「日本の木はあまり使われていない」——そんなイメージを持つ方は多いかもしれません。けれど木材自給率は2023年に43.0%と過去最高を記録し、2024年も42.5%。2002年の過去最低18.8%から、20年あまりで2倍超に回復しました。本稿では、この回復が何によって起きたのか、そして2030年の50%目標にどれだけ近いのかを、データで読み解きます。
94%から18.8%、そして回復へ
戦後復興期の1955年、日本の木材自給率は約94.5%もありました。それが1964年の丸太輸入完全自由化を皮切りに急落し、1970年に約45%、1980年に約31.7%、2002年には18.8%という底を打ちます。安い輸入材が住宅需要を一手に引き受けた時代でした。そこから2023年の43.0%まで、長い回復トレンドが続いています。
| 年 | 自給率 | 背景・転換点 |
|---|---|---|
| 1955年 | 94.5% | 戦後復興期、なお国産優位 |
| 1960年 | 86.7% | 木材輸入の自由化が本格化 |
| 1970年 | 45.0% | 高度成長で住宅需要爆発、輸入急増 |
| 1980年 | 31.7% | 輸入材依存が固定化 |
| 2002年 | 18.8% | 過去最低、戦後造林が伐期未到来 |
| 2016年 | 34.8% | 戦後造林が本格伐期に、回復が加速 |
| 2022年 | 40.7% | 4割台に到達 |
| 2023年 | 43.0% | 過去最高。円安・ロシア材停止が複合 |
| 2024年 | 42.5% | わずかに反落、なお4割台を維持 |
数字を読むうえで一つ注意点があります。過去のデータには、燃料材を含む「木材自給率」と、製材・合板・パルプなど用材だけを見る「用材自給率」の2つがあり、計算範囲が違います。年代をまたいで比較するときは、どちらのベースかを意識して読むのが正解です。

用途で全然違う「平均値」の正体
「4割」は一枚岩の数字ではなく、用途ごとにまったく異なる自給率を足し合わせた加重平均です。林野庁の木材需給表は、大きく「建築用材等」と「非建築用材等」に分けて自給率を示しています。
| 区分 | 自給率(2023年) | 自給率(2024年) |
|---|---|---|
| 建築用材等(製材・合板など) | 55.3% | 52.9% |
| 非建築用材等(パルプ・チップ、燃料など) | 36.0% | 36.5% |
| 木材全体 | 43.0% | 42.5% |
さらに細かく見ると、合板用材はすでに9割前後が国産スギに置き換わり、製材用材も過半が国産です。一方でパルプ・チップ用材は2割前後と低く、輸入チップに大きく頼ります。燃料材は、間伐材や林地残材に由来する国産分と、輸入ペレット・PKSがせめぎ合っています。このバラつきがすべてで、なかでも合板の国産化こそが、過去20年の回復を牽引してきました。
回復を生んだ3つの力
底値18.8%から43%前後への回復は、主に3つの要因で説明できます。
① 合板の国産化。かつて合板はラワンなど南洋材の丸太に頼っていました。それが2000年代の南洋材輸出規制と、スギ合板の技術開発(接着耐久性の向上、構造用合板としての規格化)が同時に進み、国産材を原料とする合板生産が一気に立ち上がります。国内の合板工場が使う原木の国産率は、2000年代のほぼゼロから2023年には94.5%へ。これが最大のインパクトでした(輸入合板を分母に含む需給表ベースの合板用材自給率は52%)。
② 燃料材の急増。2012年のFIT(固定価格買取)制度導入でバイオマス発電向け需要が急拡大し、燃料材消費は2014年の約410万m³から近年は約2,000万m³へとおよそ5倍に。ただし需給表の「燃料材」区分には輸入のPKS・ペレットも含まれ、国産分の自給率は6割前後です。
③ 製材の国産シフト。こちらは緩やかです。住宅着工戸数は1973年の191万戸から2024年は80万戸前後まで減り、製材用材の消費量自体が縮小しました。それでもプレカット工場の大型化、スギ・ヒノキを使う構造用集成材の普及、中大規模木造でのCLT活用などにより、自給率は35%から55%へ。絶対量は減りつつ国産比率は上がる、という関係です。
2035年 自給率49%へ、カギは製材用材
2026年に見直された森林・林業基本計画は、2035年に国産材の利用量を4,200万m³(2024年比+約700万m³)へ引き上げ、木材自給率を49%程度まで高める姿を描いています。目標年は旧計画の2030年から5年延ばされ、人口減・住宅市場の縮小を織り込んで総需要の見通しも8,500万m³へ下方修正されました。現状の4割強からどこを伸ばせば届くのか——用途別に現状を並べると、論点がはっきりします。
国内の合板工場が使う原木はすでに9割超が国産、燃料材も国産主体で、ここからの伸びしろは限られます。残された主戦場は製材用材の国産比率をもう一段上げること。そのためには国産製材工場の大型化、CLT・集成材を国産材で作れるようにすること、プレカット工場との連携強化が欠かせません。輸入製材の安定供給契約が根づくなか、価格・品質・供給安定の3つを同時に高めていく必要があり、相応の集中投資が前提になります。
数字の裏にある「質」の課題
最後に、自給率の数字を額面どおりに喜びすぎないための視点を一つ。住宅着工の減少が分母を小さくして自給率を押し上げている面があり、また燃料材は数値を上げる一方で付加価値が低く、山主の手取りは製材用材よりずっと小さくなります。つまり、量(自給率)と価値(林業収益)は必ずしも一致しません。
これからの目標は、単に50%という数字に届くことではなく、CLTや集成材、内装材といった付加価値の高い用途へ国産材をシフトさせ、「量」と「価値」を同時に伸ばすこと。そこに日本林業の持続性がかかっています。
出典・参考
- 農林水産省「木材需給表」
- 林野庁「木材の利用の促進について」
- 林野庁「森林・林業基本計画」(2026年5月変更)
- 林政ニュース等による木材需給表の解説
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よくある質問
自給率を100%にしないのはなぜ?
広葉樹や南洋材など国内で供給しにくい樹種があること、輸入が需給の調整弁になること、貿易上の友好関係などから、100%自給は経済合理性と噛み合いません。5〜6割程度がバランス点と考えられています。
国産材は輸入材より高いのですか?
同じ樹種・等級で比べると、国産スギは北米産SPFとおおむね同水準で、為替次第で逆転もします。集成材ラミナ用では国産カラマツが価格優位を持つ場面もあります。
建築用材と非建築用材で自給率が大きく違うのはなぜ?
建築用材(製材・合板)は国産スギ・ヒノキが構造材やスギ合板として広く使われ、自給率が過半に達しています。一方、非建築用材(パルプ・チップ、燃料など)は輸入チップや輸入ペレット・PKSが大量に使われるため、自給率は3割台にとどまります。

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