・松等 |
| 井の頭恩賜公園 | 東京都武蔵野市 | 約43ha | サクラ・ケヤキ・池 |
| 大阪城公園 | 大阪市 | 約106ha | サクラ約3,000本・松 |
| 名城公園 | 名古屋市 | 約80ha | サクラ・ケヤキ |
| 大濠公園 | 福岡市 | 約40ha | サクラ・松・池 |
| 真駒内公園 | 札幌市 | 約85ha | カラマツ・トドマツ |
これら主要都市林は、地方自治体(東京都・大阪市・名古屋市等)または国の管轄(環境省・国土交通省)で管理運営され、計画的な維持管理・更新が行われています。年間CO2吸収量は1ha当たり11〜13t-CO2を仮定すると、東京の主要4公園(225ha)で約2,500〜2,900t-CO2、大阪城・名古屋・福岡・札幌の主要都市公園で各々500〜1,200t-CO2の吸収となります。
ヒートアイランド緩和効果
都市の森のもう一つの重要な機能は、ヒートアイランド緩和(公園内vs周辺市街地で2〜3℃の気温差)です。これは樹冠による日射遮蔽・蒸散作用・地表面熱容量の増加の3つの効果が組み合わさった結果です。蒸散作用は1本の中径〜大径木で1日200〜400Lの水分を蒸散させ、これは家庭用エアコン10台分相当の冷却効果に匹敵します。
| 効果メカニズム | 定量化 | 効果範囲 |
|---|---|---|
| 日射遮蔽 | 樹冠下で5〜10℃低下 | 樹冠下面積 |
| 蒸散冷却 | 1本200〜400L/日蒸散 | 樹冠周辺数十m |
| 地表温度低下 | 10〜15℃の差 | 樹冠下舗装面vs日向 |
| 気温緩和(公園全体) | 2〜3℃ | 公園内vs市街地 |
| 夜間の温度低下 | 0.5〜1℃ | 公園周辺200〜300m |
これらの効果は熱中症リスクの低減、エアコン消費電力の削減、市民の健康・生活快適性の向上として定量化されつつあります。環境省・国土交通省・各自治体は、ヒートアイランド緩和効果も都市緑化の評価軸として組み込み始めており、CO2吸収だけでなく多面的便益として政策化されています。
多面的便益の評価
都市の森のCO2吸収は重要ですが、それ以外の多面的便益も同等または上回る経済価値を持ちます。以下に主要便益を整理します。
- 気候調整機能(CO2吸収・気温緩和):年160万t-CO2吸収+ヒートアイランド緩和。
- 水循環機能(雨水浸透・洪水緩和):1ha当たり年間1,500〜2,500m³の雨水を地下に浸透。
- 大気浄化機能:PM2.5・NOx・SO2等の大気汚染物質を吸着・吸収。
- 生物多様性保全:都市内の鳥・昆虫・小動物の生息地として機能。
- 心理的便益:ストレス軽減・うつ病罹患率の低下・子供の発達促進。
- 不動産価値向上:公園隣接物件は約10〜20%価格プレミアム。
- 観光・地域ブランド:サクラ並木・公園は地域の観光資源。
- 防災機能:地震・火災時の避難場所、緊急物資搬入動線。
これら多面的便益の合計経済価値は、CO2吸収だけの数十倍に達するという研究もあり、都市林の総合的価値の評価が政策・予算面で重要になっています。
都市緑地法・都市計画法と政策枠組み
都市の森は、国の都市緑地法(1973年)・都市計画法(1968年)・道路緑化技術基準により制度的に保護・拡大されてきました。都市緑地法は緑地保全地域・特別緑地保全地区等を指定し、都市内の緑地を計画的に保全。都市計画法は都市公園を「公園緑地」として位置付け、自治体に整備計画を策定させます。道路緑化技術基準は、街路樹の樹種選定・植栽間隔・剪定方法等の基準を国交省が定め、全国の道路管理者がこれに従って街路樹を整備します。
| 法令・基準 | 所管 | 主要内容 |
|---|---|---|
| 都市緑地法 | 国土交通省 | 緑地保全地域、特別緑地保全地区 |
| 都市計画法 | 国土交通省 | 都市公園・緑地の計画位置付け |
| 道路緑化技術基準 | 国土交通省 | 街路樹の樹種・配置・管理 |
| 都市公園法 | 国土交通省 | 都市公園の整備・管理 |
| 地球温暖化対策推進法 | 環境省 | 都市の森のCO2吸収を含む対策 |
| 気候変動適応法 | 環境省 | ヒートアイランド対策含む |
都市の森の老木化・更新課題
都市の森の管理上の重要課題は老木化と更新です。1970〜1980年代に大量植栽された街路樹は現在50〜60年生となり、根上がり・幹腐朽・台風時倒木リスクが顕在化しています。樹齢40年超の街路樹は全国で約3割(200万本超)と推計され、これら高齢樹の管理・更新が年間数百億円規模の課題となっています。
更新の選択肢は3つ:第1に補植・若返り(伐採後同じ場所に若木を植える)、第2に樹種転換(在来種・耐害虫種への切替)、第3に景観維持の延命管理(剪定強化・支柱・薬剤散布)です。各自治体は限られた予算の中で、優先順位をつけた更新計画を策定中です。仙台市の「ケヤキ並木100年プラン」、名古屋市の「街路樹更新方針」、福岡市の「シンボル並木保全計画」等が先進事例です。
各自治体の取り組み事例
都市の森の整備・管理は最終的に各自治体が実施します。先進事例として東京都・横浜市・名古屋市・大阪市・福岡市・札幌市等の主要都市の取り組みを整理します。
| 自治体 | 都市公園面積 | 主要施策・特徴 |
|---|---|---|
| 東京都 | 約8,400ha | 都立公園・区立公園、明治神宮の森、皇居外苑 |
| 横浜市 | 約2,300ha | 港の見える丘公園、根岸森林公園、こどもの国 |
| 名古屋市 | 約2,800ha | 名城公園、東山動植物園、徳川園 |
| 大阪市 | 約1,200ha | 大阪城公園、長居公園、鶴見緑地 |
| 福岡市 | 約1,800ha | 大濠公園、舞鶴公園、海の中道海浜公園 |
| 札幌市 | 約3,200ha | 真駒内公園、円山公園、モエレ沼公園 |
| 仙台市 | 約2,500ha | 定禅寺通り、青葉山公園、ケヤキ並木100年プラン |
| 京都市 | 約950ha | 京都御苑、二条城、嵐山周辺の文化的緑地 |
各自治体は都市公園の管理・更新に独自の方針を持ちます。仙台市の「ケヤキ並木100年プラン」は、定禅寺通りと青葉通りのケヤキ約160本を100年単位で管理する長期計画。横浜市の「みどりアップ計画」は、緑地保全と新規創出のバランスを政策化。福岡市の「シンボル並木保全計画」は、那の津通りのクスノキ等の象徴的並木の維持管理を重点化しています。
都市林の樹齢構成と維持管理コスト
都市林の年齢構成は、全国平均で若木(樹齢20年未満)約20%、中齢木(20〜40年)約45%、高齢木(40年超)約35%という分布です。東京・大阪等の大都市圏では1970年代の植栽が中心で高齢木比率が高く、地方都市は近年の植栽が比較的多く中齢木比率が高い傾向です。維持管理コストは1本年間1,000〜5,000円(剪定・薬剤・点検)で、全国合計で年間約100億円規模が街路樹管理に投じられています。
| 樹齢区分 | 本数(推計) | 本数比率 | 1本年間管理コスト |
|---|---|---|---|
| 若木(20年未満) | 約130万本 | 20% | 500〜2,000円(少) |
| 中齢木(20〜40年) | 約300万本 | 45% | 1,000〜3,000円 |
| 高齢木(40〜60年) | 約170万本 | 25% | 2,000〜5,000円 |
| 老木(60年超) | 約70万本 | 10% | 3,000〜10,000円(多) |
高齢木・老木は剪定・薬剤・支柱・点検等の管理コストが若木の3〜5倍に達するため、樹齢構成のバランスをとる更新計画が、長期的なコスト管理の観点で重要です。早期更新で若木比率を高めれば年間管理コストを下げられますが、CO2吸収量・景観価値の急減リスクがあります。各自治体はこのトレードオフを考慮した計画を策定中です。
市民参加と都市緑化のNPO・団体
都市の森の整備・管理は、自治体だけでなく市民・NPO・企業の参加で支えられています。各都市には「公園ボランティア」「街路樹サポーター」等の市民組織があり、清掃・剪定補助・植樹活動・観察会等を実施しています。NPOとしては「日本緑化センター」「日本公園緑地協会」「日本森林学会」等が、技術支援・政策提言・教育啓発で活動しています。
| 主要NPO・団体 | 主活動 |
|---|---|
| 日本緑化センター | 緑化技術指導、樹木医制度 |
| 日本公園緑地協会 | 都市公園の整備・管理支援 |
| 日本森林学会 | 研究・政策提言 |
| 樹木医会 | 樹木医による点検・処方 |
| 各自治体の公園ボランティア | 清掃・観察・植樹 |
| 企業の社員植樹活動 | CSRの一環 |
樹木医制度(1991年創設)は、都市の樹木の健康管理に専門家を派遣する制度で、現在約3,000人の樹木医が登録しています。これらの専門家は、街路樹・公園樹の点検・処方・更新計画策定等に重要な役割を果たし、都市の森の長期的健全性を支えています。
都市の森のCO2吸収精緻評価への新技術
近年、都市の森のCO2吸収量を精緻に評価する新技術が導入されつつあります。第1にALS(航空レーザ測量)データの活用:航空機からのレーザ計測で街路樹・公園樹の樹高・本数密度・蓄積を高精度推定し、自治体別のCO2吸収量データベースを構築できます。第2に衛星リモートセンシング:Landsat・Sentinel-2等の衛星画像で都市の緑被率・樹冠面積を経時的に把握し、変化分析が可能です。第3に地上LiDAR・ドローン計測:個別木の精緻な形質計測(幹直径・枝下高・葉量)で、CO2吸収量算定の精度を飛躍的に向上させます。
| 計測技術 | 解像度 | 主用途 |
|---|---|---|
| ALS(航空レーザ測量) | 0.5〜1mグリッド | 市街地全域の樹高分布、街路樹・公園樹の自動検出 |
| 衛星リモートセンシング | 10〜30m | 緑被率の経年変化、ヒートアイランド分布 |
| UAV LiDAR(ドローン) | 10〜30cm | 公園・並木の精緻計測 |
| 地上LiDAR(TLS) | ミリ単位 | 個別木のCO2吸収量算定 |
| スマホLiDAR・AIアプリ | cm〜10cm | 市民参加型の現地調査 |
| 樹冠AIモデル | — | 樹種自動判定、CO2吸収量推定 |
これらの技術組合せにより、都市の森のCO2吸収量・気温緩和効果・生物多様性等を定量的・面的に評価できる時代が到来しつつあります。京都大学・東京大学等の研究機関、都市環境関連の民間企業、自治体の連携で、データドリブンな都市緑化計画への移行が進んでいます。
J-クレジット制度との接続可能性
J-クレジット制度は、温室効果ガス排出削減・吸収量を国がクレジットとして認証する制度で、森林吸収はクレジット対象として認められています。現状、都市の森(街路樹・都市公園)はJ-クレジット制度の対象から外れていますが、自治体・都市林管理者からは対象拡大の要望が上がっています。年間約160万t-CO2の吸収量がクレジット化されれば、市場価格2,000〜4,000円/t-CO2を基準として、年間32〜64億円の財源が生まれる可能性があります。
制度化の課題は、第1にCO2吸収量の精緻測定(ALS・地上LiDAR等の活用)、第2に追加性(既存植樹の吸収量と新規追加の判別)、第3に永続性(伐採・更新時の取扱い)の3点です。これらをクリアできれば、都市の森の経済価値が制度的に認知され、自治体・市民の植樹・管理インセンティブが強化される構造になります。環境省・国土交通省・林野庁の検討が続いており、2030年代までに何らかの制度化が期待されています。
2025〜2030年の都市の森政策
次の5年で重要となる政策は3軸です。
- 第1にCO2吸収量の精緻評価:街路樹・公園樹の樹種・サイズ別CO2吸収量を、ALSデータ・地上LiDAR・衛星リモートセンシングで測定し、自治体別の精緻な吸収量データベースを構築。J-クレジット制度等での活用も期待されます。
- 第2に老木化対応の更新計画:全国で200万本超の老木の段階的更新、樹種多様化、街路樹密度の最適化。
- 第3に多面的便益の市民理解促進:CO2吸収・気温緩和・生物多様性・心理的便益等の総合的評価を、住民参加・教育プログラムで普及。
これらの政策推進により、都市の森は2030年代に年間180〜200万t-CO2の吸収能力を維持しつつ、ヒートアイランド緩和・生物多様性保全・市民の生活快適性向上の総合的役割を高めていく見通しです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 街路樹のCO2吸収量はどう計測するのですか?
胸高直径(地上1.3m位置の幹直径)と樹高を実測し、樹種別の吸収係数を掛けて算定します。国交省「街路樹のCO2吸収量算定マニュアル」では、樹種別・サイズ別の標準係数を用います。直径20cmのケヤキ若木で約12kg-CO2/年、直径60cmの大径木で約45kg-CO2/年が標準的水準です。
Q2. なぜ都市公園1ha当たりのCO2吸収量は森林と同等水準なのですか?
都市公園は計画的に植栽された緑地で、緑被率70〜90%・中径〜大径木中心の構成です。樹木の密度・サイズが森林に近く、年間11〜13t-CO2/haの吸収量を実現しています。一方、自然林は密度が高く幼木比率も高いため、平均的には8〜12t-CO2/haで都市公園と同等水準となります。
Q3. 街路樹の老木化は問題ですか?
樹齢40年超の街路樹は約3割(200万本超)あり、根上がり・幹腐朽・台風倒木リスクが顕在化しています。一方、大径木のCO2吸収量は若木の3〜4倍で、生態系・景観の価値も高いため、計画的な更新と延命管理のバランスが重要です。各自治体が個別の更新方針を策定しています。
Q4. 明治神宮の森はなぜ100年計画なのですか?
1915〜1920年代に造林した時点で、林学者の本多静六・本郷高徳等が「将来の自然林(極相林)」を目指し、針葉樹中心の植栽から自然な遷移で照葉樹林(シイ・カシ・クスノキ等)になることを計画しました。100年経った現在、計画通りシイ・カシの照葉樹林に遷移し、約7万本・230種の樹木を擁する都市林となっています。
Q5. ヒートアイランド緩和の効果は?
公園内vs周辺市街地で2〜3℃の気温差、樹冠下では5〜10℃の地表温度差が観測されます。樹木1本の蒸散冷却は1日200〜400L、家庭用エアコン10台分相当の冷却効果。これにより熱中症リスクの低減、エアコン消費電力削減、市民の健康・生活快適性の向上が定量化されつつあります。
Q6. 街路樹は今後増えますか減りますか?
大都市圏では老木更新数より撤去数が上回り、現状維持〜微減の傾向です。地方都市では新規植栽もある一方、管理予算制約で増加ペースは鈍化しています。CO2吸収・ヒートアイランド緩和の重要性から、樹種多様化・適地適樹・低管理コスト樹種の選定で、質的向上を目指す方向です。
関連記事
- 森林のCO2吸収量|年間4,500万t-CO2の構造
- 明治神宮の森|100年計画と都市林
- ヒートアイランド|都市部の高温化対策
- 都市公園データベース|国交省の整備状況
- 街路樹のCO2吸収量算定マニュアル
- 緑被率|都市の緑地評価指標
まとめ
都市の森(街路樹670万本・都市公園13万ha)は年間約160万t-CO2を吸収し、森林吸収量4,500万t-CO2の3.6%相当を占めます。1本の成熟街路樹は年20〜40kg-CO2、1ha当たり都市公園は11〜13t-CO2/年で、自然林に匹敵する吸収量です。明治神宮の森(70ha)の100年計画、代々木公園・新宿御苑等の主要都市林は東京都心の重要なCO2吸収源として機能しています。CO2吸収以外にもヒートアイランド緩和(2〜3℃)、雨水浸透、生物多様性保全、心理的便益等の多面的機能を発揮し、不動産価値向上・観光資源・防災機能の経済便益はCO2吸収の数十倍に達します。老木化(200万本超)への更新対応、CO2吸収量の精緻評価、多面的便益の市民理解促進が次の5年の主要政策テーマで、2030年代に年180〜200万t-CO2の吸収能力維持と総合的役割の強化が目標です。

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