シイタケ原木栽培:クヌギ・コナラ活用と10年で半減した4,569トンの現状

シイタケ原木栽培 | 森と所有 - Forest Eight

結論先出し

  • 原木シイタケ栽培はクヌギ・コナラ等の落葉広葉樹を「ほだ木」として使う伝統的栽培法。日本の食用キノコ栽培の源流で、白色腐朽菌Lentinula edodesがリグニン分解しながら子実体を発生する。
  • 近年の構造変化:原木栽培の生産量は10年で56%減(2024年4,569トン)、菌床栽培(93.7%)に主流が移行。原木栽培は乾シイタケ・高品質生シイタケ用途で残存。
  • 主要産地:大分県(クヌギ豊富、乾シイタケ国内最大)、徳島県、宮崎県、岩手県、京都府等。森林環境譲与税でも里山広葉樹林整備+原木供給の事業が複数自治体で実施。
  • 植菌密度の標準:1メートル原木あたり種駒30〜40個(直径10cm材)、密植で40〜50個(直径15cm材)。穴間隔は縦15〜20cm・横千鳥配置で2〜4列が標準。
  • 1ほだ木3〜5年で累計収量1〜2kg(生重量)。乾シイタケ換算では約100〜200g/本。原木1立方メートル(約30本相当)あたり生シイタケ30〜60kgが業界目安。

シイタケ(Lentinula edodes)は日本の食卓で最も親しまれる食用キノコの一つで、その栽培史は世界の食用キノコ産業の起源とも言える日本の伝統技術です。本稿では原木栽培(伝統的方式)に焦点を当て、生物学・栽培技術・統計動向・林業との関連を体系的に整理します。菌床栽培は次回B08記事で扱います。

目次

クイックサマリ:原木シイタケ栽培の基本

項目 内容
学名 Lentinula edodes(旧Lentinus edodes)
分類 担子菌門 ハラタケ目 ホウライタケ科
菌の性質 白色腐朽菌(リグニン分解能あり)
主要原木樹種 クヌギ、コナラ、ミズナラ、シデ類、サクラ類等の落葉広葉樹
原木伐採時期 秋〜冬(落葉後)
菌打ち時期 晩冬〜早春(2〜4月)
初収穫 菌打ちから約1.5〜2年後
1ほだ木の生産期 3〜5年
2024年原木生産量 4,569トン(10年で56%減)
2024年菌床生産量 59,379トン(全生産の93.7%)
主要産地 大分、徳島、宮崎、岩手、京都
原木1本当たり収量目安 3〜5年で累計0.3〜0.5kg/本(直径10cm材)、太材で0.7〜1.0kg/本
原木価格相場 1mクヌギ材で1本300〜500円(2024年大分県相場)、九州産プレミアム1,000円超
乾シイタケ価格 原木物冬菇1kg10,000〜20,000円、菌床乾物1kg3,000〜5,000円(2〜4倍差)

歴史:1,000年の栽培史

シイタケの栽培史は古く、平安時代には貢物として記録があり、江戸時代に伊豆で「ほだ木栽培」の技術が体系化されたとされます。当初は「鉈目栽培」(樹幹に切り込みを入れて自然発生を待つ)が主流でしたが、1940年代に北海道大学の森喜作が純粋培養菌種駒を実用化し、現代的な原木栽培技術が確立しました。これにより植菌成功率が10〜30%程度から80%超へ飛躍的に改善し、商業生産が一気に拡大します。

年代 マイルストーン
平安時代 貢物記録、シイタケの食用化
江戸時代 伊豆・大分でほだ木栽培技術発展
1940年代 森喜作が純粋培養菌種駒を実用化
1950〜60年代 戦後復興期、原木栽培の全国普及
1970年代 菌床栽培技術の本格化
1980〜90年代 菌床栽培の急速普及、原木栽培シェア低下
2010年代 福島原発事故の影響で原木供給制約、原木栽培さらに減少
2020年代 原木栽培は乾シイタケ・特殊用途に特化、菌床主流

世界の主要食用キノコのうち、純粋培養菌での商業栽培が日本で最初に確立したものはシイタケ・エノキタケ・ナメコ等で、これらは現在も日本がイノベーションの中心です。中国では1980年代以降、日本の技術導入で菌床シイタケが大規模に展開し、現在では世界生産の約9割を占める一大産地となっています。一方、原木物の高品質乾シイタケ(冬菇・どんこ)は依然として日本産がアジア市場で最高級ブランドの地位を維持しています。

シイタケ菌の生物学

原木栽培を理解する前提として、シイタケ菌(Lentinula edodes)の生物学的性質を整理しておきます。本菌は白色腐朽菌に分類され、木材の主成分であるリグニン・セルロース・ヘミセルロースを酵素分解できます。特にリグニン分解能が高く、原木の褐色〜白色に色変化させながら養分を取り出すのが特徴です。

  • 菌糸の生育温度:5〜30℃(最適20〜25℃)
  • 子実体形成温度:8〜22℃(系統により幅あり、低温性=冬菇向け、高温性=春秋兼用)
  • 必要含水率:原木35〜50%、子実体形成期は表面湿度80%以上
  • pH適性:4.0〜6.0(弱酸性)
  • 酸素要求:好気性、通気不足だと菌糸停滞

シイタケ菌の系統(株)は数百種類が育成されており、用途別に低温性(冬菇用)・中温性(汎用)・高温性(夏季出荷用)に大別されます。森産業・北研・キノックス等の主要種菌メーカーが系統育種を担い、JAS認証を受けた種駒が市場流通しています。原木栽培ではこの系統選択が品質・収量を大きく左右し、産地ごとに「大分○号」「徳島△号」等の地域品種が確立しています。

原木栽培の工程

1. 原木伐採(秋〜冬)

クヌギ・コナラ等の落葉広葉樹を、樹液が下がる落葉後の秋〜冬に伐採。

  • 樹齢:15〜25年生(直径10〜15 cm程度)
  • 長さ:1 m前後に玉切り
  • 樹皮保持:剥がさず原木のまま
  • 伐採適期:紅葉終了後〜萌芽前(11月〜翌2月)。樹液停止期で含水率が低く、雑菌汚染リスクが最も小さい
  • 原木1本の重量:約15〜25kg(直径12cm・長さ1m・含水率45%材)

伐採時に注意すべきは樹皮の損傷を最小限にすること。樹皮はシイタケ菌にとって雑菌侵入を防ぐバリアであり、樹皮が剥離した原木は雑菌(クロコブタケ・トリコデルマ等)に汚染されやすく、収量が著しく低下します。チェーンソー伐採後は枝葉を残したまま葉枯らし(葉から自然に水分を蒸散させる)を約1ヶ月行い、含水率を50%程度まで下げてから玉切りするのが伝統的な手順です。

2. 仮伏せ(早春)

玉切りした原木を、菌打ち前に2〜4週間ほど風通しの良い半日陰で寝かせる。樹液が抜け、菌の侵入に適した含水率(40〜50%)に調整。

3. 種駒接種・菌打ち(晩冬〜早春、2〜4月)

原木に直径8〜10 mmの穴をドリルで開け、純粋培養したシイタケ菌の種駒を打ち込む。

  • 穴間隔:縦15〜20 cm、横方向2〜4列
  • 1原木当たりの種駒数:30〜100個程度(標準は30〜40個/m)
  • 種駒の規格:JAS認証品が標準
  • 植菌密度の目安:直径10cm材で30〜35個/m、12〜13cm材で35〜45個/m、15cm太材で45〜55個/m
  • 千鳥配置:周囲方向で穴位置をずらすことで菌糸まわりを均一化
  • 打駒後の処理:穴口にロウ・パラフィン・専用シールを塗布し雑菌侵入と乾燥を防止

種駒(菌種駒)はシイタケ菌をブナ・ナラの小木片に培養した直径8mm・長さ20mm程度の規格品で、1袋500個入りが標準。価格は1袋2,000〜3,000円程度(2024年)で、原木1m当たり種駒コストは150〜200円となります。近年は形成菌(おが菌)と呼ばれるオガクズ培地培養菌をスティック状に成形した種菌も普及し、ドリル径12〜14mmと太いが菌のまわりが速いため省力栽培用途で採用が増えています。

4. ほだ場での養生(1〜2年)

菌打ち後の原木(「ほだ木」)を、半日陰の林内・ほだ場で養生。シイタケ菌が原木全体に広がる「菌糸まわり」を待ちます。

  • 場所:通気・採光・湿度のバランス取れた環境
  • 含水率:30〜40%維持
  • 温度:5〜25℃
  • 期間:18〜24ヶ月
  • 本伏せ:仮伏せ後の初夏、より日陰で湿潤な「ほだ場」へ移動。井桁伏せ・合掌伏せ・横積みなど積み方は産地ごとに伝統あり
  • 天地返し:年1〜2回、ほだ木の上下を入れ替えて含水率と菌糸密度を均一化

ほだ場の環境管理は原木栽培の最大の技術的勘所で、「陽光・風・水」のバランスが品質を決めます。陽光が多すぎると乾燥して菌糸停滞、少なすぎると雑菌繁殖。風通しが悪いと内部温度が上昇し害菌(黒コブ病・トリコデルマ・赤腐病)が発生。降雨だけでは不足する乾燥時にはスプリンクラー散水を行う産地もあり、大分・徳島では林内に簡易潅水設備を整える事業者が増えています。

5. 子実体発生(収穫期、1.5〜2年後〜)

菌糸まわりが完了したほだ木で、適切な気温・湿度・刺激(雨・温度ショック)で子実体(シイタケ)が発生。

  • 発生期:春・秋の2回
  • 1ほだ木の生産期:3〜5年
  • 1ほだ木の累計収量:1〜2 kg(生重量)
  • 浸水処理:人工的に発生を促すため、ほだ木を10〜20℃の水に12〜24時間浸ける手法。秋〜春の出荷期に短期集中収穫が可能になり、半数以上の生産者が採用
  • 叩き刺激:ほだ木をハンマーや専用機で叩き、菌糸に物理的ストレスを与えて発生を誘発する伝統手法

収穫適期はカサが7〜8分開きの状態で、開きすぎると胞子放出が始まって品質低下します。冬菇(どんこ)は低温で肉厚に育ったカサが半分閉じた状態の最高級品で、原木栽培ならではの肉質と香りを持ち、1kg2万円超の市場価格がつくこともあります。

6. ほだ木の最終処分

5年程度で生産能力が低下した古ほだ木は、薪・チップ・腐葉土材料として活用。シイタケ菌で半ば腐朽が進んだ材は、土壌改良材として優れた性質を持ちます。リグニン分解後のほだ木はカブトムシ・クワガタの幼虫飼育材としても流通し、副収入源となっている産地もあります。

原木シイタケ栽培の工程 原木伐採→仮伏せ→菌打ち→養生→子実体発生→終了の3〜5年サイクル。 原木シイタケ栽培 工程フロー 1.伐採 秋〜冬 2.仮伏せ 2〜4週間 3.菌打ち 晩冬〜早春 4.養生 1.5〜2年 5.発生 3〜5年 適用樹種 クヌギ、コナラ、 ミズナラ、サクラ等 直径10〜15cm 樹齢15〜25年生 1ほだ木当たり 種駒30〜100個 穴間隔15〜20cm 累計収量1〜2kg 最適環境 半日陰、通気良 含水率30〜40% 温度5〜25℃ 出典: 林野庁・農水省「シイタケ栽培の手引き」、各都道府県の林業普及センター資料
図1:原木シイタケ栽培の工程(出典:農水省・林野庁・各都道府県資料)。

主要原木樹種

樹種 適性 備考
クヌギ(Quercus acutissima) 最適 大分県の伝統、最高級乾シイタケ向け
コナラ(Quercus serrata) 最適 全国的に汎用、近畿〜中部の主流
ミズナラ(Quercus crispula) 北海道・東北、寒冷地用
カシワ(Quercus dentata) 東北・北海道
ナラガシワ(Quercus aliena) 関東・東海
シデ類(Carpinus) 樹皮薄く侵入早いが寿命短め
サクラ類(Prunus) 限定的

クヌギ・コナラが圧倒的主流で、原木シイタケ生産は実質的に里山のクヌギ・コナラ林資源に依存します。詳細は クヌギ Quercus acutissimaコナラ Quercus serrata 各記事を参照ください。両者ともリグニン含有率が高く樹皮が厚いため、シイタケ菌の好適基質となります。一般にクヌギは樹皮厚く子実体が肉厚で乾物向け、コナラは菌糸まわりが速く生シイタケ向けとされ、用途で使い分けられています。

原木供給は里山の萌芽更新(コッピス)と密接に連動しており、伐採後20〜25年で再びほだ木サイズに成長するサイクルを利用します。クヌギは萌芽力が極めて強く、切り株から出た萌芽枝を選抜・育成すれば植林なしで再生産が可能なため、伝統的な里山ではこの萌芽更新サイクルがシイタケ栽培の生産基盤を支えてきました。近年はこのサイクルが管理放棄で途絶し、原木不足の構造的要因となっています。

生産量の構造変化

原木栽培(トン) 菌床栽培(トン) 原木比率
1980年 約45,000 約20,000 69%
2000年 約30,000 約60,000 33%
2010年 約12,000 約75,000 14%
2014年 約10,400 約77,000 12%
2024年 4,569 59,379 7%

過去40年で原木栽培の生産量は1/10以下に縮小、菌床栽培が圧倒的主流に転換しました。減少の主要因:

  1. 労務集約性:菌打ち・養生・収穫が分散労務
  2. 原木供給の困難化:里山管理放棄でクヌギ・コナラ材確保が難しい
  3. 福島原発事故(2011):東日本産原木の放射線セシウム問題で供給急減
  4. 菌床栽培の生産性:年間数回回転、空調管理で安定生産
  5. 品質差別化の困難:菌床も品質向上で差別化が縮小
  6. 生産者高齢化:原木栽培の中心担い手が70歳代以上、後継者不足
  7. 輸入品との価格競争:中国産菌床乾シイタケが市場価格を押し下げ

原木栽培と菌床栽培の比較

項目 原木栽培 菌床栽培
培地 クヌギ・コナラ等の天然原木 オガクズ+米ぬか・フスマ等の人工培地
生産期間 菌打ちから初収穫まで1.5〜2年 培養から発生まで3〜4ヶ月
生産期間中の回転 1ほだ木で3〜5年 1菌床で3〜6ヶ月、年2〜3回転
労働集約度 季節労務、林内分散 施設集中、空調管理
立地 里山ほだ場(屋外) 専用施設(屋内、空調)
カサの肉厚 厚い(冬菇向き) やや薄い
香り・風味 強い(天然性) やや弱い
価格(生) 高め(贈答・料亭向け) 低め(量販店流通)
主要用途 乾シイタケ・贈答・高級料理 生シイタケ大量流通

市場では「肉厚で香り高い天然志向」と「価格・安定供給重視」の二極化が進んでおり、原木物は前者の高付加価値ニッチ、菌床物は後者の量販主流という棲み分けが定着しています。

原木栽培の現代的価値

シェアは縮小しているが、原木栽培には特有の価値が残ります:

  • 乾シイタケ品質:肉厚・風味に優れ、贈答用・高級料亭向け
  • 香り・食感:菌床栽培では再現困難な天然性
  • 里山管理との連携:クヌギ・コナラ伐採による里山更新
  • 地域経済:大分県等でブランド食品としての地位
  • 文化的価値:日本の食文化の伝統継承
  • 輸出市場:高級乾シイタケは中国・東南アジア・欧州で需要
  • カーボンストック:原木のリグニン分解過程は徐々であり、地中・土壌への炭素移行が長期的に進む点で菌床より炭素隔離面で優位
  • 観光・教育資源:椎茸狩り体験・植菌イベント等、グリーンツーリズム素材として活用が広がる

大分県:原木シイタケ国内最大産地

大分県は乾シイタケの国内生産量第1位で、全国シェアの30〜40%を占めます。背景:

  • クヌギ豊富な里山資源(県土の約70%が森林、広葉樹比率高い)
  • 江戸時代からの伝統的栽培文化
  • 地理的条件(標高変化、湿度、温度)が栽培に適合
  • 大分どんこ・大分こうこ等のブランド乾シイタケ確立
  • 地域経済・観光との結合
  • JA椎茸専門部会・大分県椎茸農協連合会が一元集出荷を担い品質基準を統一
  • 毎年秋〜冬に開催される原木乾しいたけ品評会で全国農林水産大臣賞が大分から多数輩出

大分県の取り組みは、原木栽培の縮小トレンドの中で「地域ブランド・高付加価値・伝統継承」型のビジネスモデルとして注目されています。県・市町村は森林環境譲与税や特用林産物振興対策を組み合わせ、原木供給林の整備・若手生産者の機械化支援・販路開拓に重層的に投資しています。

その他主要産地の特色

  • 徳島県:那賀町・上勝町を中心にコナラ原木栽培。県のブランド「徳島県原木乾しいたけ」で大消費地阪神市場へ展開。
  • 宮崎県:耳川流域の山間部で原木栽培。九州産プレミアム乾シイタケとして大分と並ぶ。
  • 岩手県:東北最大の原木産地だったが福島原発事故で大きく打撃。近年は出荷再開と検査体制強化で復旧途上。
  • 京都府:京北・京丹波地域でコナラ原木栽培。京野菜・丹波黒豆と並ぶ高級ブランド食材として位置づけ。
  • 静岡県:伊豆地方が原木栽培発祥の地。現在も伊豆産原木シイタケのブランド維持に取り組む。

福島原発事故の影響と回復

2011年福島原発事故後、東日本各地の原木で放射線セシウム濃度が出荷規制値(食品100 Bq/kg、原木50 Bq/kg)を超える事例が報告され、原木供給が大規模に制約されました。影響:

  • 東日本(特に東北南部・北関東)の原木出荷停止
  • 九州・四国・北海道産原木への需要シフト
  • 輸送コストの増加で原木栽培の経済性悪化
  • 多くの生産者の廃業・菌床栽培への転換
  • 原木流通価格の高騰(2011年比で2〜3倍に上昇した時期も)

2020年代に入り、東日本でも一部地域で出荷再開が進みつつありますが、消費者・流通の不安は完全には払拭されていません。林野庁は放射性物質低減モデル林事業で除染・林床整備を進め、福島・宮城・岩手の一部市町村ではモニタリング検査を継続しながら段階的な出荷再開が実現しています。

関連支援制度

制度 所管 適用範囲
特用林産物振興対策 林野庁 シイタケ等の特用林産物生産支援
森林・山村多面的機能発揮対策 林野庁 里山広葉樹林整備、原木供給
森林環境譲与税 総務省 市町村事業として里山整備
農山漁村振興交付金 農水省 地域特産物の振興
都道府県の地域ブランド支援 都道府県 地域ブランド乾シイタケ
放射性物質低減対策事業 林野庁 東日本被災地の原木林の除染・モニタリング

シイタケの薬理・栄養

シイタケは食用以外にヘルス・薬理学的研究も進展中:

  • レンチナン:β-1,3-D-グルカン、抗腫瘍剤として医薬品認可(厚労省、1985年)
  • エリタデニン:コレステロール低下作用
  • 食物繊維:腸内環境改善
  • ビタミンD前駆体(エルゴステロール):日光浴でビタミンDに変換
  • ミネラル:カリウム、亜鉛、リンが豊富
  • うま味成分:グアニル酸(核酸系うま味)が乾燥工程で増加し、グルタミン酸との相乗効果でだしの王道に

原木栽培シイタケはエルゴステロール含有量が菌床栽培より高い傾向があり、乾燥工程での天日干し(紫外線曝露)でビタミンD2に効率的に変換されます。100gあたりの乾シイタケは約1,700IU(約42μg)のビタミンDを含み、これはサケ・マグロに次ぐ植物・菌類由来食品としては突出した含量です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 原木シイタケと菌床シイタケの違いは

A. 風味・肉厚・香りで原木シイタケがやや優位、生産量・価格は菌床シイタケが圧倒的優位。スーパーで安く流通するのは大半が菌床。原木は乾シイタケ・贈答用・高級料亭向けに特化しつつあります。原木物の冬菇・どんこは1kg2万円超の価格帯も珍しくない一方、菌床生シイタケは200gパック150〜250円で日常食材として流通します。

Q2. 自宅でシイタケを育てられますか

A. 可能です。市販の「家庭用シイタケ栽培キット(菌床ブロック)」で簡単に栽培開始可能で、購入から1〜2週間で初収穫が始まります。本格的な原木栽培は1m長の原木と種駒を購入し、約2年待つ必要があります。家庭用原木1本あたり種駒30個・原木500円・種駒200円程度のコストで、3〜5年累計1〜2kg程度の収量が見込めます。

Q3. 原木シイタケの将来は

A. 大量生産用途では菌床に主流が移行済みですが、高級・乾シイタケ・贈答品の用途で原木栽培は残存見込み。地域ブランド・伝統食品としての価値が経済性を一部支えます。輸出市場(中華圏・欧米日本食ブーム)の拡大、グリーンツーリズム素材としての位置づけ、森林環境譲与税を活用した里山再生事業との連携など、新しい支え方が模索されています。

Q4. ほだ木の処分は

A. 5年程度で生産終了したほだ木は、薪・チップ・腐葉土として再活用。シイタケ菌でリグニン分解が進んだ材は土壌改良材として優れた性質を持ち、農業への活用も進められています。カブトムシ・クワガタ幼虫の飼育材として副収入化する産地もあり、廃棄物にせず資源循環につなげることが原木栽培の利点の一つです。

Q5. 原木栽培で他の食用キノコも作れますか

A. 同じ手法でナメコ(ブナ・ミズナラ等)、ヒラタケ(広葉樹各種)、エノキタケ(クヌギ・エノキ等)、ヤマブシタケ等が栽培可能。詳細は次回B07以降のキノコ別記事で紹介。

Q6. 原木栽培の害菌対策は

A. 主要害菌はトリコデルマ(緑カビ)・クロコブタケ・ヒポクレア・赤腐病菌等。対策は樹皮を傷つけない・含水率管理・ほだ場の通気確保・適切な天地返しが基本。発生初期に部分除去、激しい場合はほだ木を焼却・隔離します。種駒の品質(雑菌混入の少ないJAS認証品)を選ぶことも重要です。

Q7. 菌打ちから収穫までのコスト感は

A. 1mクヌギ原木1本あたり原木代300〜500円、種駒代150〜200円、菌打ち労務500〜800円で、合計初期投資は約1,000〜1,500円/本。3〜5年で累計0.5kg収量、生シイタケ単価2,000円/kgとすれば1本あたり約1,000円の売上で、労務時間を含めると経営的には規模化(数千本以上)と乾燥加工付加がほぼ必須となります。

原木栽培の経営シミュレーション

原木シイタケ栽培を専業・兼業で行う場合の経営規模イメージを整理します。年間生シイタケ500kg(乾シイタケ50kg相当)を目標とする小規模兼業生産者を例にすると、必要なほだ木数は約1,000〜1,500本、原木調達と植菌の年次更新サイクルは約300〜500本/年となります。原木代・種駒代・労務を合算した初期投資は1,000本規模で約100〜150万円、年次更新コストで30〜50万円、ほだ場の管理・収穫労務として年間延べ300〜500時間が必要です。

規模 ほだ木総数 初期投資目安 年間粗収益目安 主な販路
家庭・自家消費 10〜30本 2〜5万円 0〜3万円 自家消費・近隣配布
小規模兼業 500〜1,500本 50〜200万円 50〜150万円 直売所・道の駅・ふるさと納税
中規模専業 3,000〜10,000本 500〜1,500万円 300〜800万円 JA出荷・贈答・乾物加工
大規模専業 20,000本以上 3,000万円以上 1,500万円以上 市場流通・輸出・OEM

原木栽培は初期投資回収に最低3〜5年を要する長期投資型の経営です。販路としては近年ふるさと納税返礼品・道の駅直売・産直ECがブランド原木乾シイタケの新たな出口となっており、特に大分・徳島の一部自治体では原木乾シイタケが返礼品ランキング上位を占めることもあります。乾燥加工を自前で行うことで価格を3〜5倍に引き上げる「6次産業化」が中小生産者の主要な収益改善策となっています。

気候変動の影響

近年の温暖化はシイタケ原木栽培にも複数の影響を及ぼしています。第一に夏季高温により従来の中温性系統では菌糸活動が停滞し、害菌侵入リスクが高まる地域が増えています。第二に降雨パターンの変化でほだ場の含水率管理が難しくなり、潅水設備の導入が増えています。第三にクヌギ・コナラ林のナラ枯れ被害(カシノナガキクイムシ媒介の病害)で原木供給そのものが脅かされる地域が拡大中です。林野庁・各都道府県は耐性系統の育種・ほだ場の遮光改良・原木林の予防伐採等で対応していますが、気候変動下での原木栽培の持続性は今後の重要課題です。

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