林業で働く女性は、2020年の国勢調査で約2,600人。就業者全体に占める割合は6.0%で、全産業平均の44.5%と比べると7分の1ほどの水準にとどまります。ただ、新しく林業に入ってくる層に目を移すと景色は変わります。「緑の雇用」事業の女性研修生比率は2010年の3.2%から2022年の12.5%へと約4倍に伸び、林業女子会のような支援ネットワークも全国へ広がりました。ここでは数字と現場の動きから、林業への女性参入の今を見ていきます。
少ないけれど、若い
女性就業者の年齢構成には、はっきりした特徴があります。35歳未満が27%と、男性(14%)の約2倍。逆に65歳以上は女性15%・男性25%で、女性のほうが若い世代に厚みがあります。男性就業者の高齢化が進むなか、女性の参入はそのまま労働力の若返りにつながる構造です。
しかも定着率も悪くありません。35歳未満で入った女性のおよそ65%が5年後も働き続けており、男性(約60%)を上回ります。職種で見ると、女性は造林・下刈・苗木育成や管理事務の比率が高め。なかでも苗木育成は重い物を扱う場面が少なく、コンテナ苗や大型育苗ハウスの導入が進んだ現場では女性比率が15〜20%に達する例も出ています。
機械化が、参入のハードルを下げた
女性が増えてきた背景には、機械化の進展があります。1990年代までの林業は、チェーンソーで木を倒し、人力で集め、人力で植えるという力仕事の連続でした。それが2000年代以降、ハーベスタやフォワーダといった高性能機械が普及し、現場の物理的な負担が大きく減りました。
こうした機械の多くは、運転席に座ったままジョイスティックとモニターで操作する「キャブ式」。筋力差の影響が小さい構造です。実際、機械の種類別に女性オペレーターの比率を見ると、扱いが軽い機械ほど女性が多くなる傾向がはっきり出ています。
新規女性参入者の約35%が、研修3年目までに高性能機械の資格を取っているというデータもあります。チェーンソー作業でも、バー長30〜35cmの軽量機が普及。今後AI支援や自動運転が進めば、性差の影響はさらに小さくなっていきそうです。
「緑の雇用」と林業女子会が入口に
新規参入の主な入口が、林業労働力確保支援センターの「緑の雇用」事業です。3年間の研修制度で毎年約1,500人を採用しており、そのうち女性研修生の比率が大きく伸びてきました。研修1年目の脱落率は女性約8%・男性約12%、修了後の就業継続率も女性73%・男性68%と、いずれも女性のほうが定着しています。
もうひとつの入口が、2010年に京都で生まれた「林業女子会」です。いまでは全国に約30団体、会員総数は約1,500人。現役の従事者だけでなく、学生や移住希望者など林業に関心のある人も集まります。体験イベントやSNS発信を通じて、これまで林業に縁のなかった層へ間口を広げる役割を果たしています。長野・岐阜・京都など活動が盛んな地域では、女性比率が7〜9%と全国平均を上回っているのも、このネットワークの存在と重なります。
賃金は職種差。本当の壁は両立にある
「林業は給料が低い」というイメージがありますが、同じ職種・同じ勤続年数で比べると男女差は5%以内とわずかです。平均年収で女性が男性より約15%低く見えるのは、女性に管理事務職が多く現場手当・資格手当が乗りにくいことと、勤続年数が平均2〜3年短いことが効いています。現場職に絞れば差は4%まで縮まります。労働時間も認定事業体で女性約158時間・男性約170時間と、女性のほうがやや短い傾向です。
むしろ深刻なのは、両立の壁です。退職した女性へのアンケートでは、理由のトップが「結婚・出産・育児との両立困難」で約4割。出産で一度離れた女性のうち、林業に戻れたのは約4割にとどまります。育休取得率も管理事務職で約65%なのに対し、現場職では約25%。現場は人員に余裕がなく、日給・出来高給で休業中の所得補償が弱いことが背景にあります。男性の育休取得率が推計8%と低く、育児負担が女性に偏りがちなことも、根は同じ問題です。
2030年の目標と、これから
林野庁は「女性活躍推進プラン」で、2030年までに女性比率10%以上を掲げています。現状6.0%からの+4ポイント。新規研修生の女性比率15〜20%を保てば届く水準で、毎年の参入を200人から300人へ増やし退職率を年5%以内に抑えられれば、2030年に約4,000人・比率9〜10%に到達する計算です。支援メニューも、女性専用トイレ・更衣室の整備補助、女性用ヘルメット・ハーネスの購入補助、育休中の代替人材費補助などが揃ってきました。地域おこし協力隊を経由した参入も2015〜2022年で累計約400名にのぼり、入口は着実に多様化しています。
残る課題は、現場のトイレ・更衣室といった物理的環境、子育てと両立しにくい早朝・遠隔地の働き方、そして将来像を描くためのロールモデルの少なさです。どれも一朝一夕には解けませんが、機械化で力仕事の壁が下がり、ネットワークと制度が育ちつつある今、林業の担い手確保にとって女性活躍はもう「あれば良いもの」ではなく、中核の課題になっています。

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