都道府県別森林率トップ20|高知84%・岐阜81%・島根78%の地理的背景

都道府県別森林率トップ20 | Forest Eight

都道府県別の森林率(県土に占める森林面積の割合)を並べると、トップは高知県の84%。続いて岐阜81%、島根・山梨78%、奈良・和歌山・岩手77%、長野・宮崎76%と、四国・中部山岳・中国地方・東北の山岳県がずらりと上位に並びます。逆に大阪30%、千葉30%、茨城31%といった関東平野・近畿の都市圏は低い。つまり森林率の地域差は、地形と都市開発の歴史でほぼ決まっているのです。ここではトップ20県を見ながら、その地理的背景と、林業の生産規模が必ずしも森林率と一致しない理由を整理します。

目次

森林率トップ20の一覧

順位 都道府県 森林率 森林面積 人工林率
1 高知県 84% 59万ha 65%
2 岐阜県 81% 86万ha 45%
3 島根県 78% 52万ha 39%
4 山梨県 78% 35万ha 42%
5 奈良県 77% 28万ha 61%
6 和歌山県 77% 36万ha 61%
7 岩手県 77% 117万ha 42%
8 長野県 76% 106万ha 42%
9 宮崎県 76% 58万ha 59%
10 徳島県 75% 31万ha 61%
11 京都府 74% 34万ha 38%
12 福井県 74% 31万ha 30%
13 広島県 72% 61万ha 23%
14 山形県 72% 67万ha 28%
15 大分県 71% 45万ha 52%
16 愛媛県 71% 40万ha 62%
17 福島県 71% 97万ha 36%
18 秋田県 71% 82万ha 47%
19 三重県 64% 37万ha 60%
20 熊本県 62% 46万ha 61%

トップ3を支える地形と歴史

森林率トップ3の高知84%、岐阜81%、島根78%は、いずれも県土の8割前後を山が占める典型的な山岳県です。高知は四国山地の南斜面に位置し、平地が沿岸部にわずかしかありません。岐阜は飛騨山脈や両白山地に囲まれた内陸県で急傾斜地が大半。島根も中国山地と日本海に挟まれ、平野部が極端に少ない地形です。

森林率トップ10の都道府県 高知84%・岐阜81%・島根78%等の森林率上位10県を棒グラフで比較 都道府県別森林率トップ10(%) 高知 84% 岐阜 81% 島根 78% 山梨 78% 奈良 77% 和歌山 77% 岩手 77% 長野 76% 宮崎 76% 高知84%は全国唯一の80%超え。山岳地形と平地不足が森林率を引き上げる
図1:森林率トップ10の都道府県(出典:林野庁「都道府県別森林資源の現況」2022年)

森林率の高さは自然条件だけでなく、人為的にも支えられています。明治以降の保安林指定や国有林化、戦後の自然公園指定によって伐採・開発が抑えられてきました。高知・奈良・和歌山は紀伊山地・四国山地の保安林指定率が高く、岐阜・長野は中部山岳国立公園などの自然公園が広く、いずれも土地利用規制が森林率を維持してきた背景があります。

森林率が高い=林業が盛ん、ではない

意外に思われるかもしれませんが、森林率の高さと林業の生産規模は必ずしも一致しません。素材生産量の全国1位は宮崎県(森林率76%・9位)で年間200万m³前後。一方、森林率1位の高知県の素材生産は約60万m³で全国12〜13位、森林率5位の奈良県にいたっては約15万m³で全国30位前後にとどまります。

森林率と素材生産量の散布 主要県の森林率と素材生産量を散布図で示し、森林率が高くても素材生産が小さい県の存在を可視化 森林率と素材生産量の関係(主要県) 200 150 100 50 0 素材生産(万m³) 60% 70% 75% 85% 森林率(%)→ 宮崎(76%) 北海道(71%) 岩手(77%) 秋田(71%) 大分(71%) 高知(84%) 奈良(77%) 岐阜(81%) 森林率と素材生産は弱い正の相関のみ。森林率1位の高知は素材生産中位、森林率76%の宮崎が1位
図2:森林率と素材生産量の関係(出典:林野庁「木材需給表」2023年・「都道府県別森林資源の現況」2022年)

なぜズレるのか。理由は4つあります。(1) 人工林率の差——天然林が多い県は伐って売る木が少ない。(2) 路網密度と林業就業者の差——林道が乏しいと搬出コストがかさむ。(3) 林業事業体の集約度——組織化された県ほど効率的に伐れる。(4) 森林の利用区分——保安林や自然公園が多いと伐採が制限される。高知は森林率84%・人工林率65%と条件は揃っていますが、地形が急峻で搬出コストが高く、生産は中位どまり。対する宮崎は地形が比較的緩やかで路網整備が進み、大型製材工場も集積しているため、全国1位の生産を維持できているのです。

人工林率で見ると、トップ20の県は3つのタイプに分かれます。奈良・和歌山・徳島・愛媛・熊本・高知のように人工林率60%超の「林業先進県」は、紀伊・四国・九州の伝統的林業地。岐阜・山梨・長野・岩手のように40〜55%の「中位群」は戦後造林の主舞台。そして山形・広島・福井のように30%以下の県は、森林率は高くても天然林が主体で、林業生産より生物多様性や観光資源としての価値が大きい構造です。

森林率はほぼ横ばいで推移

都道府県別の森林率は、過去30年でほぼ横ばい〜わずかに減少という安定した動きです。全国平均でも1〜2ポイントの低下にとどまり、急激な森林減少は起きていません。関東・近畿の都市圏で森林面積が2〜5%ほど微減した一方、東北・四国・九州の山間部は安定しています。

森林率トップ県の経年変化1990-2022 高知・岐阜・島根・全国平均の森林率を年次推移として折れ線グラフで示す 森林率の経年変化1990-2022(%) 85 75 65 55 1990 2000 2010 2022 高知84% 岐阜81% 島根78% 全国66.6% 過去30年間で大きな変動はなく、上位県は80%前後・全国平均66%前後で安定推移
図3:森林率トップ県と全国平均の経年変化(出典:林野庁「都道府県別森林資源の現況」歴年版)

この安定は、都市計画法・農業振興地域・自然公園・保安林といった土地利用規制が機能している結果です。ただし数値に表れない注意点もあります。伐採後に植え直されない無立木地(伐採跡地)は1990年代以降じわじわ増えていて、形式上は「森林」でも立木のない区域が広がりつつあります。森林率という量の指標が保たれていても、再造林率の改善と無立木地の解消をしなければ、森の中身(質)は劣化しかねません。

森林率と水・暮らしのつながり

森林率の高い山岳県は、保安林の指定率も高い傾向があります。全国の保安林は約1,222万ha(森林面積の49%)ですが、高知約60%、奈良約58%、和歌山約55%と、紀伊・四国の山岳県では森林の半分以上が保安林です。そのうち約9割が水源涵養林。つまり上流の山岳県は、下流の都市部の水を支える「公益機能の供給県」でもあるのです。森林率の地域偏在は、水資源や治山といった生態系サービスの地域偏在と表裏一体になっています。

もうひとつ見逃せないのが人口との関係です。森林率上位県の多くは人口減少率でも全国上位で、2010〜2020年の減少率は高知-9.2%、徳島-9.4%、和歌山-9.1%、島根-7.5%と、全国平均(-1.5%)を大きく上回ります。地形的に平地が少なく人口が集まりにくいことが、森林率の高さと過疎の両方を生んでいるわけです。これらの県では林業就業者の確保が県政の中核課題で、森林環境譲与税や地方創生交付金、移住定住支援を組み合わせた総合的な取り組みが求められています。

よくある疑問

森林率と林業生産は同じ意味?

別物です。森林率は県土に占める森林面積の割合、林業生産は素材生産量や林業就業者の活発さを示します。森林率1位の高知が素材生産では中位、森林率9位の宮崎が生産1位、というように両者は一致しません。森林がたくさんあることと、それを使いこなせていることは別の話なのです。

森林率1位の高知と生産1位の宮崎で何が違うの?

高知は森林率84%・人工林率65%でも年間素材生産は約60万m³、宮崎は森林率76%・人工林率59%で約200万m³。差を生むのは、地形の傾斜(高知は急峻、宮崎は比較的緩やか)、路網密度(宮崎は高密度路網で搬出コストが低い)、大型製材工場の集積(宮崎は年5万m³級工場が複数)です。資源があっても、それを安く運び出して加工する仕組みがないと生産は伸びません。

森林率はこれから増える?減る?

過去30年は全国平均で1〜2ポイントの微減と、ほぼ横ばいです。自然公園・保安林・農業振興地域といった土地利用規制が効いている限り、当面は現水準で維持される見通しです。ただし伐採後に植え直されない無立木地の増加は、森林率の数字に表れない質的な劣化として注視が必要です。

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出典・参考:林野庁「森林資源の現況」国土地理院「全国都道府県市区町村別面積調」林野庁「森林・林業統計要覧」環境省「自然公園」

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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