【ウラジロガシ/裏白樫】Quercus salicina|葉裏白の山地カシ、結石溶解の民間薬樹種

ウラジロガシ | Forest Eight

山道を歩いていて、葉が風にひるがえった瞬間、裏側が銀白色にきらりと光る常緑樹に出会ったら──それがウラジロガシ(学名 Quercus salicina)かもしれません。和名「裏白樫」はまさにこの葉裏の白さに由来します。柳のように細長い葉(種小名 salicina は「柳のような」の意)も特徴で、平地に多いシラカシやアラカシとは違い、標高200〜1,000mの山地に棲み分けるカシです。そして何より、この木の葉を煎じたお茶は結石を溶かす民間薬として古くから飲まれてきた、ちょっと変わった経歴の持ち主です。

気乾比重0.83(0.80〜0.90)重硬・耐衝撃樹高20m(15〜20m)常緑高木葉長8-13cm(披針形)葉裏が銀白色分布北限茨城福井県以南朝鮮半島南部
図1:ウラジロガシの主要スペック(含水率15%基準・代表値)

分類はブナ科コナラ属のアカガシ亜属。シラカシ・アラカシ・アカガシ・イチイガシと並ぶ「カシ五兄弟」の一員です。葉裏が白いのは、表面に微細な蝋質の結晶(クチクラワックス)が析出しているため。これは乾燥に強く撥水性があり、風当たりの強い尾根筋という乾いた立地に適応した形質と考えられています。本州は太平洋側で茨城県、日本海側で福井県を北限に、四国・九州まで広く山地に分布します。

目次

結石を溶かすお茶、そして医薬品「ウロカルン」へ

ウラジロガシのいちばんの個性は、葉を陰干しして煎じたお茶です。江戸時代以降、腎結石・尿管結石・胆石の排出を助ける民間薬として広く飲まれ、とくに徳島県など四国の山間部では「結石が出る茶」として親しまれ、地域の特用林産物として産業化されてきました。

現代の薬理研究でも、葉の熱水抽出物がシュウ酸カルシウムの結晶化を妨げ、結石の核形成と成長を抑えることが報告されています。活性成分としてカテキン類やタンニン類、トリテルペノイドが同定されており、これを精製・規格化した医療用医薬品が「ウロカルン」(製造販売:日本新薬)です。日本薬局方にも収載され、尿路結石の排出促進薬として実際に処方されています。市販のウラジロガシ茶や健康茶も複数のメーカーから出ており、機能性表示食品として届け出られた事例もあります。葉が薬になったカシ──これがこの木を他の4種から際立たせる、いちばんの特徴です。

折れない柄、虎斑の出る材

木材としても優秀です。気乾比重0.80〜0.90(代表値0.83)の重硬材で、曲げ強度120〜140N/mm²、とくに衝撃に対する強さが際立ちます。「ウラジロガシの柄は折れない」と言われ、鍬・鋤・斧といった農具の柄、木工旋盤、刀剣の鍔などに使われてきました。放射組織が太く、鉋をかけると銀白色の「虎斑(とらふ)」と呼ばれる美しい模様が現れ、化粧材としても珍重されます。ただし乾燥が遅く狂いも大きいので、2〜3年の天然乾燥が欠かせません。流通量はシラカシ・アラカシより少なく、地域材・伝統工芸材としての利用が中心です。

アカガシ亜属5種の気乾比重比較(代表値)1.00.850.70.5アカガシ0.92ウラジロガシ0.83イチイガシ0.80シラカシ0.78アラカシ0.75
図2:アカガシ亜属5種の気乾比重比較。ウラジロガシは中位だが葉茶の薬用価値で独自ポジション

見分け方のポイント

  • 葉裏(最重要):銀白色〜白緑色。光にかざすと顕著に白く反射する。よく似たシラカシは淡緑〜やや白、アラカシは灰白色(やや暗め)、アカガシは淡緑で無毛
  • 葉形:細長い披針形(幅2〜3cm)。シラカシよりさらに細い
  • 立地:関東以南、標高200〜1,000mの山地。神社の社叢や尾根筋に多い
  • ドングリ:長さ1.8〜2.2cm、殻斗は同心円状7〜8段、受粉した翌秋に熟す2年型

神社の社叢を彩るご神木

葉裏の銀白色は「清浄」「神聖」を象徴するとされ、ウラジロガシは古くから神社の鎮守の森を構成する木として大切にされてきました。しめ縄を巻いたご神木として祀られる例が四国・九州を中心に各地に残ります。徳島県の山岳信仰では、結石を溶かす薬効と相まって「健康の樹」として参拝の対象にもなり、地域の薬草知識の中核を担ってきました。深根性で寿命が長く、樹齢300〜500年の古木も知られています。

よくある質問

ウラジロガシ茶は本当に結石に効くの?
薬理研究では、葉の抽出物がシュウ酸カルシウムの結晶化を妨げ結石形成を抑えることが報告されています。これを精製した医薬品「ウロカルン」が日本薬局方に収載され、尿路結石の排出促進薬として処方されています。ただし治療目的なら自己判断ではなく、必ず医師の診断・指導のもとで利用してください。タンニンを含むので、空腹時の大量摂取は胃を刺激することがあります。

シラカシやアラカシとどう見分ける?
葉を裏返すのが確実です。ウラジロガシは銀白色がいちばんはっきりしていて、葉も最も細い披針形。シラカシは淡緑〜やや白、アラカシは灰白色で少し暗め。分布もウラジロガシは山地寄りで、平地・里山中心の2種と棲み分けています。

庭木にできますか?
関東以南なら植えられますが、山地の木なので住宅の生垣より公園・社寺境内・別荘地向きです。樹高15〜20mになり広い場所が要ります。生垣ならシラカシ・アラカシのほうが一般的で、ウラジロガシは記念樹・景観樹としての利用が主流です。

葉茶はどう作る?
夏〜秋に成熟葉を採り、水洗いして2〜4週間陰干し、刻んで煎じます(葉10g/水500mL/弱火30分が目安)。市販のティーバッグや粉末なら手軽です。1日200〜400mLが一般的な目安ですが、医薬品ではないので飲みすぎは避けましょう。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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