森林環境譲与税の市町村配分|人口・林業就業者・私有林比率

森林環境譲与税の市町村配分 | Forest Eight

住民税の通知書を見て「森林環境税 1,000円」という見慣れない項目に気づいた方もいるかもしれません。2024年度から徴収が始まったこの税が、各地の森を守る財源になっています。その配り方を担うのが「森林環境譲与税」です。2019年に創設された地方譲与税で、2024年度の総額は約500億円規模。市町村に9割、都道府県に1割が配分されます。面白いのは配分の物差しで、山深い村にも人口の多い都市にもお金が行き渡るよう設計されている点です。ここでは、その仕組みと、市町村ごとに大きく違う配分の実態を見ていきます。

目次

なぜこの制度が生まれたのか

きっかけは、2018年に動き出した森林経営管理制度です。これは所有者が手入れできない森を市町村が引き受け、林業事業体に再委託する仕組みですが、市町村に新たな森林管理の責務を負わせるものでした。ところが当時の市町村予算では、その独自財源も専門人材も足りない。そこで国が新たに森林環境税(個人住民税の均等割に上乗せ年1,000円)を設け、その税収を譲与税として市町村・都道府県へ配る制度を組み立てたわけです。

税の徴収開始は2024年度ですが、譲与税の配分は2019年度から先行して始まりました。それまでの間は地方公共団体金融機構の準備金からの借入でまかない、2024年度以降の税収(年620億円)で段階的に返していく――いわば「先に配って後から徴収する」設計になっています。

森林環境税と森林環境譲与税の資金フロー 親税である森林環境税と子税である森林環境譲与税の関係、配分先を図示 森林環境税・森林環境譲与税の資金フロー 納税者(個人) 年1,000円×約6,200万人 市町村(徴収主体) 徴収後、国へ送付 国(特別会計:森林環境税収) 2024年度〜年620億円 市町村(90%) 約450億円/年 都道府県(10%) 約50億円/年 親税:森林環境税(2024年度〜)/子税:森林環境譲与税(2019年度〜先行配分・借入対応)。
図1:森林環境税と森林環境譲与税の資金フロー(出典:総務省「森林環境税及び森林環境譲与税」)

3つの物差しで配る

市町村への配分は、私有林人工林面積55%、林業就業者数20%、人口25%の加重平均で決まります。森林の手入れが必要な山村と、木材を消費し利用啓発を担う都市の、どちらにも資金が届くようバランスが取られているのです。

私有林人工林面積(55%)は配分の柱で、森林簿に基づき算定されます。日本の私有林人工林は約700万ha。林業県の山村ではこの指標による配分が中心になります。林業就業者数(20%)は国勢調査の林業従事者数(全国約4.4万人)に応じ、山村に集中するため面積指標とほぼ重なります。そして人口(25%)が入るのは、木材利用の促進や都市住民の森林への関心醸成も大切な政策目的とされているからです。横浜市や大阪市が配分上位に並ぶのは、この人口指標の効果です。

森林環境譲与税の配分基準と算定例 3指標の加重平均による配分計算と山村・都市の対比 配分基準の3指標と加重 私有林人工林面積 55% 就業者 20% 人口 25% 対比例:山村型と都市型の配分構造 A村(人工林5万ha・就業100人・人口5,000人)  人工林:3,800万円 就業者:80万円 人口:4万円 計:約3,880万円 B市(人工林1,000ha・就業20人・人口100万人)  人工林:80万円 就業者:16万円 人口:8,000万円 計:約8,100万円 A村は人工林指標主導、B市は人口指標主導。住民1人当たりではA村7,800円、B市81円と山村が圧倒的に大きい。
図2:森林環境譲与税の配分基準と算定例(出典:総務省「森林環境譲与税の譲与基準」)

配分額は市町村でこれだけ違う

2024年度の配分額を見ると、上位は横浜市約8.6億円、大阪市約7.0億円、名古屋市約4.8億円、札幌市約4.5億円と、人口100万都市が並びます。人口指標25%が大都市に効くためです。一方、人工林面積で見れば北海道紋別市・遠軽町、宮崎県諸塚村・椎葉村、奈良県川上村などの山村が上位ですが、絶対額では大都市の数分の1にとどまります。

市町村 配分額(2024) 人口 主導指標
横浜市 約8.6億円 377万人 人口
大阪市 約7.0億円 275万人 人口
浜松市 約3.6億円 79万人 人工林+人口
諸塚村(宮崎) 約3,000万円 1,500人 人工林
川上村(奈良) 約2,500万円 1,200人 人工林
離島の村(参考) 数百万円 数百人 最小規模

絶対額より、住民1人当たりで見ると景色が変わります。横浜市は約230円/人、大阪市は約255円/人ですが、宮崎県諸塚村や奈良県川上村では2万円/人を超え、その差はおよそ100倍。山村の小さな自治体では譲与税が予算に占める比重も高く、その使い道の設計こそが地方林政の質を直接左右します。「都市は1人あたり少額でも総額で大きく、山村は総額は小さくても1人あたり大きく」という配分思想がここに表れています。

使い道と、たまる基金

譲与税の使途は法律上「森林整備」「人材育成・担い手確保」「木材利用・普及啓発」に大別されます。2023年度の市町村実績では森林整備関連が約38%を占め、山村は境界明確化・間伐・主伐後再造林が中心、都市は公共施設の木質化や木育プログラムが中心と、地域特性に応じて自然と分かれています。森林経営管理制度との連携が核で、2024年度時点で全国市町村の82%がこの制度の実装段階に入りました。

ただし、使途自由度が高いことは諸刃の剣でもあります。2023年度の使用率(配分額に対する実支出の比率)は全国平均で約75%にとどまり、残り25%は基金として翌年度以降に持ち越されています。理由は林政専門人材の不足や事業計画の遅れなど。林野庁は「過度な基金積立は制度趣旨に反する」として原則として配分年度内の活用を促し、使途の標準分類を示すガイドラインの強化を進めています。お金は来たけれど使いこなせない、という市町村をどう支えるかが課題です。

森林環境譲与税の譲与額推移 2019年度から2030年代までの譲与額推移と税収との収支を示す 森林環境譲与税の譲与額推移(億円・概算) 2019 200 2020 2021 2022 2023 400 2024 500 2025 2026 2027 2028 600 2029 森林環境税収 約620億円/年 2024年度から税収開始。2019-2023年度は地方公共団体金融機構準備金から借入で先行配分。
図3:森林環境譲与税の譲与額推移(出典:総務省「森林環境譲与税」、財務省主計局資料)

親税の森林環境税と、県独自の税

親税の森林環境税は、市町村が個人住民税の均等割に上乗せして徴収する国税で、納税義務者は全国約6,200万人、年1,000円で税収は約620億円。徴収後はいったん国の特別会計に入り、譲与税として地方へ再配分されます。じつは2014〜2023年度に課されていた復興特別住民税(年1,000円)の後継という性格があり、住民にとって負担額は実質的に変わらない設計になっています。

ややこしいのは、これとは別に都道府県独自の森林環境税が存在することです。2003年の高知県を皮切りに、2024年時点で37道府県が年300〜1,200円程度の独自税を導入しています。国の森林環境税はこれに上乗せされる形なので、住民にとっては国+県の二重課税。そのため住民税通知書では国税分(1,000円)が独立して表示されます。

よくある質問

Q. 配分基準は何ですか?

私有林人工林面積55%、林業就業者数20%、人口25%の3指標の加重平均です。山村に有利な面積・就業者の指標と、都市に有利な人口指標を組み合わせ、双方に資金が届く設計です。住民1人当たりでは山村が圧倒的に大きく、宮崎県諸塚村などでは2万円/人を超えます。

Q. 横浜市が最大配分なのはなぜですか?

人口指標25%の影響です。人口377万人の横浜市が約8.6億円で最大。人工林面積は約700haと小規模ですが人口配分が大きいため絶対額で上位になります。ただし住民1人当たりでは約230円と少額です。

Q. 親税はいつから徴収開始ですか?

2024年度(2024年6月以降の住民税賦課時)からです。対象は個人住民税の均等割を納める約6,200万人で、年1,000円。それ以前の譲与税(2019〜2023年度)は地方公共団体金融機構準備金からの借入で先行配分され、2024年度以降の税収から段階的に償還されます。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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