LiDAR点群解析|樹高・本数・材積の自動推定

LiDAR点群解析 | Forest Eight

森を上空からレーザーで測ると、点の集まり(点群)というかたちで膨大なデータが手に入ります。でも、点の山をそのまま眺めても木の高さや本数はわかりません。そこから「この林は1haあたり何本、平均樹高は何m、材積はどれくらい」という使える情報を引き出すのが、LiDAR点群解析です。航空レーザ測量(ALS)が「データを集める」工程だとすれば、こちらは「集めたデータを読み解く」工程。地味ですが、ここが林業のデジタル化の心臓部だったりします。樹高は地上計測との誤差0.5〜1.0m、材積の推定精度は80〜95%。かつては人が山を歩いて一本ずつ測っていた仕事が、いまやコンピュータの中で自動化されつつあるんです。

目次

点の山を「森の地図」に変える流れ

解析の大きな流れは、意外とシンプルな引き算から始まります。まず点群の中から地面に当たった点だけを拾い出して、地形だけのモデル(DTM)を作る。次に、樹冠のてっぺんまで含めた表面のモデル(DSM)を作る。そしてDSMからDTMを引くと、残るのは「地面からの高さ」、つまり木の高さの分布(CHM)です。このCHMが森林資源把握のいちばんの土台になります。

CHMができたら、山のピークを探すように局所的に高い点(Local Maxima)を拾っていくと、一本一本の木のてっぺんが見つかり、本数密度や樹高の分布が自動で出てきます。さらに流域解析(Watershed)などで樹冠の輪郭を切り分ければ、樹冠の広さや形まで測れる。こうして点の山が、間伐や主伐の判断に使える「森の地図」へと姿を変えていきます。

工程 やること 得られるもの
グラウンド分類 地面に当たった点を抽出(PMF・CSF等) 地表面の点群
DTM生成 地表面点から地形モデルを作成 数値地形モデル(0.5〜1m)
DSM生成 樹冠頂点を含む全点群から表面モデルを作成 数値表面モデル
CHM生成 DSM−DTMで樹冠高を算出 樹高分布マップ(1m解像度)
個立木抽出 局所最大値法で樹冠頂点を検出 本数密度・樹高分布
樹冠分割 流域解析で樹冠範囲を切り分け 樹冠面積・形状指標

高さから材積、そして本数まで

木の高さがわかったら、次は「どれくらいの木材がそこにあるのか(材積・蓄積)」を知りたくなります。ただ、上空からのレーザーでは木の幹の太さ(胸高直径)を直接は測れません。そこで使うのが「アロメトリ式」という経験式。樹冠の広さや樹高と、地上で実際に測った直径との関係をあらかじめ調べておき、その関係から直径を逆算します。樹種や地域、林齢ごとに専用の式が整備されていて、森林総合研究所(FFPRI)が標準的なものを公開しています。

こうして一本ごとの材積を出して合計すれば、1haあたりの蓄積(m³/ha)が求まります。地上で丁寧に測った値との一致度は80〜95%と、実用には十分な精度。本数密度も個立木の検出からそのまま出るので、「この林は混みすぎ、そろそろ間伐」「あの林はもう主伐期」といった判断が、現地を歩かなくてもデータで下せるようになります。

推定する指標 標準精度 求め方
樹高 RMSE 0.5〜1.0m CHMの局所最大値
胸高直径(DBH) RMSE 2〜5cm 樹冠投影面積・樹高からアロメトリ式で推定
材積・蓄積 地上比80〜95% 単木材積を集計し ha 当たりに換算
本数密度 個立木検出から算出 間伐・主伐期の判断に直結

樹種を見分けるのは機械学習の出番

ここでひとつ壁があります。LiDARは形は測れても「色」は測れないので、レーザー単独ではスギなのかヒノキなのか、樹種の判別が苦手なんです。そこで活躍するのが、人工衛星や航空機で撮ったマルチスペクトル(多波長)の画像。葉の色や反射の特性を組み合わせ、機械学習に学ばせると、樹種がぐっと見分けやすくなります。

使われる手法はランダムフォレストやサポートベクトルマシン、そして近年はU-NetやMask R-CNNといった深層学習。点群と画像をまとめて読み込ませることで、個立木の検出・樹冠の切り分け・樹種分類を一気通貫で処理でき、樹種分類精度は85〜95%にまで達します。ただし、その精度を支えるのは地道な「教師データ」──現地でGPSと写真を頼りに樹種を一本ずつ同定した、地味な積み重ねです。AIがどれだけ進歩しても、現場の足で稼いだデータの質がものを言う、というのは変わらないところですね。

現場の仕事がこう変わる

解析の最終アウトプットは、樹高マップ・蓄積マップ・本数密度マップ・樹種マップといった一連の「森林資源マップ」です。これらが現場の実務をじわじわ変えています。間伐すべき林を本数密度や蓄積から自動で抽出する、樹高と蓄積の条件を満たす主伐候補地を全域から拾い出す、高精度の地形モデルをもとに崩れにくい作業道を設計する、土砂災害のリスクを定量評価する──いずれも、これまで現地踏査と経験に頼っていた判断に、客観的で再現できる根拠を与えてくれます。

さらに、森林経営管理制度の意向調査では、所有者ごとに「あなたの山にはこれくらいの蓄積と経済価値があります」と数字で示せるようになり、集約化の話し合いの信頼の土台になります。間伐補助金や主伐再造林補助金の申請事務も、対象面積や林分のデータをそのまま使えるので大幅に楽に。最近では森林由来のJ-クレジットやTNFDといったカーボン・自然関連の算定にも、第三者が検証できるエビデンスとして使われ始めています。

上空だけじゃない、地上LiDARという相棒

ここまでは上空からの計測を中心に話してきましたが、地上に三脚を据えて測る「地上LiDAR(TLS)」も別の強みを持っています。こちらは1本の木で1,000万点を超える超高密度計測ができ、幹の直径を±1〜2cmで直接測れるほか、幹の形や枝葉の3次元構造まで再現できます。エリートツリーの試験植栽地で毎木調査を高速化したり、屋久杉や神社の神木のような銘木を3Dで記録して災害や経年変化に備えたり、といった使い方も広がっています。最近は歩きながら測れるハンディ型(SLAM)も登場し、個人の林家でも手が届くようになってきました。

広い範囲はALS、中くらいの範囲はドローンLiDAR、一本単位は地上LiDAR──スケールに応じて使い分け、組み合わせる時代です。導入コストは決して安くありませんが、従来の地上計測に比べて計測コストは5分の1〜10分の1、計測時間は10分の1〜20分の1で、精度は同等以上。中長期で見れば、十分に元の取れる投資だといえます。北欧や北米が一歩先を行くこの分野で、日本も林野庁やFFPRIを軸に急速に追い上げているところです。

よくある質問

Q. 樹高や材積の精度はどれくらい?

樹高は地上計測との誤差(RMSE)が0.5〜1.0mで十分に整合します。材積・蓄積の推定精度は80〜95%。アロメトリ式の校正と地上検証データの質が、精度を左右します。

Q. 樹種は判別できますか?

LiDAR単独では限界がありますが、マルチスペクトルの光学画像と機械学習を組み合わせれば、85〜95%の精度で判別できます。鍵は良質な教師データ(GPS・写真・樹種同定)をどれだけ集められるかです。

Q. 急傾斜地でも正確に測れますか?

急な斜面では地形モデル(DTM)の精度が落ち、樹高の推定誤差も増えがちです。補正手法や地上検証を組み合わせて精度を確保します。

Q. 処理ソフトは無料で使えますか?

FUSION(米国森林局)やlidR(Rのライブラリ)、PDALなど無料ツールが利用できます。業務用途ではArcGIS ProやLAStoolsなどが標準的に使われます。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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