森林経営計画認定面積400万ha|認定インセンティブの経済構造分析

森林経営計画認定面積 400万ha | Forest Eight

「森林経営計画」と聞いても、林業に縁のない方にはピンとこないかもしれません。ざっくり言えば、森の持ち主や森林組合が「うちの森を5年間こう手入れします」という計画を市町村に出して認めてもらう制度です。認めてもらうと補助金が手厚くなったり、税金が軽くなったりする。いわば「ちゃんと手入れする人を優遇しますよ」というしくみです。その認定面積は2023年度末で約414万ha。民有林の4分の1ほどに広がってきました。この制度の中身と、人を動かしている「お金のインセンティブ」を見ていきます。

認定面積 414 万ha 2023年度末 民有林の24% 補助率 60〜68 % 間伐補助 一般は40〜50% 1.5倍優遇 計画期間 5 施業・伐採・更新 市町村認定 2030目標 500 万ha 民有林の30% +86万ha必要
図1:森林経営計画の主要諸元(出典:林野庁「森林計画制度」、森林経営計画認定状況)
目次

森の計画は三段重ね

日本の森林計画は三段構えになっています。いちばん上が林野庁の全国森林計画(15年)、その下に都道府県の地域森林計画(10年・全国158流域)、さらにその下に市町村森林整備計画(10年・約1,700計画)。森林経営計画は、この一番下の市町村計画の枠内で、個々の森について持ち主が5年分の手入れ計画を立てるものです。もともとは「森林施業計画」と呼ばれていましたが、2012年度の森林・林業再生プランで「森林経営計画」へ衣替えし、補助の対象や要件が広がりました。

認定面積はその後、着実に伸びています。2012年度の180万haから、2017年度300万ha、そして2023年度の414万haへ。約2.3倍です。

森林経営計画認定面積の推移 2012年度から2023年度までの認定面積推移 森林経営計画認定面積の推移(万ha) 500 250 0 2012 180 2016 285 2019 355 2021 390 2023 414 2030 500目標 180万ha→414万haへ約2.3倍、2030年目標は500万ha
図2:森林経営計画認定面積の推移(出典:林野庁「森林経営計画認定状況」)

認定率は地域で大きく違う

面白いのは、認定の進み具合が地域で驚くほど違うことです。トップは宮崎の86%。北海道68%、岩手62%と続きます。逆に関東・近畿の都市近郊では20〜30%台にとどまる地域が少なくありません。

都道府県(上位) 認定率 主な要因
宮崎 約86% 素材生産日本一、森林組合の集約が進行
北海道 約68% 大規模所有者が多い
岩手 約62% 森林組合の集約計画が活発
大分 約58% 日田林業地・組合連携
熊本 約55% 球磨・人吉の工務店連携
長野 約45% 木曽ヒノキ等の地元材活用

差を生んでいるのは、ざっくり3つです。森の持ち主が大規模で計画を立てやすいか、地元の森林組合が複数の持ち主の森をまとめて計画化できているか、そして意欲ある素材生産業者が動いているか。この3つが揃った地域ほど、認定率がぐっと上がります。逆に、持ち主が都会に出てしまって連絡もつかない、所有が細かく分かれている、組合の力が弱い——そんな都市近郊では、なかなか進みません。

なぜ認定をとるのか——お金の話

では、持ち主はなぜわざわざ計画を立てて認定をとるのでしょうか。答えはシンプルで、得をするからです。優遇は大きく補助金・税金・融資の3つ。なかでも効くのが間伐の補助率で、認定森林なら60〜68%、一般の森だと40〜50%。1.5倍の差です。

優遇制度 認定森林 一般森林
間伐補助率 60〜68% 40〜50%
植栽補助率 68% 50%
路網整備補助率 68% 50%
固定資産税 最大25%減免 標準課税
相続税納税猶予 適用可 適用不可
森林金融 低利融資・据置あり 標準金利

これらを合わせると、認定森林1haあたり年3〜5万円ほどの経済価値になると見られています。50haなら年150〜250万円、500haなら年1,500〜2,500万円。大規模な持ち主にとっては、認定をとるかどうかが経営を左右する話です。だからこそ大規模所有者の認定取得率は8〜9割と高く、いまや「とって当たり前」になっています。一方、5ha未満の小さな持ち主は、自分で計画を立てる手間と優遇のバランスから、森林組合がまとめてくれる「集約計画」に乗るのが現実的な選択。実際、認定計画の約75%はこの組合経由の集約計画です。森林組合(全国613組合、組合員約170万人)が、計画づくりから施業、補助申請、木材販売までを一手に引き受けています。

長く育てる森が増えている

近年の新しい流れが「長期育成循環施業」です。これまでスギ・ヒノキは植えてから60〜80年で一気に伐る(皆伐する)のが一般的でしたが、これを100〜120年まで延ばし、少しずつ間引きながら森を維持していく方式です。長く育てると太い大径材がとれて高く売れるうえ、森が地面を覆い続けるのでCO2を吸い続け、皆伐後の土砂流出のような災害リスクも下がります。収入も一度にどんと入るのではなく、毎年ちょっとずつ分散する。ドイツやスイスの「近自然林業」に学んだ考え方です。この認定面積は2023年度末で約45万ha、全体の1割強まで増え、2030年には100万haを目指しています。

目標は500万ha、その先へ

林野庁は2030年に認定面積500万ha、民有林の3割を目標に掲げています。414万haからあと86万ha。そのために必要なのは、連絡のつかない持ち主の特定や境界の明確化、森林簿のデジタル化とオンライン申請、森林環境譲与税を使った集約の後押し、そして計画を立てられる人材の育成です。最近は森林認証やカーボンクレジットと組み合わせて、認証材プレミアムや炭素吸収の収益も上乗せする動きも出てきました。「ちゃんと手入れすれば報われる」——そんな仕組みを少しずつ太らせていくことが、放置されがちな日本の森を動かす現実的な道筋になっています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次