認定林業事業体|少数の担い手に集約される林業現場

認定林業事業体少数に集約

日本の山から伐り出される木材の多くを、ごく一部の事業者が手がけています。その担い手が「認定林業事業体」です。林業経営体は全国に約3.4万(農林業センサス2020)あるのに、都道府県知事の認定を受けた事業体はそのうちの一部にすぎません。それでも、国産材の素材生産量に占める割合は7割前後とされます。この記事では、なぜこれほど少数に集約されているのか、認定とは何を意味するのかを整理します。

目次

「ちゃんとした経営体」を選び出す仕組み

認定林業事業体(法律上は「認定事業主」)の制度は、1996年に施行された林業労働力の確保の促進に関する法律(林業労働力確保法)にもとづきます。事業主が「改善計画」——雇用管理の改善(労働環境・募集方法・処遇など)と事業の合理化(機械化など)を一体的に進めるための計画——をつくり、都道府県知事の認定を受けると、次のような支援が受けられます。

  • 林業・木材産業改善資金の特例(償還期間を10年から15年に延長)
  • 現場技能者を段階的・体系的に育てる「緑の雇用」事業の実施主体になれる
  • 新規就業者の就業準備・研修受講に必要な資金の無利子貸付
  • 各種補助事業の受託でも、体制の整った事業体として優先されやすい

狙いは明確で、季節労務に頼ってきた林業現場を、社会保険・通年雇用・機械装備を備えた近代的な経営体へと引き上げること。零細・休眠状態の経営体をふるい落とす「政策的なフィルター」として機能してきました。認定には有効期間があり、実績を踏まえて更新します。

実際のところ、林業の雇用環境の改善はまだ途上です。白書によると、雇用労働者に占める月給制の割合は32%にとどまり、年間就業日数210日以上(ほぼ通年雇用)の割合は67%(令和4年度)。認定事業体はこうした指標で非認定の零細事業体を上回り、通年雇用や社会保険加入が事実上の前提になっています。

少数の事業体に、生産が集中する

認定林業事業体は、株式会社などの会社形態が過半を占め、森林組合系がそれに次ぎ、任意組合やNPOなどが残りという構成です。数のうえでは年間素材生産1万m³未満の中小事業体が大多数ですが、生産量でみると、北海道や九州(宮崎・大分)に集まる年数万m³規模の大規模事業体に大きく偏っています。

大規模事業体の多くは、1社で製材・合板工場まで川下を取り込んだ垂直統合型で、雇用も数十〜200人規模と地域雇用の中核です。中堅事業体は、地域の主伐再造林や間伐を回す現場の主力で、施業集約化の実務を担います。そして小規模事業体でも、林業基盤の弱い県では地域で唯一の施業者として欠かせない存在です。

林業県に偏る分布

事業体がどこに多いかを見ると、林業の歴史が色濃く出ます。東北6県と九州が二大集積地です。九州は製材一貫の垂直統合が多く、主伐後の再造林率も全国平均より高い先進地。コンテナ苗の普及も早く、再造林コストの削減で先行しています。東北はスギの主伐ピークの到来が九州よりやや遅く、地域の主伐転換を事業体が主導する立場。冬の積雪期にどう通年雇用を保つかが課題で、除雪や育林、木材加工と組み合わせて稼働日数を確保しています。北海道は大規模事業体が集中し、緩やかな地形を活かした機械化で高い生産性を出しています。

政策の「集約執行装置」として

この集約構造には、はっきりした政策的な意味があります。素材生産の大部分を認定事業体が担うということは、補助金の交付対象をここに絞れば、政策効果を効率よく集約できるということ。造林補助・路網整備補助・主伐再造林補助の多くが、認定事業体を通じて執行されています。

ただし収支は楽ではありません。スギ素材価格と山元立木価格は1980年のピークから大きく下がったまま、燃料費・機械リース費・人件費は上がるという厳しい環境で、補助金を含めてようやく黒字を保っている事業体が少なくありません。補助金頼みから抜け出すには、素材価格の回復か、長伐期材・大径材といった付加価値の高い施業への転換が要ります。

処遇も安全も、ワンランク上

認定事業体で働く人の処遇は、通年雇用・社会保険加入が前提になっているぶん、非認定の零細事業体より安定しています。安全面でも、危険予知活動の実施、防護具の装着、特別教育の徹底が標準化されており、災害率は林業全体の平均を下回る傾向があります。とはいえ林業の死傷年千人率は令和5年で22.8と全産業でもっとも高く、死亡災害も年30件前後起きています。安全はまだ道半ばです。

これからの宿題

認定事業体が抱える課題は、大きく三つです。第一に人材。従事者の若返りが進まず、若手の確保と育成が急務です。創業世代の経営者が引退期を迎え、事業承継やM&Aも増えてきました。第二に収益性。補助金依存から脱するための付加価値化。第三に再造林。木を伐った後にまた植える再造林率は全国平均で3〜4割にとどまり、ここを引き上げる責務が認定事業体に集まっています。九州ではコンテナ苗や低密度植栽、植栽の機械化で再造林率を大きく高める事例も出てきました。森林経営管理制度で市町村から委託される森林が増えるなか、認定事業体は「政策と現場をつなぐ実務担当」として、ますます中心的な役割を担っていきそうです。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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