都道府県別素材生産量トップ10|北海道・宮崎・岩手の構造比較

素材生産量北海道が首位に

「林業がさかんな県は?」と聞かれて、多くの人は九州や東北を思い浮かべるかもしれません。ところが2022年、長年トップだった宮崎県を抜いて素材生産量の全国1位になったのは北海道でした。宮崎は1991年から30年以上1位を守ってきたので、これは大きな順位交代です。全国の素材生産量は約2,170万m³で戦後最高水準。その内訳を見ると、上位3道県で全国の約3割、トップ10で約6割を占める、かなり偏った地図が浮かび上がります。この記事では、産地ごとに何が違うのか──樹種、機械化、地域経済とのつながり──を整理します。

この記事の要点

  • 全国の素材生産量は約2,170万m³(2022年)で戦後最高水準。トップ10道県で約6割を占める。
  • 1位は北海道(約334万m³)カラマツトドマツが主役で、本州・九州のスギ中心とは構造が異なる。
  • 2位宮崎(約203万m³)は九州スギの中核。3位は岩手(約146万m³)
北海道 334 万m³(約15%) カラマツ・トドマツ 人工林 約100万ha 宮崎 203 万m³(約9%) 九州スギ 30年以上1位だった 岩手 146 万m³(約7%) スギ・アカマツ 東北最大の産地 全国 2,170 万m³(2022) 戦後最高水準 TOP10で約6割
図1:都道府県別素材生産量TOP3(出典:農林水産省「令和4年木材統計」)
目次

2022年の都道府県別トップ10

順位 道県 素材生産量(万m³) 主な樹種
1 北海道 約334 カラマツ・トドマツ
2 宮崎 約203 スギ
3 岩手 約146 スギ・アカマツ
4 秋田 約122 スギ
5 大分 約120 スギ・ヒノキ
6 青森 約98 スギ・ヒバ
7 熊本 約96 スギ・ヒノキ
8 福島 約95 スギ・アカマツ
9 鹿児島 約74 スギ
10 宮城 約69 スギ

トップ10のうち、北海道を除く9道県は東北4県と九州4県、それに宮城。北海道・東北・九州の3地域で全国の6割前後を占める、地理的にはっきり偏った構造です。

1位・北海道──カラマツとトドマツの大規模林業

北海道の素材生産量は約334万m³で全国シェアはおよそ15%。本州・九州のスギ・ヒノキとは樹種がまったく違い、カラマツ・トドマツといった針葉樹が主役です。明治期からの計画的な造林でできた人工林は約100万haにのぼり、いま樹齢50〜80年の伐りごろを大規模に迎えています。

北海道が強いもう一つの理由が機械化です。ハーベスタやフォワーダといった高性能機械の導入が進み、緩やかな地形を活かした車両系の作業システムで高い生産性を出しています。強度の高い道産カラマツは、東北・関東のCLT・集成材・合板工場の主要原料として本州へ移出され、近年その存在感を一段と高めています。

2位・宮崎、そして九州スギの産地

宮崎県は約203万m³で全国2位。1991年から2021年まで30年連続で素材生産量1位を守ってきた、九州を代表する林業県です。飫肥スギ・耳川スギといった九州独自の品種が、温暖多雨な気候のもとで比較的短い期間に良質材を育てます。森林経営計画にもとづく計画的・集約的な生産が県全体で根づいているのが強みで、志布志港経由の木材輸出の拠点にもなっています。

5位の大分県(約120万m³)は、日田林業地を中心とする産地です。日田スギや耶馬渓ヒノキの良質材で知られ、大規模製材所と地元工務店の連携が地域経済を支えています。宮崎・大分・熊本・鹿児島の九州4県を合わせると500万m³前後に達します。

3位以下・東北勢──スギとマツの産地

3位の岩手(約146万m³)は南部アカマツ・スギが中心で、県森連を軸に集約化が進んでいます。4位の秋田(約122万m³)は能代の製材所群・大館の集成材工場が県北に集積。8位の福島(約95万m³)は会津・中通り・浜通りの3地域で林業構造が異なり、震災復興とともに再構築が進みました。東北6県を合わせるとおよそ550万m³。北海道・東北・九州の3地域で全国の約6割を占めます。

偏在を生む背景──樹種・事業者・担い手

こうした偏りは、戦後の造林政策の名残でもあります。スギ・ヒノキは1950〜70年代の拡大造林で九州・四国・東北に広く植えられ、それが今の主要産地になりました。北海道のカラマツ・トドマツは明治期以降の開拓造林に由来します。つまり「どこで林業がさかんか」は、半世紀以上前に誰が何を植えたかでかなり決まっているわけです。

担い手の側を見ると、伐採・搬出を担う素材生産の事業体は全国に多数ありますが、年間素材生産量が1万m³を超える認定林業事業体など中堅以上の事業体に生産が集中しています。林業就業者は約4.4万人で、北海道や東北・九州の主要産地に多くが集まっています。人手が減りながら生産量が増えているのは、機械化が下支えしているからです。主要産地では林業・木材産業が地域経済の柱のひとつになっています。

これからの10年──カギは中堅地域

2026年に改定された森林・林業基本計画は、2035年の国産材利用量を4,200万m³と見込んでいます。2022年の約2,170万m³から大きな上積みが必要な目標です。日本の森林蓄積は約56億m³で、近年もおおむね年6,000万m³前後のペースで増え続けており、伐採を増やす余地は資源の面では十分にあります。

達成のカギを握るのは、長野・岐阜・愛媛・高知・茨城・栃木といった中堅地域です。これらの県では人工林がちょうど伐りごろを迎えつつあり、路網整備と機械導入、人材育成が進めば生産量の拡大が見込まれます。木曽ヒノキ、東濃ヒノキ、久万のスギ・ヒノキなど、地域固有の銘木をどう活かすか。樹種・立地・労働力に応じた個別の成長戦略が、これからの10年を左右します。

よくある質問

Q. なぜ北海道が宮崎を抜いて1位になったのですか?

人工林が伐採適齢期を大規模に迎えたこと、緩やかな地形を活かした機械化による高い生産性、そして道産カラマツの本州への移出拡大が重なった結果です。2022年に、30年以上1位だった宮崎を抜きました。一方の宮崎も、九州スギの良質材生産と木材輸出の拠点という強みは変わっていません。

Q. 人手が減っているのに、なぜ生産量は増えているのですか?

機械化のおかげです。林業就業者は30年で半減しましたが、ハーベスタ・フォワーダを組み合わせた作業システムにより、1人あたりの生産性が大きく伸びました。とくに北海道や九州の中堅以上の事業体で、この効率化が進んでいます。

Q. これ以上、伐採を増やして大丈夫なのですか?

資源量の面では余裕があります。森林蓄積は約56億m³で、いまも毎年増え続けています。素材生産量は蓄積の増加量を下回っており、持続可能な範囲で増産の余地があります。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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