日本の高性能林業機械の保有台数は、令和6年度末で約16,400台。10年前(平成26年度)の約7,100台から2.3倍に増えました。高性能林業機械等を活用した作業システムによる素材生産量の割合(機械化率)も、2019年度には8割に達しています。ただし数字を工程ごとに分解すると、進んでいるところと止まっているところの差がはっきり見えてきます。ここでは台数・工程別・地域別・補助制度という切り口から、林業機械化の今を整理します。
主力はフォワーダ・プロセッサ・ハーベスタ
高性能林業機械とは、林野庁の定義でハーベスタ、プロセッサ、フォワーダ、スイングヤーダ・タワーヤーダ、フェラーバンチャ、スキッダなどを指します。令和6年度末の保有台数は、フォワーダが約5,200台(全体の約3割)で最多、次いでプロセッサ約2,350台、ハーベスタ約2,270台と続きます。この3種で全体の6割前後を占め、日本の機械化の屋台骨になっています(※令和4年度からフォワーダの集計にグラップルローダのない機種も含めるようになった点に注意)。
プロセッサは造材工程の主役です。チェーンソーで伐倒した木をつかみ上げ、枝払い・玉切りまでを一気に行います。日本では「人が伐倒し、プロセッサが造材する」組合せが定番です。ハーベスタは伐倒から造材までを1台でこなす欧州型の主力機ですが、日本では傾斜30度を超える急斜面で大型機が動きづらいため台数が伸びにくく、近年はミニショベルをベースにした小型クラスが傾斜地や小規模事業体へ広がりつつあります。フォワーダは造材後の短材を積んで土場まで運ぶ運搬車で、普及は作業道の整備とセットで進み、路網が密な地域ほど稼働率が高くなります。スイングヤーダ・タワーヤーダは急斜面でワイヤーを張って木を集める集材機で、欧州の機械統計にはあまり登場しない日本ならではの機種です。
工程別に見ると、伐倒だけが取り残されている
素材生産は伐倒・造材・集材・運搬の4工程に分かれます。造材(プロセッサ)・集材(フォワーダ・架線)・運搬はかなり機械化が進んでいるのに対し、伐倒はいまもチェーンソーによる手作業が中心です。林野庁の集計では、令和4年度の伐倒作業に林業機械を使う割合は、北海道で約28%、本州・四国・九州で約52%と地域差があります。いずれにせよ、受け口・追い口で1本ずつ切り倒す危険な作業を、機械(伐倒機・小型ハーベスタ・遠隔操作の伐倒作業車)にどこまで置き換えられるかが、生産性と安全の両面で最大の課題です。
伐倒の担い手は高齢化が進んでおり、後継者不足と機械化の遅れは同じコインの裏表です。伐倒の機械化を進められなければ、いまの素材生産規模を保つこと自体が難しくなる、という危機感が現場にはあります。一方で運搬や造材が早く機械化されたのは、フォワーダやプロセッサが路網整備とセットで補助が付き、投資を回収しやすかったからです。
20年で機械化は大きく進んだ。ただし上昇は鈍化
作業システムによる素材生産量の割合は、2000年代の2割前後から2019年度の8割まで伸びました。1996年に高性能林業機械の導入を後押しする制度ができて以降、着実に上がってきた計算です。同じ期間に素材生産量も増えており、機械化と生産拡大が並走してきました。ただし近年は伸び幅が縮まり、成熟期に入った気配があります。
北欧との差は「率」より「稼働率」に出る
欧州と比べると、機械化率そのものは意外に肉薄しています。差がはっきり出るのは、機械1台が年間どれだけ処理するかという稼働率のほうです。北欧の1台あたり年間処理量は日本の数倍とされ、背景にあるのは路網密度の差(日本の林道密度は平均で20m/ha台、ドイツは100m/ha規模)、平地中心か急斜面かという地形の違い、そして交代制の運用慣行です。日本が路網でドイツ並みに追いつくには長期の投資が要るため、当面は路網密度の引き上げと、急斜面は架線系で補う設計が続きます。
機械はどこに集まっているか
都道府県別では、北海道が最多(令和5年度末で約1,080台)。これに岩手・秋田など北東北、宮崎・大分・熊本の九州勢が続き、伝統的な林業県に集中しています。1事業体あたりの保有台数も、林業県と非林業県で差が大きく、機械の集約度には明確な地域格差があります。北海道は緩い傾斜の人工林が多く大型機を回しやすい地形、宮崎県は急斜面が多いにもかかわらず素材生産量が上位で、架線系と中型プロセッサを組み合わせた独自の運用が発達しています。
導入を支える補助制度
機械導入には複数の補助があり、柱は「林業・木材産業成長産業化促進対策」などの国庫補助と、自治体独自の上乗せ補助です。補助率は機械価格の2分の1以内が標準で、認定林業事業体などでは優遇されます。中古機(新車の3〜6割)の市場も活発で、機械化の裾野を広げています。経済性は、燃料・整備費とオペレーター人件費まで含めると純利益ベースの回収に数年〜10年かかるのが現実的なところです。
次のフロンティアはICTと自動化
2020年代の焦点はICT連携です。GNSS(衛星測位)を積んだハーベスタが伐倒位置を自動で記録し、伐倒木の樹種・直径・長さを測って仕分けを最適化する。作業データはタブレットから即座にクラウドへ送られ、製材所までつながっていく――そんな運用が普及段階に入っています。森林研究・整備機構(FFPRI)などの実証では、ICT機能を積んだ機械の生産性向上が確認されており、スマート林業を後押しする国の事業も続いています。伐倒の遠隔操作・自動化の実証も各地で進んでいます。
残された課題と、これから
機械化率をさらに押し上げる鍵は、やはり伐倒工程です。急斜面でも動く小型ハーベスタの普及、路網整備、チェーンソー作業者からオペレーターへの転換、故障時の代替体制——どれも時間のかかる取り組みです。むしろ現実的なのは、率より稼働率を磨くこと。1台あたりの処理量を欧州の水準に近づけられれば、台数を増やさずに素材生産を伸ばせます。到達した率以上に、稼働率と工程ごとの質を上げられるかが次の局面を分けそうです。

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