日本の森林面積は約2,505万ha。国土のおよそ66%を占め、これはフィンランドやスウェーデンに次ぐ世界でも有数の高さです。先進工業国でこれだけ森が多い国は珍しい。その2,500万haがどう成り立っているのかを押さえておくと、林業政策も、防災も、生物多様性も、カーボンクレジットも、すべて見通しがよくなります。まずは全体像から見ていきましょう。

人工林・天然林・無立木地の内訳
2,505万haを大きく3つに分けると、人工林1,019万ha(41%)、天然林1,361万ha(54%)、伐採跡地や竹林などの無立木地等126万ha(5%)になります。
人工林は、戦後の拡大造林政策(1950〜1970年代)で植えられた針葉樹が中心です。スギが約448万haと最も多く人工林の44%を占め、続いてヒノキ260万ha、トドマツ・エゾマツ114万ha、カラマツ103万ha、アカマツ・クロマツ86万ha。天然林はブナ・ナラ・カエデといった広葉樹が主体で、水源涵養や生物多様性の観点から国立公園・保護林として守られているエリアが多くを占めます。無立木地のうち再造林されない伐採跡地は近年問題視され、林野庁は再造林率を現状の約3割から6割へ引き上げる目標を掲げています。
森林率は地域差が大きく、高知84%、岐阜81%、長野79%が上位、逆に大阪31%、茨城・千葉が3割前後と都市県で低くなります。
誰が森を持っているのか:所有構造
森の所有形態は、伐採判断も利益の行き先も左右する重要な軸です。大きくは国有林765万ha(31%)と民有林1,740万ha(69%)に分かれ、民有林はさらに公有林(都道府県・市町村)238万haと私有林1,502万haに分かれます。
国有林は林野庁直轄で、北海道(295万ha)や東北・中部山岳・九州山岳に集中し、全国7つの森林管理局が運営しています。問題は私有林です。所有者は約86万人、一戸あたり平均2.2haしかなく、10ha未満の小規模所有者が約74%を占める分散構造になっています。これが経営効率を阻む最大の要因です。さらに、所有者が都市部に住んで森に関心を持たない「不在村地主」が推計250万ha超、相続登記が済まず所有者がわからない森林が約20万haあるとされます。こうした森を市町村が仲介し、意欲ある経営者へ集約する仕組みが2019年施行の森林経営管理制度で、2024年からの相続登記義務化と合わせて改善が期待されています。
蓄積と成長量:使いきれない資源
森にどれだけ木が貯まっているかを示すのが蓄積量で、現在55.6億m³(人工林33.1億m³、天然林20.7億m³ほか)。1966年は18.9億m³だったので、約50年で2.9倍に増えた計算です。戦後造林の成果がそのまま積み上がっています。
注目したいのは「使いきれていない」点です。年間の成長量は約7,000万m³あるのに、実際に伐り出される素材生産量は2,140万m³。差し引き約4,860万m³が毎年森の中に積み増されていく計算で、利用率は3割ほどにとどまります。蓄積が増えること自体は資源として心強いのですが、過熟林化で間伐が遅れると林床に光が届かず、下層植生が衰えて生物多様性が下がる懸念もあります。適切に伐って使うことが、じつは森の健全さにも欠かせません。人工林の半分以上はすでに主伐に適した林齢(46年生以上)に達していて、いまが伐って植え直す好機なのです。なお森林の年間CO2吸収量は約4,400万t-CO2(環境省2023)で、温室効果ガス削減目標の達成にもこの吸収源の維持が欠かせません。
森林を支える制度と多面的な価値
森林は森林法に基づき、全国森林計画から市町村森林整備計画、所有者がつくる森林経営計画まで階層的に管理されます。各森林の樹種・林齢・蓄積は都道府県の「森林簿」に記録され、近年は航空レーザー(LiDAR)データと連動した森林GISによる資源解析が急速に普及しました。水源涵養や土砂流出防備などの公益目的で指定される保安林は約1,225万ha、全森林の約49%にのぼります。
森林の価値は木材生産だけではありません。日本学術会議が2001年に金額換算した評価では、水源涵養・土砂流出防備・保健休養などの多面的機能は年間総額70兆円規模と試算されています。さらに2024年度から本格徴収が始まった森林環境税(1人年1,000円、約620億円規模)が、森林整備や木材利用、担い手育成の財源として市町村・都道府県に配分されています。
担い手と今後の方向
森を扱う林業就業者は2020年で約4.4万人。1980年の14.7万人から大きく減りました。平均年齢は約52歳と高齢化が進む一方、「緑の雇用」事業などで新規参入が年2,500〜3,000人規模あり、若返りと女性参入も少しずつ進んでいます。林業は労働災害発生率が全産業で最も高い水準にあるため、安全教育と機械化の両立が課題です。
こうした構造を踏まえた政策の軸は、(1) 主伐後の再造林率を3割から6割へ引き上げる主伐再造林の推進(エリートツリーやコンテナ苗、低密度植栽でコストを下げる)、(2) 高性能林業機械・ドローン・LiDARを活かして素材生産費を3割削減するスマート林業、(3) 公共建築の木造化などによる国産材自給率の向上(2022年約42%→2030年代に50%超を目標)、(4) 保安林整備による防災・国土保全、(5) 天然林・保護区の保全と「30 by 30」目標、(6) 森林由来J-クレジットによるカーボン価値の市場化、です。膨大に積み上がった資源を循環させながら、防災・生態・脱炭素の価値を両立させていけるかが問われています。
よくある疑問
人工林と天然林は何が違うの?
人工林は人が植えて育てた森、天然林は種子の落下や萌芽で自然に生えた森です。人工林はスギ・ヒノキといった針葉樹の単純林が中心なのに対し、天然林は広葉樹の混交林が主体になります。日本の人工林1,019万haの44%はスギで、これは戦後の拡大造林の名残です。
私有林の「10ha未満が74%」って、どういう問題があるの?
私有林の所有者の約74%が10ha未満の小規模というのは、一人ひとりが持つ山が小さく、まとまった施業がしづらいということです。所有が分散していると路網整備も伐採も非効率になり、採算が合いにくくなります。そこで市町村が仲介して意欲ある経営者へ集約する森林経営管理制度(2019年施行)が動いています。
蓄積が増えているのに、なぜ「使え」と言われるの?
年間成長量7,000万m³に対して伐られているのは2,140万m³だけで、利用率は3割ほど。残りは森に積み上がり続けています。木が増えるのは良いことですが、人工林の半分以上が伐りごろを過ぎてもそのままだと、間伐遅れで林内が暗くなり下層の植生や生物多様性が衰えます。伐って植え直し、若い森との循環をつくることが、資源活用と森の健全さの両面で大切なのです。
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出典・参考:林野庁「森林資源の現況」令和4年3月末時点/林野庁「森林・林業白書」令和5年版/林野庁「2020年農林業センサス(林業編)」/環境省「日本国温室効果ガスインベントリ報告書」2023/日本学術会議「農業及び森林の多面的な機能の評価」2001/FAO Global Forest Resources Assessment 2020

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