【ハリギリ】Kalopanax septemlobus|北海道産Sen wood、欧米家具市場

ハリギリ(Kalopanax septemlobus)

北海道や東北の落葉広葉樹林で、太い幹に鋭いトゲをつけた大木に出会ったら、それはハリギリ(センノキ、Kalopanax septemlobus)かもしれません。コシアブラやタラノキと同じウコギ科ですが、これらの仲間が中低木〜草本ばかりのなかで、ハリギリだけが樹高25〜30mの大木に育つ異色の存在です。ケヤキに似た美しい木目を持ち、欧米の家具市場では「Sen wood」として知られる日本産の銘木でもあります。

気乾比重0.50(0.45〜0.55)中重量樹高25-30m胸高直径60-100cm大径木に成長葉長20-40cm掌状5-9裂大型葉主用途ツキ板家具・内装・彫刻欧米名 Sen wood
図1:ハリギリ/センノキの主要スペック
目次

たくさんの名前を持つ木

「ハリギリ(針桐)」は若枝の鋭いトゲ(針)と桐に似た大きな葉から。「センノキ(栓木)」は古くから木工で栓やくさびに使われたことに由来する北海道での呼び名です。木目がケヤキに似るので「ニセケヤキ」、団扇のような大型葉から「テングノハウチワ」、アイヌ語では「アユシニ(トゲのある木)」。欧米では「Sen wood」。ひとつの木にこれだけ名前があるのは、それだけ各地でいろいろに使われてきた証です。

葉は掌状に5〜9裂(典型は7裂)で長さ20〜40cmと大きく、秋には鮮やかな黄〜橙色に黄葉します。最大の見分けどころは若枝のトゲ。長さ5〜10mmの太く鋭いトゲが密生しますが、幹が太る成木になると目立たなくなります。

ハリギリの若枝に並ぶ鋭いトゲのクローズアップ
ハリギリの若枝に密生する鋭いトゲ。名前の由来にもなった最大の識別点で、幹が太る成木になると目立たなくなる。写真: Kalopanax septemlobus kz06 by Krzysztof Ziarnek, Kenraiz / CC BY 4.0, via Wikimedia Commons(リサイズのみ・内容の改変なし)

「Sen wood」として世界へ

北海道・東北のハリギリ材は、明治期からすでに欧米へ輸出されていました。国産材が輸入超過だった時代にあって、ミズナラと並ぶ数少ない輸出材のひとつで、緻密で美しい木目、適度な硬さ、加工のしやすさ、ケヤキに似た暖色の心材が評価され、「Sen wood」「Castor Aralia」の名でアメリカ市場でも名の知れた輸出材でした。今も北米・欧州・中国の高級家具メーカーが日本産Sen woodを使い続けています。

材は気乾比重0.45〜0.55の中重量・中硬度で、環孔材ならではのケヤキ・タモに似たくっきりした木目を持ちます。心材は淡褐色〜赤褐色で、辺材の淡黄白色との境界が明瞭。切削も接着も塗装もしやすく、家具職人にとって「扱いやすい銘木」です。資源が豊富だった時代には下駄材としても広く使われ、良質の大径木は框(かまち)や看板、和太鼓の胴といった高級用途にも使われてきました。国内では飛騨高山や旭川の家具産地でも銘木材として使われます。

ケヤキとの見分け

「ニセケヤキ」と呼ばれるほど木目が似ますが、植物としてはまったくの別物(ハリギリはウコギ科、ケヤキはニレ科)です。立木なら、ハリギリは掌状の大型葉で若枝にトゲ、ケヤキは単葉でトゲなし。樹皮もハリギリは縦に深く裂け、ケヤキは鱗片状に剥がれます。木材ではハリギリの心材のほうが明るく軽め(比重0.50 対 ケヤキ0.69)なので区別できます。

掌状に裂けたハリギリの葉
掌状に5〜9裂するハリギリの葉。長さ20〜40cmと大きく、団扇のような輪郭から「テングノハウチワ」とも呼ばれる。写真: Kalopanax septemlobus kz05 by Krzysztof Ziarnek, Kenraiz / CC BY 4.0, via Wikimedia Commons(リサイズのみ・内容の改変なし)

春は山菜、樹皮は薬にも

春の若芽は、コシアブラ・タラの芽と並ぶ高級山菜です。鋭いトゲを避けながら新芽だけを摘むので、革手袋と枝切りバサミが必要。やや苦みとクセが強いため、塩茹でして水にさらすアク抜きをしてから天ぷらやお浸し、炒め物にします。流通量は少なめで、直売所や道の駅では季節限定で並びます。

樹皮を乾燥した生薬は「海桐皮(かいとうひ)」と呼ばれ、リウマチ・関節痛・腰痛などに使われてきました。中国・北宋期の本草書『開宝本草』(974年頃編纂)に記載があり、日本でも江戸期の本草書に記録されています。木材・山菜・薬と、ひとつの木がいくつもの顔を持っているのがこの樹種の面白さです。

なぜトゲがあるのか

若木のうちにシカや牛などの草食動物から葉を守るための防御と考えられています。樹が高く育って葉が動物の口の届かない高さに達すると、トゲは役目を終えて目立たなくなります。タラノキやサンショウ、ハリエンジュなど、若いうちにトゲで身を守る木は珍しくありません。北海道のハリギリはエゾシカの食害圧が高い環境で育つため、本州産より太く鋭いトゲを持つとも言われます。

よくある質問

庭木として育てられますか?

樹高25〜30mに育つ大木で若枝にトゲもあるので、住宅の庭にはやや大きすぎます。広い敷地や公園、神社境内、記念樹向きです。秋の黄葉、夏の白い花(ミツバチの蜜源にもなります)、独特の樹皮と、観賞価値は高い木です。トゲは成木になれば目立たなくなります。

若芽はどう食べますか?

4月下旬〜6月上旬の5〜10cmの若芽を採り、塩茹で→水さらしでアクを抜いてから、天ぷら、お浸し、炒め物などに。コシアブラやタラの芽より苦みが強いので、アク抜きを丁寧にするのがコツです。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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